森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.189
ヒゲダン、リトグリ、FANTASTICS、あっこゴリラ、ATEEZ……“ビートと歌”の表現に注目
進化と融合を繰り返すビートの潮流をいかに掴み、そこにどんな歌(フロウ)を乗せるかーーヒップホップ、R&Bのシーンで研ぎ澄まされてきたこのメソッドは、J-POPにも大きな影響を与えつつある。Official髭男dismのシングル『I LOVE...』、Little Glee Monsterのアルバム『BRIGHT NEW WORLD』などを通し、“ビートと歌の表現”に注目してほしい。
大ヒットアルバム『Traveler』を引っ提げた初の全国アリーナツアー(3月~)を控えているヒゲダンのニューシングル『I LOVE...』は、2020年代以降のJ-POPの在り方を決定づけると言っても過言ではない、エポックメイキングな楽曲だ。厚みのあるキックとベース、重層的なシンセサウンド、軽快なワウギター、解放感に溢れたホーンを融合させたトラック、そして、ドラマティックにしてエモーショナルな旋律が一つになったミディアムチューン。現在進行形の海外のポップスと同期したサウンド、日本語の響きを活かしたリリックを含め、いま考え得る最高のプロダクションが施されている。対象を問わない愛をリリカルに描いた歌詞のメッセージ性も現代的。この曲でヒゲダンはさらなるブレイクを果たすことになるだろう。
NHKラグビーテーマソング「ECHO」、Earth, Wind & Fireとのコラボレーションによる「I Feel The Light featuring Earth, Wind & Fire」などの話題曲を含む5thアルバム『BRIGHT NEW WORLD』。小林武史、いしわたり淳治、水野良樹、今井了介といったヒットメイカー、さらに海外のクリエイター陣も参加した本作は、ソウル、ファンク、R&Bといったルーツミュージックを取り込んだ最新鋭のJ-POPとして成立している。“元気でポジティブ”というリトグリのパブリックイメージと直結した「Love Yourself」、超ドープなトラックと中・低音域を活かしたメロディ、“イヤなことだって力に変えてやる”という意思を込めたリリックがひとつになった「SPIN」など、多彩なサウンドと強いメッセージ性を含んだ歌詞のバランスも素晴らしい。
EXILEのメンバーである世界、佐藤大樹がリーダーを務とめるパフォーマー集団としてスタートし、武者修行と称して全国各地でライブを開催。その後、オーディションを経て2人のボーカリストが加入し、メジャーデビューという定番のストーリーを辿ってきたFANTASTICS from EXILE TRIBEの1stフルアルバム『FANTASTIC 9』。初収録の楽曲は、TAKAHIROの作詞によるメッセージソング「Turn Back Time -FANTASTICS ver.」、“君の夢を叶えられるくらい強くなりたい”という思いを描いた壮大なバラード「FANTASTIC 9」の2曲だ。EDM、R&B、ヒップホップなどを取り入れたサウンド、徹底して前向きな姿勢を反映した歌詞を軸にした楽曲は、EXIE TRIBEのスタイルをしっかりと継承している。グループの本当の個性を示すことが今後の課題だろう。