エビ中の成長、日向坂46の躍進、女性アイドルの結婚……『アイドル楽曲大賞』2019年のシーンを振り返る

エビ中の成長、日向坂46の躍進、女性アイドルの結婚……『アイドル楽曲大賞』2019年のシーンを振り返る

 アイドルが1年間に発表した曲を順位付けして楽しもうという催し『アイドル楽曲大賞』。2019年のランキングでは、私立恵比寿中学、sora tob sakana、lyrical schoolなどが高順位にランクインした。

 リアルサウンドでは『アイドル楽曲大賞アフタートーク』と題した座談会を開催し、ライターとして企画・編集・選盤した書籍『アイドル楽曲ディスクガイド』を著書に持つイベント主宰のピロスエ氏、コメンテーター登壇者からはアイドル専門ライターであり、『IDOL NEWSING』制作・運営に携わる岡島紳士氏、著書に『MOBSPROOF EX CREATOR LIFE is HARD「渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする」』を持つ音楽評論家の宗像明将、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏が参加。前編では、メジャーアイドルシーンを中心に、楽曲の傾向や活動論、2020年の展望について語り合ってもらった。(編集部)

エビ中「星の数え方」は「区切りとしてメッセージ性の強い曲」

ーー今年は私立恵比寿中学が「星の数え方」で1位を獲得。ほかにも、4位に「Family Complex」、5位には「曇天」がランクインしました。

ピロスエ:エビ中はアイドル楽曲大賞の常連グループですが、1位を獲得したのは今回が初めてです。スローバラードが1位になったのも、楽曲大賞では珍しいですね。

岡島紳士(以下、岡島):エビ中は2019年で10周年を迎えました。増えたり減ったりしつつも、オリジナルメンバーは残っていて、学芸会と呼ばれているライブは、実践を重ねながらパフォーマンスもレベルの高いものになっている。そんな中で、歌唱力の限界に挑むというテーマで作られたのが「星の数え方」なんです。三声の和音に挑戦していて、それがファンにも響いた。月日を重ねてここまで来られたという、10周年を象徴する曲でもあります。「キレのないダンスと不安定な歌唱力」というコンセプトを掲げていた初期の彼女たちしか知らない人がライブを観たら、びっくりするぐらいに全員が歌い上げているんです。

宗像明将(以下、宗像):平山大介さん、福山整さんのソングライターユニット・invisible mannersが作詞、作曲をしているんですけど、私が去年2人に取材をしているんですね。2人にとっても「星の数え方」は自信作らしくて、特に平山さんがメロディーメーカーとしてやっていきたいという思いが強く溢れ出たと言っていた曲。作家サイドの思いと、今のエビ中の在り方、立ち姿に響き合うものがあった故の1位なんだと感じました。この曲は明確にラブソングとして描かれているんですけど、“星”という言葉をエビ中が歌った時に、いろんなものを連想させるというのもエビ中のアーティストとしての成長がもたらしたものだろうなと思います。

私立恵比寿中学「星の数え方」

岡島:松野さんのことがあってから、今までの曲の意味合いが変わってしまったところもある。去年発売された結成10周年記念本のタイトルが『幸せの貼り紙はいつもどこかに』で、「幸せの貼り紙はいつも背中に」のもじりになっているんです。松野さんのセリフがある、彼女にとっての象徴的な曲で。歌詞って抽象的だからどうしても連想せざるを得なくなってしまう。難しいですけどね。

ガリバー:「星の数え方」は、エビ中にとっては年間の中でも象徴的なライブ「ファミえん」のラストを飾るくらい彼女たちにとっても大切な楽曲なんです。個人的に、エビ中はいつまで不幸な出来事を背負わなければいけないのだろうかと思っていたところがありました。宿命なんだけれどもいつまでもその影をまとって活動していかなければならないのかと。でも、アルバム『playlist』を聴いて、自分たちが作詞した曲も含めて、一歩進んだなと。本当に素晴らしい作品なので、この辺りで踏ん切りをつけようとしているなと感じました。次に向かっていくという意味でも、区切りとしてメッセージ性の強い曲が1位になったのはよかったと思いますね。

私立恵比寿中学「Family Complex」

ーー12月にリリースされた『playlist』は、来年のノミネートになりますね。「Family Complex」と「曇天」は、「星の数え方」と一緒にアルバム『MUSiC』に収録された楽曲です。

