IDOLiSH7 和泉三月はファンをポジティブにしてくれるアイドルだ ソロ曲「三日月のヴェール」から考察

 アイドルがファンに与えてくれるものは様々あるが、”観ているものに対してポジティブな影響を与える“という役割は、彼らの仕事においてかなり大きなウエイトを占める使命なのではないだろうか。

 和泉三月は、アイドルがなんたるかを良く知るアイドルだ。彼自身、長くアイドルを目指していたということもあるのだろうが、もっと本質的な部分でアイドルがファンにもたらす喜びそのものを知っている。ファンの喜びが自らの喜びとなり、和泉三月の喜びがファンの喜びとなる。アイドルは夢の存在だが、その夢によって人は現実を走って行けるということを体現できる稀有な存在なのだ。

 かわいい衣装もフレッシュな衣装も着こなしてしまうキュートなルックスながら、内面は漢気のある頼れる兄貴分。料理やお菓子作りが得意、といったギャップも魅力的だ。「ピタゴラス☆ファイター」や「男子タルモノ!〜MATSURI〜」といったパーソナリティを色濃く打ち出したユニット曲でもわかるとおり、司会進行から盛り上げ役、個性豊かなメンバーのツッコミと、場を巧みに盛り上げるMC術が高い評価を受けている。個性の強いメンバーの揃うIDOLiSH7を、前面に立って引っ張っていくことができている、という点だけを見てもその能力の高さがわかるだろう。

 そんな高いコミュニケーション能力は、メンバーや仕事相手のみならずファンに対しても発揮していて、アイドルらしいファンサービスには定評がある。その根底には「ファンを喜ばせたい」というまっすぐな気持ちがあるのだろう。

 観客の前では元気いっぱいに笑顔を咲かせる彼だが、その裏側にはかなりの努力や苦悩があることは想像に難くない。努力する姿を売りにしているわけではないが、様々な障壁を乗り越えてステージに立ち、何事にも全力で一生懸命な姿というのは観客にも伝わるものである。感激すれば涙ぐみ、嬉しければ満面の笑顔を見せる。そしてそんな彼の等身大で真摯な姿にメンバーのみならず、ファンやライバルたちも鼓舞される。こういうところも、和泉ならではの個性である。

 そんな彼のソロ曲「三日月のヴェール」は、普段の彼の元気で明るい印象から打って変わって、静かな名バラード。”大人の子守唄”と本人が説明するとおり、包み込むようなサウンドのワルツにやわらかく落ち着いた和泉のボーカルが乗り、聴いている者にそっと寄り添う優しい楽曲だ。

和泉三月「三日月のヴェール」

 ほかの誰が歌っても違和感があっただろう。それくらい和泉三月というシンガーにフィットしている曲だ。彼が様々な想いを経験して夢を叶えたからこそ、歌えると言えるだろう。

 夢を叶える人間はそう多くない、と言われる。だが本当にそうだろうか? 人々の日々の生活の中に確実に存在する小さな願いや希望は、ささやかに毎日叶えられている。それは平凡な私たちの日々の積み重ねによって成されている、尊いものだ。和泉は「三日月のヴェール」の中で、そんな私たちの小さながんばりをそっと認め、ひと息つくように寄り添ってくれる。その日1日精一杯生きた自分を慈しみを持って見つめることができるような、優しい子守唄である。

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