作詞家 zoppに聞く、平成カラオケソングの傾向「歌うのが難しい曲の方がたくさん歌われている」

作詞家zoppに聞く、平成カラオケソングの傾向

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、ヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、比喩表現、英詞と日本詞、歌詞の物語性、ワードアドバイザーとしての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらってきた。

 第19回目となる今回は、「平成のカラオケソング」をテーマにインタビュー。第一興商が発表した1994年4月~2018年10月までのカラオケランキングを元に(第一興商公式HP)、平成に歌われていた楽曲の傾向や特性、カラオケソングとその時代との関係性などについて話を聞いた。(編集部)

「やっぱり日本語詞が愛される」

ーー今回は平成を通して人気があったカラオケソングの特徴についてお伺いできればと思います。

zopp:ランキングを見ると、悲しい曲が多いですよね。日本人って悲しい歌が好きなんですよ。昨今ヒトカラ(一人カラオケ)が増えたことで、周囲を気にせずに1人で悲しい歌を徹底的に歌えるというのが、大きく影響を与えているのだと思います。カラオケにみんなで行くことが当たり前とされていた時代には、悲しい歌を歌いたいという需要は今より少なかったと思います。

 あとは、歌いやすい曲よりもむしろ歌うのが難しい曲の方がたくさん歌われている印象です。歌いやすい曲って、簡単に歌えてしまうので飽きてしまうんですよね。例えば、小室哲哉さんのプロデュース曲は、楽曲のキーを恐ろしく高くすることで、何回もカラオケに行って練習してもらうことを狙っていたとされています。歌が難しくなることで練習もたくさんするし、それをみんなに披露する。そして歌ってもらえる頻度が高くなる。メロディメイカーの人は、そういったことをすごく考えていますね。

ーー確かに、小室哲哉さんがプロデュースした華原朋美さんの「I'm proud」(1996年)や安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」(1997年)も、年別の1位にランクインしてますね。

zopp:その他にも、GReeeeNさんもキーが高いですよね。絢香さんや坂本冬美さんも歌うのは大変だと思います。

ーー歌うのが難しい曲がよく歌われているというのは歌詞にもいえることなのでしょうか? 例えば、英語が多用されていたりとか。

zopp:いえ、歌詞の場合は逆で、歌いやすい言葉が多いと思います。なのでランクインしている楽曲に英語は少ないです。米津玄師さん「Lemon」(2018年)にも英語は入ってないですし、星野源の「恋」(2017年)、桐谷健太さんの「海の声」(2016年)にも入っていないです。三代目 J Soul Brothersさんの「R.Y.U.S.E.I.」(2015年)もほとんど入ってない。松たか子さんの「Let It Go~ありのままで~」(2014年)も原曲ではなく日本語訳しているものが2014年の1位になっています。キー的な歌いづらさとは違って、英語歌詞は日本人に馴染みにくいんです。やっぱり日本語詞が愛されるんだと思います。近年は特にその傾向があって、2002年以降ほとんどが日本語タイトルなんですよね。

ーーたしかにそうですね。

zopp:逆に1990年代は英語詞や英語のタイトルが多い。おそらくこの時代は、ダンスミュージック全盛期ということもあって、欧米志向が強かったんでしょうね。また、「小さな恋のうた」(2002年)からバンドや男性アーティストがフィーチャーされている傾向があります。

ーー歌手別ランキングだと、浜崎あゆみさん(1位)や倖田來未さん(6位)など女性ソロアーティストがランクインしていますね。

zopp:平成は女性がどんどん独り立ちして世に出ていく時代でした。そういう意味では、浜崎さんや倖田さんがその象徴になったように思います。

ーー浜崎さんと倖田さんの歌詞の特徴はあるのでしょうか?

zopp:共感できることももちろんあると思いますが、リスナーにとってはどちらかというと“憧れ”が強かったのではないでしょうか。“あゆと私って同じ気持ちなんだ”、“倖田來未もこんなこと思うんだ”みたいな。“憧れ”と“共感”の両方を兼ね備えていたからこそカリスマになったのだと思います。

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