King Gnu 井口理、Creepy Nuts……『ANN』なぜ音楽系人気パーソナリティを輩出? プロデューサーに聞く番組制作のスタンス

King Gnu 井口理、Creepy Nuts……『ANN』なぜ音楽系人気パーソナリティを輩出? プロデューサーに聞く番組制作のスタンス

 数多くのミュージシャンがパーソナリティを務めているラジオ番組『オールナイトニッポン』(ニッポン放送/以下、『ANN』)。同番組のパーソナリティの選定は非常に興味深い。どのようなトークを展開するか未知数なミュージシャンであっても積極的に起用し、ラジオを通して彼らの人間性を引き出している。最近では、YOASOBIが『オールナイトニッポン0(ZERO)』(以下、『ANN0』)の一夜限りのパーソナリティを担当することが決まり話題になっていた。

 また同番組といえば、ジャンルを超えたアーティスト同士の交流も魅力だ。2020年3月までパーソナリティを務めていたKing Gnu 井口理は、aiko、ポルノグラフィティ岡野昭仁などと共演。Creepy Nutsであれば、『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』のテーマソングを提供したり(「よふかしのうた」)、7月1日には菅田将暉とのコラボレーション楽曲もリリースした(Creepy Nuts×菅田将暉「サントラ」)。こうした共演は、SNSを中心に注目を集めており番組内でのトピックがTwitterのトレンド入りすることもしばしばだ。

 そこで、リアルサウンドでは『ANN』のプロデューサーである冨山雄一氏に取材。パーソナリティを選定するにあたって意識していることや、彼らの魅力を引き出す企画作りについて話を聞いた。(編集部)

(King Gnu 井口理は)ラジオにとって重要な2つの要素を持っている

ーー昨今ではCreepy Nuts、King Gnuの井口理さんを番組のレギュラーパーソナリティに抜擢されていたことが印象的でしたが、パーソナリティはどのようなかたちで決めているのでしょうか?

冨山:『ANN』はミュージシャン、お笑い芸人、俳優、アイドル、文化人などあまねくジャンルの中で旬な方がトークをする、というコンセプトで成り立っています。僕が番組プロデューサーになってからは改めて「ラジオが好きだったり、しゃべることが好きな人にパーソナリティを務めていただく」というスタンスでオファーをしています。やっぱりラジオって、映像もなく人に対して一方的にしゃべらなくてはならないのでハードルが高いと思うんです。

ーー『ANN』といえば、まだトークにおいて未知数なアーティストが抜擢されていることも印象的です。『ANN0』では第2から第5土曜日に週替わりでパーソナリティが変わったり、レギュラーメンバーが休みの際には特番を入れたりもされていて、Creepy NutsやKing Gnu 井口さんも初めは特番での出演という形でした。

冨山:井口さんは2019年の年始に『三四郎のANN0』が休みになった放送回で特番として出ていただいたのですが、それはある女性ディレクターから「井口くんが変態的なトークスキルを持っている」と聞いたことがきっかけでした。当時のKing Gnuなら、J-WAVEのようなFM局の番組でレギュラーを持つ方が合っているんじゃないかと思ったのですが、その女性ディレクターの話を聞いて、もしかしたら井口さんはAM局の番組にも合うかもしれないと思ったんです。

ーーなるほど。

冨山:ラジオには「その人自体が好きで聴いてくれる人」と「ラジオ番組自体が好きで聴いてくれる人」という二つのコミュニティがあって。僕は、この両方が上手く回ることで番組も成功すると思うんです。井口さんは、King Gnuの音楽性自体が素晴らしいことはもちろん、ラジオ好きな人たちからも受け入れられるパーソナリティ性も兼ね備えていました。特番で出演いただいたときに、ラジオにとって重要なこの2つの要素を持っていることを感じて、レギュラーとしてオファーすることになりました。井口さんは必ずしもラジオを聴いていたという体験があるわけではなかったのですが、パーソナルな部分をさらけ出してくれたことで、ミュージシャンとしての側面をよく知らない人からも「この人の世界に触れてみたい」と思われたのではないかと。あとは「ラジオの空気感をわかってる方」という点も選定にあたってとても重要ですね。

ーーCreepy Nutsはまさにそうですよね。

冨山:はい。2人とも『オードリーのANN』や『WANTED!(RHYMESTER)TOKYO FM、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』TBSラジオなどをもともと聴いていたこともあって、ラジオというものをよく知っていました。おふたりに関しては、トークへのモチベーションが高い方々だったので、レギュラーとしても出演いただきたいなと思いました。

ーーとはいえ、ここまでミュージシャンのパーソナルな部分が引き出されているのは、『ANN』が作るコーナーの良さもあると思います。企画やコーナーはどのように考えていますか?

