Novelbrightに聞く、ブレイクや偏見の目にも動じないバンドの核「上を目指すためにすべきことを常に考えている」
大阪を拠点に活動する5人組バンド、Novelbright。きっと名前だけでも知っている人は多いだろう。抜群の歌唱力と、2000年代から2010年代の日本のロック、ポップスのど真ん中を昇華したスケールの大きな楽曲が大きな反響を呼んでいる彼らだが、ブレイクのきっかけは
2019年。春から行っていた路上ライブの様子がSNSにアップされると、たちまち「めちゃくちゃ歌の上手い人がいる!」と話題となり、TwitterやTikTokを中心に巨大なバズを引き起こした。
その後、路上ライブには観客が殺到し、iTunes総合チャートに2カ月連続で2作品が同時ラインクイン、Spotifyバイラルチャートでは8週連続1位を獲得。AWAの「2020年にくるアーティスト」ランキングで1位、『バズリズム』の「これがバズるぞ2020」でも1位、さらに『めざましテレビ』や『ZIP!』といった朝の情報番組でも紹介されるなど、一躍、バンドシーンのトップランカーの座に躍り出た。
しかし、その華やかなムーブメントの裏には、この巨大なバズを真正面から受け止めることができるくらい強固な、ライブバンドとしての下地があった。この10年間は、「バンド音楽はもう厳しい」「音楽業界はもう厳しい」と言われた時代でもあった。2013年の結成以降、ロックバンドや音楽業界を取り巻く状況が変わっていく、その時代の荒波のなかで、メンバーチェンジを繰り返しながらもライブハウスを中心に地道な活動を続けてきたNovelbright。その決して簡単ではない道のりがあったからこそ、彼らはこの時代の変わり
目に、羽ばたくための翼を手に入れることができたのだろう。
このインタビューでは、竹中雄大(Vo)と沖聡次郎(Gt)にバンドの歴史から新作
『WONDERLAND』にかけた想いまで、じっくりと語ってもらった。(天野史彬)
バンド結成の背景とそれぞれのルーツ
ーーそもそも、Novelbrightはどのような経緯で結成されたバンドなんですか?
雄大:僕が高校2年生のときに友達と趣味でやっていたONE OK ROCKのコピーバンドがあったんですけど、そのコピーバンドのライブがすごく楽しくて。まぁ、単純にチヤホヤされて勘違いしただけのような気もするんですけどね(笑)。同世代でバンド活動をしているコミュニティがあって、一緒にライブをすると、毎回、高校生ながらお客さんが2~300人くらい入っていたし、盛り上がっていたんですよ。それがすごく心地よくて、「これ、仕事にしたいわ」と思ったんです。高3になったときにそのコピーバンドは終わったんですけど、「この先もバンドで頑張っていきたい」という思いで、そのときのメンバーとNovelbrightを結成しました。なので、結成まで遡ると17歳の夏になりますね。
ーー雄大さんにとって、Novelbrightはオリジナル曲をやる初めてのバンドだったということですよね。
雄大:そうですね。もちろん、当時は今と比べるとブレブレでしたし、いざNovelbrightとして大阪に出てきてライブをしてみたら全然お客さんが入らなくて、「今までと全然ちゃうやん!」という感じにはなりましたけど(笑)。でも、「売れてやる」っていう闘争心、ハングリー精神は今と変わっていない気もします。あと、当時からしっかり自分の歌を押し出したいな、とは思っていましたね。ロックのサウンドでありつつも、自分の歌唱力をしっかりアピールできるような楽曲を作りたいというのは、当時から意識していました。
ーー雄大さんと聡次郎さん、それぞれの音楽的なルーツは、どういったものですか?
雄大:最初に言ったように高校生の頃にはコピバンをやるくらい、バンドといえばONE OK ROCKが好きだったんですけど、初めてどっぷりハマるくらいに大好きになったアーティストは、ゆずさんでした。中学生の頃からずっと聴いていて、ファンクラブにも入っていたんですよ。すごく好きなんで、レギュラーラジオも毎週聞いていたし、ファンクラブのコンテンツも全部見るし、インタビューも漁って読むしっていう感じで。そもそも、ゆずの「夏色」が弾きたくて、アコギも始めたんです。今でも自分が書く歌詞やメロディには、ゆずの影響はすごく出ているなと思いますね。
ーー雄大さんにとって、ゆずはどんなところが魅力だったのでしょう?
雄大:もちろん、音楽が自分の感覚に刺さってきたのは一番なんですけど、それに加えてゆずって、ふたりの仲のよさがすごく伝わってくるんですよね。ラジオも聞いていてもすごく楽しそうだし。そこはONE OK ROCKも同様なんですけど、仲のよさが伝わってくるグループって、見ていて幸せな気持ちになれるじゃないですか。音楽性に加えて、人間性に惹かれたところも大きいと思いますね。
ーー聡次郎さんはどうですか?
