ジェイムス・ブレイク、ボノ、エルトン、テイラー......自宅配信などで新型コロナウイルスの脅威に立ち向かう海外ミュージシャン

 アーティストによるライブ配信のムーブメントはますます大きくなっている。このムーブメントの旗振り役となっているのは映画『ロケットマン』でも注目を浴びた、イギリスの伝説的シンガーソングライター、エルトン・ジョンだ。彼は新型コロナウイルス感染者の治療にあたっている医療関係者を支援するチャリティー番組『iHeart Living Room Concert for America』を主催しており、アーティストはそれぞれ自宅のリビングルームからスマホで出演することになっている。この番組の趣旨にアリシア・キーズ、ビリー・アイリッシュ、デイヴ・グロール、サム・スミス、マライア・キャリーなどの豪華なメンバーが賛同し、パフォーマンスを披露してくれた。番組の最初に登場したアリシア・キーズはピアノの弾き語りで「Underdog」を演奏。「この歌は祈り。我々がどれほど困難に打ち勝ってきたか思い出してほしい」と呼びかけた。

Alicia Keys Performs "Underdog" | THE iHEART LIVING ROOM CONCERT FOR AMERICA

 滞在先のハワイからパフォーマンスを届けてくれたのはデイヴ・グロール。自らがフロントマンを務めるロックバンド・Foo Fightersの名曲「My Hero」をアコースティックギターによる弾き語りで力強く歌い上げた。彼が吐き出す目一杯のスクリームは閉塞感漂う世界に一筋の太い光を示してくれたように感じる。

Dave Grohl Performs "My Hero" | THE iHEART LIVING ROOM CONCERT FOR AMERICA

 スマートフォンによる撮影や自宅のリビングルームでの演奏といった限られた環境で行われたにも関わらず、どのパフォーマンスもそのハンディキャップを感じさせないほどのクオリティと表現力。あらためて出演アーティストのプロフェッショナリズムと音楽の力を感じずにはいられなかった。

 新型コロナウイルスに関するアーティストのアクションはライブ配信だけにとどまらない。アメリカのラッパーで実業家のJay-Zと歌手のリアーナは新型コロナウイルスの影響を受けた人々を支援するため、それぞれ100万ドルを寄付した。テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデもSNSを通じ、経済的に新型コロナウイルスの影響を受けたファンに対して個人的な寄付を行っている。支援を必要としている個人を募り、個別で寄付を行う現象はSNSが発展した現代ならではの動きだろう。

 支援の輪は音楽ストリーミングサービス「Spotify」にも広がっている。Spotifyでは新型コロナウイルスの影響を受けている音楽関係者に向けて「COVID-19 Music Relief」というプロジェクトを立ち上げ、寄付を募っている。ユーザーは指定されたいくつかの音楽団体に寄付できる仕組みだ。

 新型コロナウイルスによる音楽業界への影響はまだまだ拡大していくだろう。今後アーティストや音楽業界のリアクションも増えていくはずだ。不安や心配なく音楽を心から楽しめる日が来るまで、新型コロナウイルスの収束を願いながら動向をチェックし続けていきたい。音楽はどのような状況下でも鳴り続けるのだ。

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
Twitter : @Z1169560137

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