作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第24回

作詞家 zoppが紐解く、ヒゲダン楽曲の4つのポイント 「歌詞の重要な箇所に“響きやすい音”を取り入れている」

〈「とても綺麗だ」〉は〈僕〉と〈君〉以外の第三者目線のメッセージ

――最後にオチをもってくることは、やはり歌詞を作る上では重要ですか?

zopp:そうですね。そうすることで、聴き手は曲をフルで聴きたくなると思うんです。BUMP OF CHICKENの楽曲も同様で、例えば「K」では、ホーリーナイト(Holy night)と名付けられた黒猫が死んでしまった後に、飼い主の恋人から名前にアルファベット一つ加えられて埋められる場面があります。で、最後に〈聖なる騎士を埋めてやった〉というフレーズがきて、タイトル「K」の意味が明らかになる。最後まで聴き手を飽きさせない展開ですよね。ヒゲダンは、BUMP OF CHICKENに比べてストーリー性というよりも登場人物の感情を表す内容になっていますが、構成としては重なる点があると思います。

ーーたしかに。しかし、最近ではこうした歌詞構成はあまりみられないですよね。

zopp:実は歌謡曲でもこうした構成はよく使われていたんです。ただ、昨今このような構成が珍しくなったのはタイアップ商業主義によるものなのではないかと思います。特にCMで起用されればサビが大量にテレビで流れますし、視聴者はそのサビを何回も聴きたいはず。歌番組で披露する際も1番フル→大サビという流れがほとんど。そのため、同じサビを繰り返す楽曲が好まれていったのではないかと思っています。しかし、昨今はサブスクも珍しいものではなくなりましたし、そういった売り方はされなくなってきているのかもしれません。

ーーリスナーの需要によって歌詞の構成も変化していくという指摘は興味深いですね。

zopp:とはいえ、同じサビを繰り返すことが悪いわけではないんです。繰り返しがない歌詞は「言えることが増える」という利点があるのでストーリー性のあるものに向いています。一方でサビを同じパターンにしている歌詞はその楽曲のなかで一番伝えたいメッセージを強調することができるというメリットがある。僕は、自由に作詞していい楽曲に関しては、そういった利点を考えた上で自分の中でコントロールしていますね。

ーーなるほど。

zopp:あと、藤原さんがインタビューで「Pretender」の〈「とても綺麗だ」〉は〈僕〉と〈君〉以外の第三者目線のメッセージであると明言されていたことが印象的でした。もしかしたら、ヒゲダンの楽曲に含まれた最後のフレーズは、藤原さんの率直なメッセージなのかもしれません。例えば「宿命」だったら、彼が本当に伝えたいことは、宿命によって〈暴れ出すだけなんだ〉ではなく、〈立ち向かうだけなんだ〉の方を伝えたいのかもしれないですね。

――改めて見直してみると、ふいに第三者目線が入ることでよりフレーズの強度が増している感じがします。

zopp:そうですね。韻を踏むこと以外にも斬新なギミックをいくつも取り入れられていて、藤原さんは非常に興味深い書き手だと思います。

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