乃木坂46「世界中の隣人よ」、卒業生交えて描かれた“つながり” 同企画から感じたグループならではの強みも
不要不急の外出を自粛することが要請されて以降、アイドルはさまざまな方法で映像の発信を試みてきた。乃木坂46も例外ではなく、2017年11月に行われた東京ドーム公演が配信され(5月5~7日)、『乃木坂46時間TV アベマ独占放送「はなれてたって、ぼくらはいっしょ!」』の放送(6月19~21日)を発表したが、他のグループのようなリモートでの歌唱は実現していなかった。
5月25日早朝4時、突如として乃木坂46のMVが公開される。なんとオリジナル曲だ。「世界中の隣人よ」と題されたこの曲は「外出自粛を心掛けている皆さまへのエール、そして新型コロナウイルスと闘っている医療従事者の皆さまに感謝の気持ちを込め、感染拡大防止の呼び掛けを目的として」制作されたという(乃木坂46公式サイトより)。
それぞれがリモートで撮影したMVには、乃木坂46の現役メンバーだけでなく、西野七瀬をはじめとした11名の卒業生が参加。市來玲奈(日本テレビ)と斎藤ちはる(テレビ朝日)という2人のアナウンサーも登場している。
乃木坂46は「アイドルにおける卒業」をアップデートさせてきたグループだ。現役時代から適正に合わせて舞台や映画、バラエティ番組といった個人の仕事をブッキングし、場合によってはグループ全体よりも個人を優先したスケジュールを組むこともある。「アイドル」活動にとどまらない、個人の将来を見据えたロードマップを引いているのだ。2018年から現役メンバーが所属する乃木坂合同会社が卒業生の受け皿としても機能するようになると、現役時代の個人仕事を継続しつつ、メンバーの個性を把握しているスタッフが新規の仕事を持ってくるという好循環が生まれている。
2019年6月に卒業した斉藤優里も「完全に別の事務所に移籍するより安心感があります。事務所の方にイチから私を知ってもらうんじゃなくて、『斉藤優里』を知っている前提があるので」と語っている(『EX大衆』2020年1月号)。
現役メンバーにとっては、個人で活躍している卒業生が近くにいることが現在の活動の励みになるはず。乃木坂46はアイドルグループであるだけでなく、卒業生も含めた運動体になりつつあるのだ。
そうした体制が整っているから『世界中の隣人よ』はOG出演が可能になった。ファンはこのMVを通して乃木坂46の過去と現在、未来の「つながり」を感じ、生きていく力が沸いたことだろう。