Plastic Treeは、儚くも美しいピュアネスを保ち続けているーー『doorAdore』ツアーファイナル

Plastic Treeは、儚くも美しいピュアネスを保ち続けているーー『doorAdore』ツアーファイナル

 今年3月に通算14枚目のアルバム『doorAdore』をリリースしたPlastic Treeが、それを携えてのライブツアー『Spring Tour 2018「doorAdore」』を、3月10日より新潟・NIIGATA LOTSを皮切りに全国19会場で開催。ファイナル公演となる5月9日は、東京・中野サンプラザホールにて行われた。

 青を基調としたステージの左右には、アルバム『doorAdore』のジャケットを彷彿とさせる白いドアが2つ立てられている。客電が落ち、まずは「遠国」からこの日のライブはスタートした。バックスクリーンにいくつものドアが映し出され、次々と開いて様々な景色を映し出す。そんな中、ナカヤマアキラのギターは流麗なアルペジオと凶暴なソロで、楽曲に強烈なコントラストをつけていく。一方、有村竜太朗のボーカルは、今にも消えてしまいそうなほど美しくも繊細だ。

 続く「恋は灰色」も、セクションごとに目まぐるしく表情を変えていくナカヤマのギタープレイに耳を奪われる。有村も負けじとエレキギターをかき鳴らし、楽曲に厚みを加えていく。ほぼ女性ファンで埋め尽くされたフロアはすでに総立ち状態で、ドラムの佐藤ケンケン、ベースの長谷川正が繰り出す疾走感たっぷりのリズムに対し、激しい折りたたみ(ヘッドバンキング)で応じている。2階席から臨むその光景は、まるで異国の宗教的儀式のようだった。

 幻想的かつ耽美的なパフォーマンスから一転、MCになるとコミカルでまったりとした一面を覗かせる有村。「やあやあ」といつもの調子で挨拶し、会場の笑いを誘う。「ついにこの日が来ちゃいましたね、春が終わるよ」と、オーディエンスに話しかけると、「やだー!」「もっとやって!」とあちこちから声が上がった。

 その後も、PlayStation Vita用ゲーム『Collar×Malice』オープニング主題歌に起用された、モータウン風のリズムが異色の「サイレントノイズ」、むせ返るほど焚かれたスモークに青い照明が当たり、まるで海の中にいるような気分にさせる「曲論」(1stミニアルバム『echo』収録)と、新作〜近年の楽曲を中心にステージを展開していく。アルバムの中でも1、2を争うアグレッシブな楽曲「エクジスタンシアリスム」では、有村と長谷川が向かい合って息を合わせ、「ユートピアベリーブルー」ではナカヤマ、長谷川がステージ前方までせり出し、有村はハンドマイクでステージ狭しと練り歩く。さらに「念力」では、オーディエンスの持つサイリウムが一斉に青白く光り始め、会場の一体感を一層強めた。

 「温まってきましたね。もっと温まりますか?」と有村が呼びかけ、マイクを赤い拡声器に持ち替えて「scenario」を披露。続く「静かの海」では、バックスクリーンに寝静まった夜の街と泳ぐ魚の姿を、二重露光で映し出してゆく。さらに「雨中遊泳」では、雨の映像をバックに有村は傘を差しながら歌った。つくづくPlastic Treeは、雨や水をテーマにした曲が多い。最後は、「エクジスタンシアリスム」と並ぶアグレッシブなナンバー「サーチ アンド デストロイ」を演奏し、最後に有村が紙の束を宙に向かってばら撒きステージを後にした。

 アンコールでは、2004年のポップチューン「春咲センチメンタル」を披露。舞い散る紙吹雪にピンク色の照明が当てられ、まるで桜の花びらのようだ。ディレイとコーラスを組み合わせたナカヤマの神秘的なギターサウンドは、まるでCocteau Twinsを彷彿とさせるものだった。

 ダブルアンコールでは、ケンケン、長谷川、ナカヤマそして有村の順にステージに登場し、缶ビール片手にまるで飲み会のような和気藹々としたトークを披露し会場を沸かす。ケンケンは「アルバムの曲たちが、ここまで成長するとは思わなかった。今日がその、ひとつの完成形だと思う」とツアーを総括。有村は「アルバムを仕上げるのはとても難しかったのだけど、みんなで『どうしたらいいんだ?』って詰めていくのが本当に楽しかった」と、新作のレコーディングを振り返った。

 和やかな雰囲気のまま「マイム」を演奏した後、「実は今日、特別な方がゲストに来てくれています。こういうの、Plastic Treeでは初ですね」と有村が告げ、緊張した面持ちで「遊びに来てくださいました、清春様です!」と清春をステージに呼び込むと、このサプライズ演出に会場はどよめきにも似た大きな歓声が上がった。「24年やって来て、こんなの初めてなので……失礼があったらすみません!」と清春に向かって深々とお辞儀する有村に、会場からは笑いが起きた。その清春をゲストに演奏したのは「メランコリック」。昨年リリースされた、Plastic Treeのトリビュートアルバム『Plastic Tree Tribute〜Transparent Branches〜』で、清春がカバーした楽曲だ。2人は息の合った掛け合いボーカルを披露。曲が終わり、清春をステージから送り出したあと有村は、「感無量です……ミュージシャンは長く続けるべきだね」としみじみ語った。

 「最終日ということで、もう少し遊んでもいいですか?」と客席に呼びかけ、さらにもう1曲、「Ghost」を披露。「これからもずっと、枯れない樹の下にいましょう。これからもPlastic Treeをよろしくお願いします」と有村が挨拶し、この日の公演は全て終了した。メジャーデビュー20周年を迎えてもなお、儚くも美しいピュアネスを保ち続けているPlastic Tree。その真髄に触れるようなライブだった。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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