乃木坂46「世界中の隣人よ」、卒業生交えて描かれた“つながり” 同企画から感じたグループならではの強みも

 「今回のMVで世代交代がより難しくなったのではないか」と懸念する声があるかもしれない。しかし、齋藤飛鳥が「いまの乃木坂46に過去に固執している人間は誰ひとりいないと思うんです。もちろん卒業したメンバーに対しては誇りを持ってるし、ファンの方が『七瀬のほうがいいな』『ななみんだよな』と思うのは自然なことなので、まったく嫌な気持ちにならないし、すべてをひっくるめて受け入れるしかないと思ってます」(『OVETURE』No.022)と語っているように、現役メンバーは我々が思っている以上に頼もしい存在になっているのだ。

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 「世界中の隣人よ」のMVを観ていくと、「白石麻衣から西野七瀬への黄金リレー」からはじまり、「卒業してからもシンメで映る秋元真夏と桜井玲香」「大園桃子のふと見上げて微笑むシーンの眩さ」「歯みがきをしている賀喜遥香から白米を喰らう松村沙友理」「宇多田ヒカル『光』のMVを思い起こさせる山下美月のキッチンのシーン」「“聖地”神宮球場から新4期生を含むソロカットが続き、そのラストが生駒里奈」etc……乃木坂46を見てきた者の魂を震わせる場面がいくつもあるが、ここでは北野日奈子が映っているシーンをピックアップしたい。

 巨大なクマのぬいぐるみに寄り添う北野の後ろに映っているのは、乃木坂46公式ゲームアプリ『乃木恋』のCM(2018年7月公開)撮影中に星野みなみと相楽伊織の3人で撮ったと思われる写真。3人が出演した『乃木恋』のCMは、北野が想いを録音したカセットテープを男性に渡す、というノスタルジックな作品で、「世界中の隣人よ」を撮った横堀光範が監督を務めている。

 2017年11月から活動を休止していた北野だが、2018年3月24日の『46時間テレビ』に短い時間ながら出演することを決めた。その際、北野から「みなみちゃんと伊織と一緒にしてもらえませんか?」とスタッフに提案したという。自然な自分でいられる2人だからだ。そんな2人と撮影したCMなのだから、北野にとって思い出深い作品であるに違いない。

 そして、7月6日に北野は本格的にライブ復帰する。場所は「世界中の隣人よ」でも映された“聖地”神宮球場だ(『乃木坂46 真夏の全国ツアー2018』明治神宮野球場&秩父宮ラグビー場)。葛藤を抱えながら歌い続けてきた「アンダー」という楽曲にひとつの答えを見つけて、北野は一歩前に進むことができた。

 北野は「あの曲をもらった時、私は初めてのセンターで、ひめ(中元日芽香)の卒業も控えていたし、どうしたらいいんだろうと考えてしまって。でも、ひとりであの曲を昇華する必要はないんだなと気づいたんです」と語っている(『月刊エンタメ』2018年10月号)。

 「世界中の隣人よ」の2番にある

〈そうさ 人間は捨てたもんじゃない
会ったことない誰かのため支え合って
すべてを乗り越えられる強さを持ち
未来に続く希望を信じてる〉

 という歌詞は、あの時の北野と重ね合わせることができるかもしれない。

 「世界中の隣人よ」は「新型コロナウイルスの感染拡大防止」というテーマはあるが、乃木坂46メンバー同士、現役メンバーと卒業生、乃木坂46メンバーとファン、そして、「私」と「大切な誰か」の心のつながりを感じさせる曲になっているのだ。

 神宮球場で「世界中の隣人よ」を聴くことができる日が訪れるまで、希望を信じて待ち続けたい。

■大貫真之介(おおぬき しんのすけ)
フリーの編集・ライター。アイドルを中心に、サブカルチャー全般を多くの雑誌に寄稿。『EX大衆』、『月刊エンタメ』、『日経エンタテインメント!』、『OVERTURE』などで坂道シリーズの記事を執筆。

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