Mrs. GREEN APPLE、ライブ映像から伝わるメッセージ アリーナツアー『エデンの園』の意義を振り返る

Mrs. GREEN APPLE、ライブ映像から伝わるメッセージ アリーナツアー『エデンの園』の意義を振り返る

 Mrs. GREEN APPLEのアルバム『Attitude』のリリースツアーであり、同時にデビュー5周年を記念する「集大成」という位置づけでもあったツアー『ARENA TOUR / エデンの園』。そのハイライトのひとつとなった2019年12月8日・横浜アリーナ公演から、「僕のこと」「WanteD! WanteD!」「インフェルノ」3曲のライブ映像が次々と公開された。外出自粛でライブに行くこともままならないなか、少しでも家で楽しんでもらいたいというバンドの意思も込められているのだろう。

 3曲はいずれもM-ON!で放送されたもので、7月8日にベストアルバム『5』と同時リリースされる映像作品『EDEN no SONO Live at YOKOHAMA ARENA 2019.12.08』に収録されるものとは別編集バージョン。このアリーナツアーはソールドアウトも続出し、会場に行けなかった人もたくさんいただろう。とりわけ、アニメの主題歌となったこともあって動画サイトやSNSでカバー動画が続々アップされる人気曲となった「インフェルノ」のライブパフォーマンスは、ファンにとっては嬉しすぎるプレゼントである。

Mrs. GREEN APPLE – インフェルノ 【LIVE from M-ON!】

 さて、そのライブ映像。メンバーの演奏はもちろん、音作り全体のクオリティの高さ、照明や映像による演出の美しさ……ライブとしての完成度の高さに目を瞠るポイントはいくつもある。咲き乱れる花の映像を全面に背負うなか、藤澤涼架や髙野清宗の万感こもった表情を見ることもできるバラード「僕のこと」の名演、若井滉斗のギターソロや山中綾華の激しいドラムとともにオーディエンスのシンガロングも天井なしに盛り上がっていく「WanteD! WanteD!」、藤澤が激しく頭を振りながら客席を煽り、次々と上がる火柱にテンションが最高潮に達する「インフェルノ」……3曲それぞれのカラーを発揮して現場の熱狂と感動をストレートに伝えてくる映像は、家にいながら彼らのライブの一体感を味わわせてくれる。しかし、そのなかで僕が改めて強く感じたのは、実は「なぜ大森元貴はこんなにも淡々と歌うのだろう」ということだった。

Mrs. GREEN APPLE – 僕のこと 【LIVE from M-ON!】

 もちろんテンションが低いわけではない。「インフェルノ」でのエモーショナルな叫び、「僕のこと」で万感込めて歌い上げるメロディ、「WanteD! WanteD!」でオーディエンスを巻き込んでいくカリスマ性、どれも強烈な印象を観ている側に残すものだし、それ以前に、すべての楽曲の歌詞には彼の人生観、哲学、メッセージがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。しかしそれをオーディエンスに向けて放つときの彼は、まるでその楽曲たちはすでに君たちのものだとでもいうような無造作さで歌を投げかけてくる。

Mrs. GREEN APPLE – WanteD! WanteD! 【LIVE from M-ON!】

 僕はこのツアーのファイナル、2月16日の代々木第一体育館でのライブを観たが(Mrs. GREEN APPLE、壮大なステージ演出で魅せた第1章の集大成 『ARENA TOUR/エデンの園』代々木公演レポート)、そのときも実は似たようなことを感じていたのだ。もちろん、初のアリーナツアーの最終日ということでメンバーたちの演奏にも鬼気迫るものがあったし、感情を高ぶらせて思いの丈を語るMCにも心が震えた。最後には大森自身も「まさかこんな爆速でこんな景色を見れるとは思ってもみなかった」と感極まっていたし、アンコールの最後に演奏された彼らの原点「我逢人(がほうじん)」にはミセスが5年かけて何を伝えようとしてきたのかのすべてが詰まっているように感じた。

 だがそこでも大森は、熱狂やあふれる感情はメンバーやオーディエンスに半ばまかせて、どこか自分たちと巨大な会場に生まれた光景を違う視点から見ているような……それこそ優れたサッカー選手が常にピッチを俯瞰で見渡すような感覚を持っているといわれるのと同じような意識をもちながら今この場に立っている、そんな感じがしたのだ。

 今回映像も公開されている「僕のこと」はタイトルどおり一人称の「僕」を主人公にした曲だが、そこでの「僕」はどこか他人のように「僕自身」を見つめ、すべてを見通すようにして〈僕らは知っている〉と歌う。

 それは、たとえば「我逢人(がほうじん)」で「貴方」という親密な呼びかたを用いながら最終的には楽曲のメッセージを〈誰かは出会って 誰かは好いて〉と不特定の「みんな」ごとにしていく視点とも似ている。「インフェルノ」もそうだ。〈音が出る玩具も/痛みを飛ばす魔法も/全部僕にとっての宝物〉と音楽やバンドへの思いを込めたあとで〈僕らは命の火が消えるその日まで歩いてゆく〉と意識のカメラが一気にロングショットに引いていく。

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