聡次郎:僕は小中学生の頃、ちょっと内気な性格で、あまり学校に行けなくて。その頃、ちょうどYouTubeが流行り始めた時期だったんですけど、動画でたまたま流れてきたJanne Da Arcのライブ映像を見たとき、すごく惹かれるものがあったんですよね。ステージとお客さんの一体感が映像からも伝わってきて、「いつか、こういうステージに立ちたいな」と思いました。それが、自分が音楽に目覚めたきっかけでしたね。中でも、僕はギターに惹かれて。それで高校生になったとき、「挑戦してみよう」と思ってギターを買いました。
ーー何故、惹かれたのはギターだったのだと思いますか?
聡次郎:やっぱり、ギターソロの華やかさ、目立っている感じがかっこよかったんだと思います。素人から見ても「難しいことをしているんだな」ってわかるじゃないですか。同じ人間だけど、もはや人間離れしているような人たちに惹かれたし、煌びやかなギタリストたちが自分にとってはヒーローでした。それで、高校生の頃に軽音部に入ってギターを弾いていたんですけど、進路選択の時期に差し掛かったときに、「ずっとギターを弾いていたいな」って決めました。ただ、僕は雄大とは違って、バンドも組んでもいなかったし、バンドで有名になりたいという気持ちも、当時はなくて。どちらかというとソロであったり、スタジオミュージシャンという形であったり、手に職をつけて音楽を届ける仕事をしたいなと思っていましたね。
ーー好きなギタリストというと、どんな人が思い浮かびますか?
聡次郎:Janne Da Arcのギターのyouさんはもちろんですけど、段々と自分が好きになった人に影響を与えた人たちのことも調べるようになって。そう考えると、僕が今までで一番ギターで影響を受けたのは、スティーブ・ヴァイですね。彼以外にも1980年代に活躍したギターヒーローたちには特に影響を受けているし、今でも憧れ続けています。
「雄大は音楽に対してピュアなんです」
ーー聡次郎さんはアルバムのなかでインスト曲などの作曲を担当していますけど、ギタリストに留まらない音楽家然としたところもまた、スティーブ・ヴァイのような多面的な人に通じるものがあるように感じます。Novelbrightは、曲によって、作曲は雄大さんと聡次郎さんの共作であったり、雄大さんと海斗さんの共作である場合もありますが、曲作りはどのように行っていますか?
雄大:曲は基本的に、まず聡ちゃん(聡次郎)と海斗くんがボーカルメロディの入っていないトラックを作ってくれるんです。そこに、僕がメロディと歌詞を付けて、みんなでアレンジするっていう形ですね。
聡次郎:僕らは、雄大の声が乗る前のトラックの段階で、ピアノやシンセ、ストリングスなんかまで入れ込んで、そのままミックスまで持っていけるくらいのクオリティまで作り込むんです。そこに雄大の歌が乗せたあとで、「ここはいらないな」という部分を削っていく、いわば「引き算」のアレンジの仕方をしているんですよね。いつも、雄大に聴いてもらう段階では「牛丼トッピング全部乗せ」みたいな状態なんですけど(笑)、そのうえで雄大に歌ってもらうと、よりコッテコテのものができ上がる。なので、そこから削ぎ落としていくんです。きっと、僕らの作曲方法はかなり変わっているんじゃないかと思うんですけど(笑)。
ーーそうですよね(笑)。
雄大:自分たちには、このやり方があっているなと思いますね。普通のギターのコードだけを渡されてメロディを付けるのと、音源がある程度完成された状態のものにメロディを付けるのでは、僕のテンションも変わってくるんです。やっぱり、ある程度完成されたもののほうがテンションは上がるし、聡ちゃんも海斗くんもそれをわかってくれているので、やりやすいですね。
ーーせっかくなので、雄大さんと聡次郎さんが、それぞれお互いを音楽家としてどのように見ているのか、知りたいですね。
聡次郎:これは全然悪い意味じゃなく、雄大は音楽に対してピュアなんですよね。僕は音楽に対して理論やセオリーを踏まえて制作するタイプなんですけど、雄大はそうではなくて、自分が気持ちいいと思うメロディや心にストレートに響く歌詞を真っ直ぐに書くことができるボーカリストで。その、淀んでいないピュアな感じが魅力だなと思う。
雄大:……(恥ずかしそうに笑う)。
ーーでは、雄大さんから見た聡次郎さんは?
雄大:もう本当に、聡ちゃんが言ったことの反対というか。聡ちゃんの言うように、僕は感覚だけで思うがままに音楽をやってきたんですけど、聡ちゃんは本当に勉強熱心なんですよね。理論も頭に入れているし、僕なんかじゃ触れないソフトも勉強して触れるし、音楽に対して本当に真面目な姿勢の人だと思います。曲作りも、緻密に考えながらやっているので、本当に尊敬します。
ーーお互いが補い合っている関係性なんですね。
雄大:そうですね。それに、聡ちゃんと海斗くんも、また違うタイプなんですよ。海斗くんはきっと僕に近くて、感覚で音楽を作るタイプなんです。そうやって全然タイプの違う人間が作るからこそ、タイプの違う曲たちが生まれてくる。そこもNovelbrightのいいところなのかなと思います。