FLOWER FLOWER「はなうた」に表れた、yuiの心情とバンドのユニークさ 自由度が増したメロディや歌の魅力に迫る

FLOWER FLOWER「はなうた」で表現されたyuiの心情

 8月19日にリリースされた3rdシングル『はなうた』で、今年早くも新しい側面をFLOWER FLOWERが見せている。表題曲の「はなうた」はクラフトビール「僕ビール君ビール」とのコラボレーションのために書き下ろされた新曲。日本を代表するクラフトビールを製造している株式会社ヤッホーブルーイングと<gr8!records>(ソニー・ミュージックレーベルズ)は、これまでも「水曜日のネコ」とものんくる、「インドの青鬼」とワタナベシュウヘイのコラボレーションを展開しており、その都度、新たなユーザー/リスナーへリーチしてきた。

FLOWER FLOWER「はなうた」Short ver.

 今回の「はなうた」はyuiの口笛から始まるイントロが象徴するように、全体的に風通しの良いリラックスしたムードに溢れる1曲。アコースティックギターのストロークがグルーヴを生み出し、ピアノやベース、ドラムも文字通りオーガニックな空間処理が心地よい。タイトルはひらがなの「はなうた」、歌い出しは〈ほっと一息つこうよ〉と、どこか屋外でひと休みしたくなるムード。だが、曲が進行していくに連れて、〈そんなにたくさん無理だよ 人ってそんなに強くない〉〈僕と君の日々は変わっていく〉と、奇しくも日常が否応なしに変化してしまったこの時期の心情に、隣でぽつんと発された一言のようなリアリティともシンクロするのだ。それがyuiのブレスが多めで、ころんとしたナチュラルなボーカルで届けられると、自然に肩の力が抜ける。

 近作である3rdアルバム『ターゲット』では、ファンクとエレクトロの融合や、エクストリームなピアノロック、ゲストボーカルにodolのミゾベリョウを迎えたオルタナティブR&B寄りの楽曲など、現行の海外のポップミュージックを昇華。それをグッとFLOWER FLOWERのオリジナルに引き寄せるyuiの純度の高い歌詞とボーカリゼーションで、バンドとしての存在意義を大いに高めた。音像的には今回の「はなうた」とは真逆なアプローチだが、どんなシチュエーションでも核心を飾らずに認めるyuiの作詞家としての自然体が繋がっているだけに、「はなうた」がもたらす体感や心情はリアルだ。大切な人がちょっと疲れていたらどんな音や言葉がいいのだろうーーそれが音楽になったような強さもある。

FLOWER FLOWER「夢」Short ver.

 バンドとしては『ターゲット』での経験が、yui個人として話題になったくるりとサカナクションのマッシュアップ曲「ばらの花×ネイティブダンサー」にてミゾベと共にニュートラルな声の表現を試せたことも大きかったのではないだろうか。マインドの部分で自由なロックバンドであるFLOWER FLOWERだが、肝はやはりyuiの作るメロディと歌ありき。その自由度が増していることが、一見(一聴)意外な今回の「はなうた」も自然に受け入れられる理由なのだろう。

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