乃木坂46×バナナマン、欅坂46×澤部・土田、日向坂46×オードリー……グループ力を際立たせる坂道×芸人の関係性
欅坂46をMCが育てる『欅って、書けない?』
欅坂46といえば、クールさのなかに暗鬱や孤独を抱えているイメージを持たれている。楽曲「大人は信じてくれない」では、子どもと大人のあいだにある歪み、他者や社会との相容れない関係性について歌われていた。また「サイレントマジョリティー」には社会的なメッセージが込められている。鋭利で、硬質さがあり、どこか冷たさを感じさせるグループだ。
2015年10月にスタートした『欅って、書けない?』では、欅坂46の、不器用でありながら少しずつ個性が育まれている様が楽しめる。その成長をバックアップしているのが土田晃之とハライチの澤部佑だ。
番組開始当初、土田、澤部と欅坂46の絡みはどこか“不協和音”だった。当時の欅坂46は不慣れさもあって随分とおとなしかった。澤部、土田のフリにも言葉数少なく返答をしていた。話題がなかなか広がっていかないところが課題だった。2015年11月9日オンエア「夏合宿潜入レポート」で土田は、VTRを観たあと、メンバーにこのように話す。
「ボーカルレッスンをやっても変わらないよと思ったりするけど、変わりますからね。真面目にやっておいた方がいいですよ。専門学校で発声・発音をやらされて、何の役に立つんだよと思って、うちの事務所でネタ見せに言ったら、みんな声が出ていないことに気づく。声が出ていると相手にも伝わりやすくなる」
このようなコメントを投げかけたのは、番組がはじまったばかりとはいえ、脱皮する気配が感じられない歯がゆさや、特色の薄さに対するもどかしさから、「これじゃあ番組として成立しないからもっと頑張れ」という土田なりの叱咤激励のような感じがした。「これはあなたたちの冠番組なんですよ」と。
ワイドショーでコメンテーターもつとめる土田は、気質的にも問題点があれば堂々と物申すタイプ。バナナマンが乃木坂46にとって「公式お兄ちゃん」と呼ばれているように、土田のそういった厳しさこそが、欅坂の「公式お父さん」と称される所以でもある気がする。しかし一方で、「MC土田のお誕生日会」(2018年9月12日回)では、土田の大好きなおニャン子クラブの楽曲「セーラー服を脱がさないで」をメンバーが歌う場面があった。歌詞が飛んでしまったりすると、土田自ら一緒に歌ってあげる姿もあり、心が温まった。厳しさ、優しさ、その両面で土田は父親的である。
澤部は、欅坂46のテンションをあげるのがとてもうまい。澤部のイジりで伸びたメンバーは、何といっても尾関梨香だ。澤部、尾関の関係性は、「妙にリアル」と言われるくらい愛情にあふれている。2019年7月1日回では、尾関に肉を「あーん」で食べさせてもらう澤部の嬉しそうな顔が大きく映し出された。そういう「まんざらでもなさ」を包み隠さない澤部の素直な性格が、メンバーの信頼を勝ち取ったのではないか。
小池美波とのやりとりも素晴らしい。澤部は、小池に物をおねだりされて、デレたら負けという企画に挑戦しているが、そこで2度にわたって完敗を喫している。ここでも澤部の「まんざらでもなさ」が露呈し、笑いをあつめた。負けたとはいえ、「ゆうくん」と猫なで声で甘える“小池の本気”を余すことなく引き出した澤部は絶賛に値した。ファンの歓喜を誘発し、「試合に負けて勝負に勝った」感があった。
番組が始まって4年半が経つが、欅坂はまだまだ伸び代ばかり。これからも土田、澤部の育成力が試される。