岡島:「Family Complex」は、岡崎体育が手がけた「サドンデス」に続いて2曲目の楽曲です。エビ中の日常を分かりやすく表現していて、岡崎体育の世界観がエビ中に合致したことで、もう一度起用になったのだと思います。この人の作る曲も歪で、これだけラップが入っていても昔のJ-RAPのように聴こえる。電気グルーヴが好きだからわざとそうしてるのかもしれないですけど。ほかにも、エビ中はSUSHIBOYSともやったりしていて、エビ中のラップ部分は、さつき が てんこもりさんが書いてるんですよね。A&Rチームはアイドルソングであるということにこだわりがあるんだろうなと思います。

私立恵比寿中学 「曇天」MV

宗像:「曇天」は吉澤嘉代子さんが書いた曲ですね。“中学”と謳っているエビ中が非常に大人っぽい表情を見せる意外性もあったし、メランコリックな部分も含めて、この順位にきたんだろうなと思います。

岡島:エビ中は10年で大人になり、メンバーの実年齢にあった恋愛曲を歌っている。MVはイラストレーターの大島智子さんで、アンニュイな筆致のアーティスト。今までのエビ中のイメージを覆すような作品にしたかった意図を感じます。

ーー「星の数え方」と同数で接戦の末にポイント差で2位になったのが、lyrical school「LAST DANCE」です。2度目のメジャーデビュー作品で、MVは映画のオマージュになっています。

lyrical school「LAST DANCE」

ピロスエ:最近は、オマージュ系のMVをよく見ますね。フィロソフィーのダンスの「イッツ・マイ・ターン」、BEYOOOOONDSの「アツイ!」も全編オマージュで出来てる。

岡島:「LAST DANCE」が収録されたアルバム『BE KIND REWIND』は、VHSをモチーフにしていて、ビジュアル面の見せ方においても、80~90年代の引用をしている。パフォーマンス面にしても、今作よりも前からですが、しっかり振り付けを入れたダンスから、動きにヒップホップっぽさを取り入れていたり。「LAST DANCE」は、今のリリスクのモードを象徴している曲とも言えますね。メジャー的な見せ方の中で、コンセプチュアルな部分が強くなってきた印象です。

宗像:去年、11月によみうりランド 日テレらんらんホールでツアー最終公演をしたんですけど、ファンもみんなめちゃくちゃ楽しそうでしたね。そういったところもグループの在り方として示されている気がしますね。

ガリバー:リリスクは、すごく安定しているイメージがあります。特にコンセプト・アルバムのクオリティについては一切ハズレが無く、高水準を維持したまま今もアイドルラップ界を牽引するトップランナーとして走り続けています。

ーー3位はこれも僅差でsora tob sakana「knock!knock!」です。

sora tob sakana/knock!knock! (Full)

宗像:EDMのブリッジにアラブ音階を使うという、照井(順政)さんの一本技のような曲ですね。

岡島:アルバム『World Fragment Tour』のリード曲で、途中で民族音楽の音階が使われていたり、ダンスもアジアンテイストだったり、今までとは変わった路線の楽曲です。

ーーsora tob sakanaは、8位にも「flash」が入っていますね。

sora tob sakana/flash

岡島:アニメ『ハイスコアガールII』のオープニングテーマで、前期「New Stranger」から引き続き、チップチューン的な要素も取り入れています。オサカナとアニメのテーマ性も合致していたなと感じます。オサカナは去年5月に風間(玲マライカ)さんが卒業してしまって3人になりました。卒業公演は観に行けなかったんですが、涙というよりかは、いろんなものを盛り込んで元気な感じで終わっていった、風間さんらしい公演だったと聞いています。

ーー18位の「ささやかな祝祭」は、3人体制になって初のシングル曲です。

sora tob sakana/ささやかな祝祭(Full)

岡島:MVのテイストが今までとは明らかに違っていて、3人になり新しいことをやっていこうというのを感じます。歌詞の世界観でもメンバーが大人になっていくにつれて、恋愛テイストのある曲も増えていっていて、オサカナのコンセプトの中だけでなく、何かしら試していくというところでの方向性かもしれないですね。

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