Novelbrightに聞く、ブレイクや偏見の目にも動じないバンドの核「上を目指すためにすべきことを常に考えている」
「みんなと僕ら」で歩んできた道のりを歌にした「時を刻む詩」
ーーNovelbrightは『バーチャルライブTOUR』と称して、バンドでのライブ配信やメンバー個人での配信、リモート演奏なども行っていますね。「今、どうすべきか?」ということは、やはりメンバー間でも話し合われたりしていますか?
雄大:めちゃくちゃ話し合っていますね。今年、各所で「2020年期待の~」みたいな形で紹介していただいていたし、本当に「今年、これから」というタイミングで、予定していた大きなフェスや、大会場でのワンマンツアーができなくなって、正直めちゃくちゃ悔しい思いはあって。でも、大変なのはみんな同じなので、「こういう状況だからこそ、俺らはこんなことができるぞ」ということが見せることができればと思って、今も、いろいろ計画を練っています。
ーー現状、どのような手応えを感じていますか?
雄大:「広がり」よりも「深さ」が出てきているというか。『バーチャルライブTOUR』をすることによって、去年のように人を増やしていくということではなくて、今までNovelbrightを応援してきてくれた皆さんと、より深くつながるきっかけになっているのかなと思いますね。今、応援してくれる人たちを寂しがらせることなく、深い関係でいることができているのかなと思う。
聡次郎:そうやね。自宅からの配信でやることによって、今まで以上に僕らのパーソナルな部分を知ってもらえるようになるし、それに、SNSやコメントを通して、お客さんからの意見――それはいい意見も悪い意見も、リアルで見ることができているんです。今まで僕ら自身には見えなかったことが、このタイミングだからこそ見えてきている。なので、『バーチャルライブTOUR』はやってよかったなと思っていますね。お客さんと新しいアイデアを共有することもできるし、応援してくれている人たちとバンドを大きくしていけるという一帯感にもつながっていると思います。
ーーでは、アルバム『WONDERLAND』についても伺いたいのですが、本作を作るに当たって、事前にどのようなことを考えられていましたか?
雄大:前に作品をリリースしたのが去年の9月なんですけど、きっとそれ以降に路上ライブやSNSを通して僕らのことを知ってくれた人たちが多いと思うんです。なので、今まで以上に作品に対する期待は上がっていると思う。そういう状況のなかで、「Novelbrightは今、こういうことができるんだぜ」って、いろんな手札が出せるアルバムにしたいなと思っていました。僕らは欲張りなんで、「邦楽ロックのリスナーに刺さってほしい」とか、そういう限定的な作り方はしないんですよね。ロックバンドが好きなリスナーにも届いてほしいし、お茶の間にも届いてほしい。学生さんにも、親世代の人たちにも、本当に、老若男女に届いてほしいんです。そういうことは、曲目を考えるときにも考えていましたね。
ーー先ほども少し話に出ましたけど、4曲目の「Photo album」は2014年の自主制作アルバムにすでに収録されている曲なんですよね。この曲が改めて収録された理由は?
雄大:この曲は18歳の頃に作った曲なんですけど、本当に思い入れが強い曲で。当時、こういうバラードを書いたことがなかったんですよ。もっと力強く前向きな歌が多かったなかで、恋愛をモチーフにした曲自体、初めてで。こっぱずかしさもありつつ、自分で言うのもなんですけど、「ピュアな気持ちで書いたなぁ」と今になって思います(笑)。前に収録されたのはライブ会場限定盤だったので、今回、初めて全国流通盤にこの曲は収録されるんですけど、ライブでやっていることもあって、嬉しいことに、今、僕らを応援してくれている人たちにもすごく愛されている曲になっていて。今回初めて音源で聴くっていう人もたくさんいると思うし、僕としても「やっと収録できる」という感じで嬉しいです。
ーー本作に「Photo album」が収録されていること自体が象徴的ですが、Novelbrightは「過去」を捨てないですよね。単純に未来への想いを語るのではなく、あくまでも「過去を背負ったうえで未来を語る」というスタンスがある。それが、雄大さんの作詞にも強い説得力を与えているように思います。例えば「君色ノート」もそうですし、「夜空に舞う鷹のように」や「時を刻む詩」も、そういう曲に聴こえました。
雄大:そうですね。自分の曲は過去が原動力になることが多いと思います。やっぱり、険しい道のりを歩んできたし、悔しいこともあったけど、それが今の自分たちを作っているんだと思うので。例えば、「夜空に舞う鷹のように」も再録の曲なんですけど、3年前くらいにめちゃくちゃ悔しい出来事があって、本当に辛い気持ちになっていった時期があったんです。そのときに、「誰もが見向きもしてくれなくても、絶対這い上がってやろう」という気持ちで作った曲だったんですよね。
