Plastic Tree『十色定理』が示すバンドの現在地 静と動、伝統と革新が散りばめられた音楽性に注目
前作『doorAdore』からおよそ2年ぶり、Plastic Treeのオリジナルアルバムとしては通算15枚目となる『十色定理』がリリースされる。タイトルは、「平面上のいかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗り分けるには4色あれば十分である」という定理「四色定理」から着想を得たメンバーによる造語。アルバム収録曲は10曲で、「この10曲さえあれば、Plastic Treeの“今”を全て表し切れる」とのメッセージにも読み取れ、もしそうであれば彼らが本作に対して並々ならぬ手応えを感じていることが伺える。
Plastic Treeは1993年、有村竜太朗(Vo)と長谷川正(Ba)を中心に結成された4人組バンド。1994年、サポートメンバーとして参加していたナカヤマアキラ(Gt)が正式加入し、以後ドラマーの脱退・加入を何度か経て2009年に佐藤ケンケンが加入、今の編成となる。本人たち自ら「ヴィジュアル系」であることを表明しているが、昭和歌謡やニューミュージック、ヘヴィメタル、シューゲイザーなど様々な音楽スタイルを取り入れたそのサウンドや、幻想文学などからの影響を感じさせる歌詞の世界など、ひとつのジャンルにとらわれない作品づくりによって、唯一無二のスタンスを築いてきた。
例えば、彼らはライブのオープニング曲としてMy Bloody Valentineの「Only Shallow」を90年代から使用しており、ヴィジュアル系界隈にマイブラ(及びシューゲイザー)の存在を浸透させるのに、ある意味一役買ったといっても過言ではないのだ(実際、「Plastic Treeのライブでマイブラを知った」という人を何人も知っている)。また、2017年にリリースされた彼らのトリビュートアルバム『Plastic Tree Tribute~Transparent Branches~』には、氣志團やPeople In The Box、相川七瀬、THE NOVEMBERSなど、世代もジャンルもまるでバラバラなメンツが並んでおり、Plastic Treeがヴィジュアル系の枠に収まらない活動を続けてきたことの証左となっている。
さて本作は、PS Vita用ゲーム「Collar×Malice -Unlimited-」の主題歌となったシングル曲「インサイドアウト」(2018年)と、そこからおよそ1年ぶりにリリースされた最新シングル曲「潜像」に加え、新たに書き下ろした8曲を収録した内容だ。メンバー全員がコンポーザーであるのはPlastic Treeの強みの一つだが、今作もまた、シングル以外の作詞作曲を4人がそれぞれ2曲ずつ担当している。