King Gnuのステージが生み出す熱狂とカリスマ性 シーンを駆け上がった2019年のライブ映像を観て
King Gnuが2019年のライブ映像をYouTube上で公開中だ。年末の『紅白歌合戦』出場、2020年最初の大ヒット作となった3rdアルバム『CEREMONY』へ向かう過程を収めた2本のライブ映像からは当時の勢いが存分に伝わる。本稿では彼らが時代の覇者の座に昇り詰めた2019年に、ライブステージを如何にして掌握してきたかを紐解いていきたい。
映像の前半は2ndアルバム『Sympa』を提げた全国ツアー、4月12日の新木場STUDIO COAST公演。全国ワンマンツアーが初めてだったKing Gnuにとって、ツアーファイナルとなったこのライブはここまで培ってきたステージングを発揮する大舞台となった。特に印象的なのはツインボーカルの見せ方だ。「Slumberland」では常田大希(Gt/Vo)が危険な色香を漂わせながら観客を煽り、突き放すように拡声器で叫ぶ。「Vinyl」では井口理(Vo/Key)が深くコミュニケーションを求めるかのようにフロアを見渡しながら、甘く熱く歌い上げる。異なる2タイプのボーカルスイッチングはライブの流れの中で次々と行われ、片時も目が離せない。先の読めないアクションで観客をぐいぐい引き込んでいく。
観客を自由に踊らせて熱狂を巻き起こすKing Gnuのライブ。その盛り上がりの中核を担っているのはやはりリズム隊だ。勢喜遊(Dr/Sampler)はタメも含めてビートを的確にコントロールしつつ、「Sorrows」などスピーディーな楽曲ではよりパワフルに叩くなど、緩急自在にビートを繰り出す。新井和輝(Ba)はたおやかなベースプレイでフロアを揺らし続けながら、「McDonald Romance」ではうねるようにフレーズを動かし、アコースティックセットの「It’s a small world」ではコントラバスを操ってしっとりと踊れる空間を作り出す。King Gnuのリズムワークは楽曲の土台を成す以上に華やかで、ステージ上で輝きを放っている。
思い思いに踊る観客たちのテンションを一気に引き上げるのが、耳に馴染むメロディの大合唱パートだろう。「Slumberland」や「Tokyo Rendez-Vous」での常田の「Singing!」や「歌え!」という叫びを合図に、ひとりひとりが声を上げるエネルギッシュな光景はKing Gnuのライブを象徴する場面だ。同調や統制ではなく、個々の意思を昂らせた先に待つ狂騒。これはKing Gnuのライブでしか体験できないものであり、何度も食らいたくなる中毒性がある。この場でしか生まれない異様な熱気を次第に世間が求めるようになり、King Gnuの衝撃が全国区のムーブメントへと移り変わっていくーーそんなストーリーに納得せざるを得ない情景がこの映像には刻まれている。