冨山:基本的には、パーソナリティの特性に合わせて、ディレクターと作家がコーナーを組み立てていきます。例えば星野源さんは、自分自身の音楽だけではなく、自分が聴いてきた音楽や今聴いている音楽を多くの人に知ってもらいたいというマインドが非常にある方ですので、番組での選曲も非常に多岐に渡っています。またリスナーにより音楽に興味を持ってもらえるコーナーを考えて、「YELLOW MUSIC」※1や、「イントロクソやべえ!」※2のような音楽に沿ったコーナーが生まれました。

 Creepy Nutsもまたヒップホップを届けたいという気持ちが強いので、番組の最後にR-指定さんが選定したヒップホップの曲解説をしてもらう時間を作っています。それまではふざけて喋ってるのに、その時間だけは毎回鳥肌が立つような凄みがあって。そんなにヒップホップに詳しくないリスナーが聴いてもすごく刺さると思います。もし「R-指定のヒップホップ講座」という単体のコンテンツだったとしたらある程度ヒップホップに興味関心がある人しか引き込めないですが、そうではない人も好きになれるきっかけを作れるのが『ANN』の醍醐味なんだと思います。

ーー『ANN』のコーナーはバランス感覚が絶妙ですよね。パーソナリティのキャラクター性と音楽性の両方の魅力を引き出しているように感じます。最近印象的だったのは藤井風さんの『ANN0』で、弾き語りから始まる冒頭に引き込まれてずっと聞いてしまいました。

冨山:藤井風さんは、第1回目(2019年7月)の登場時にはまだそこまで認知度が高くありませんでした。そこでどうやってリスナーの方々に興味を持ってもらえるのか考えましたね。『藤井風のANN0』は、今の日本のラジオで最も勢いのある『オードリーのANN』に続く枠だったこともあって、冒頭は藤井風さんを目当てに聴きにくる人より『オードリーのANN』を聴いている人の方が多い。なので、オードリーのリスナーが切るか切らないかのタイミングで、どうやって心を掴めるかが重要だったんです。そこで、藤井さんに一番自信のある生歌からスタートしてもらいました。それで興味を持ってもらえないかという狙いです。また番組の中盤では“オールナイトニッポンメドレー”みたいな、他の『ANN』の番組のパーソナリティの楽曲や番組のテーマ曲をカバーしていただきました。それがとても素晴らしくて……。藤井さんには今まで3回出演していただいているのですが、毎回そのメドレーが話題になっています。

リスナーだけがわかる文脈もラジオの大事な要素

ーー『ANN』では、ジャンルを越えて様々なアーティストが共演されている印象もあります。井口さんでしたらaikoさんやポルノグラフィティ岡野さん、Creepy Nutsだったらオードリーや菅田さんだったり。このようなコラボレーションが柔軟に行われている理由は何だと思いますか?

冨山:それは、パーソナリティ同士の仲間意識にあるかもしれません。みなさん本業がある中で、わざわざ毎週生放送で有楽町まで来てしゃべるってことにまず共感性があって。aikoさんや岡野さんは、もともと『ANN』を長年やっていらっしゃったこともあって、その大変さや面白さをわかっていただいていると思うんです。それが井口さんとの共演にいたる伏線としてあったのかなと。Creepy Nutsと菅田さんに関しては、福田卓也さんという作家が両方の番組を担当しているということが非常に大きかったと思います。普通に考えたら、“Creepy Nutsと菅田将暉さんが自発的に組む”なんて想像つかなかったですけど、『ANN』というつながりをきっかけに食事に行って、曲を一緒にやろうよってなって……ありがたいですよね。

ーーCreepy Nutsと菅田さんに関しては、番組でのビーフをきっかけに徐々に仲を深めていく様子がリスナーとしてとても面白かったです。この二組の間には長いストーリーがありますよね。

冨山:ラジオリスナーだけがわかる文脈というのがいいですよね。聴いてる方からしたら、「Creepy Nutsと菅田将暉」ってだけでやりとりが浮かんでくるというか。それでいうと、aikoさんと井口さんが「カブトムシ」を番組で歌ったのも、以前aikoさんがゲストとして出演していたことがきっかけになっていますし、岡野昭仁さんが登場したのも、井口さんが番組内で「勝手にポルノグラフィティ20th Anniversary Radio」というカラオケ企画をやっていたことがフリになっています。こうした文脈をリアルタイムで体験するというのは、SNSやウェブ上に書き起こされる時代でもラジオとして大事な要素になっているんじゃないかなと思います。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる