赤い公園が『THE PARK』で体現したバンドのポップネスーー津野米咲の音楽家としての感性にも注目
赤い公園にとって2度目の“1stアルバム”とも言える『THE PARK』は、10年後、20年後にも金字塔として語り継がれる最高傑作だ。豊潤なイマジネーション、沸き起こる衝動。赤い公園はいつだって想像の遥か先を走っている。
赤い公園は今年で結成10周年。新体制になり5月で3年目を迎える。新ボーカルとして石野理子が加入した初めてのステージは『VIVA LA ROCK 2018』だった。事前告知なしにバンドボーカルとして登場した彼女が、まだ10代だということにその場の目撃者は驚いていたが、今振り返ると幾分の初々しさもあったように思える。
その初々しさが徐々に消えていったのが、新体制初のワンマンツアー『Re: First One Man Tour 2019』。毎週末、東京に通い音楽制作をしていた石野が、このタイミングで広島から上京。全国を巡るツアーでの時間も相まって、一気に津野米咲(Gt)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr)との距離が縮まっていく。また、このツアーでは、新体制初の新曲として発表された「消えない」のほかにも、多くの未発表曲(後にリリースされる『消えない – EP』収録「凛々爛々」「HEISEI」など)でセットリストが構成されていた。フェスやイベントへの出演、2019年に2度行われたYouTube Liveでの配信ライブ、後の『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』にも共通して言えることだが、完成した楽曲をライブで躊躇うことなく披露する赤い公園は、ライブの中で成長してきたのだ。
忘れられないのが『消えない – EP』のリリース後に開催された『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』でのバンド全体のアップデート。そこに初ステージ、前回のワンマンツアーの面影はなく、オープニングからステージの真ん中に凛として立つ石野の姿は衝撃的だった。バンド全体が纏う雰囲気と演奏面でのグルーヴは、目に見えて大きく、強さを増し、バンドと一緒に楽曲自体も格段に変貌を遂げていた。たとえば、「消えない」Aメロ冒頭のブレイク、「Yo-Ho」ではシンセパッド、シンセベースにて、石野も演奏に参加する打ち込みビートなど、大胆なライブアレンジ。つまり、未発表曲としてライブで披露していた楽曲がリリースを迎えたとしても、その型にハマることなく、歩みを進めるのが今の赤い公園なのだ。