ーーそういう曲も、このアルバムには必要だったということですよね。
雄大:そうですね、それに「時を刻む詩」は、ここまでの歩みのなかで、ファンの方たちが僕らを押し上げてくれたんだっていうことを歌いたくて。僕らはテレビも出たことなかったし、フェスも出たことなかったし、タイアップもやったことがなかった。周りに押し上げてくれる大人がいたわけでもなく、自力で頑張ってきたところに、みんながSNSで広めてくれたバンドなんです。「みんなと僕ら」で歩んできた道のりを歌にしたくて、作った曲です。
バンドに必要不可欠なのもの=メンバー同士のコミュニケーション
ーーあと、「ENVY」はサウンドも歌詞も刺々しくて印象的でしたね。この曲ではSNS批判というか、SNSの情報や同調圧力に流されていく人たちに対する警笛のように聴こえました。Novelbrightがこのモチーフを歌うことに、すごく意味があるなと。
雄大:20歳の僕が作る歌だろうが、22歳の僕が作る歌だろうが、24歳の僕が作る歌だろうが、そのときに抱いている感情を歌にすることが大切なんだと思っていて。そういう意味で、「ENVY」は24歳の、今の僕が直面していることを歌っている曲だなと思います。SNSを通して知ってくれる人が増えて嬉しい反面、便利な時代だからこそ、情報を鵜のみにする人が多いなと思うんですよね。誰かから聞いただけのことを真実だと受け止めてしまったり、SNSや動画で見たことがすべてだと思ってしまう人もいる。でも、実際に自分の目で確かめてみたら、それは信じていた情報と全く違うものだった、ということもあると思うんです。
ーーそうですよね。
雄大:そこは、僕も最近すごく気をつけているところで。それに、さっきも少し言いましたけど、Novelbrightは路上ライブやSNSで広まったぶん、それをよく思わない人たちだっているんです。路上ライブの動画を見ただけの人のなかには、「こいつらはただのアイドルバンドだ」っていう人もいる。たしかに、昔ながらの邦楽ロックの考え方を持っている人たちからしたら僕らはイレギュラーな存在なのかもしれないけど、そう思っている人たちに対して、「直接、ライブを観に来てみろ!」って思うんですよね。「情報に惑わされていないで、直接、自分の目で良し悪しをたしかめに来い!」って。そういう思いを込めて「ENVY」は書きました。
ーーめちゃくちゃ尖っている曲ですよね。でも、このタイミングでこの曲を世に出すことができるのは、めちゃくちゃかっこいいなと思います。
雄大:ありがとうございます(笑)。
ーー最後に、おふたりそれぞれに聞きたいのですが、Novelbrightにとって「必要不可欠なもの」があるとすれば、それはなんだと思いますか?
聡次郎:僕は、メンタルな部分が大事なバンドだと思います。僕らがなぜ、音楽をやっているかといえば、それは聴いてくれる人を喜ばせたいからなんですよね。それが原動力であるべきで、商業主義に走ってしまっては元も子もない。お金儲けのために音楽を作るっていうのは、本当に悲しくて、しょうもないことだと思うんです。なので、Novelbrightに必要不可欠なのは「届ける想い」であり、「心」の部分を大事にしていきたいですね。
ーーでは、雄大さんは?
雄大:難しい質問ですね。「Novelbrightにとって必要不可欠なのもの」か……。強いていうなら、メンバー同士の深いコミュニケーションですね。
ーーその心は?
雄大:最初に言ったように、僕がゆずやONE OK ROCKを好きだったのは、音楽性はもちろんですけど、メンバーの仲がよくて、見ていて朗らかな気持ちになれるからだったんですよね。「この人たちは、すごく楽しく音楽をやっているんだな」と思わせてくれる人たちが好きだなと思うんです。もちろん、その裏にはいろんな不安や葛藤があると思うけど、「みんなで楽しく音楽をやる」という根底の部分を忘れていない。そういう存在に憧れてきたからこそ、Novelbrightもずっとそういうバンドであれたらいいなと思うんです。特に、僕らは5人ともお金がない状況のなかで、路上ライブで全国を駆け巡ったバンドですからね。これからどれだけバンドが大きくなっても、メンバーで話し合って何事も決めていくということは、大切に守り続けていきたいなと思います。
■リリース情報
『WONDERLAND』
2020年5月27日リリース
¥2,800 (税込)
1. ランナーズハイ
2. Believers
3. 君色ノート
4. Photo album
5. おはようワールド
6. ENVY
7. 夜空に舞う鷹のように
8. 夢花火
9. スタートライン
10. candle
11. Prologue ~Before the dawn~
12. 時を刻む詩
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