『金字塔』インタビュー
Reolが振り返る、『金字塔』に到るまで 自らの文明=音楽を広げた先に見えたもの
Reolが、1月22日に2ndフルアルバム『金字塔』をリリースした。前作『文明EP』で描いた“起こり”の先にある、それぞれの物語を描いた本作には、Giga、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、Masayoshi Iimoriと共に制作された全11曲が収録。サウンド面では楽曲ごとに様々な表情を見せながらも、アルバムを通して一貫した“Reolらしさ”が悠然と構えており、本人も語る通りReolのアーティスト像がしっかりと伝わってくる作品に仕上がっている。
インタビューでは、『文明EP』から『金字塔』までのおよそ1年がかりのプロジェクトについての構想を振り返ってもらったが、ブレないReol像とパーソナルな部分、どちらにも向き合いながら話していたのがとても印象的だった。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】
「文明の後にはみんな塔を建てるんですよね」
――今回リリースされた『金字塔』は、2019年3月リリースの『文明EP』からおよそ1年がかりのプロジェクトでもありますよね。まずは始まりを『文明EP』とした経緯から教えていただけますか?
Reol:2018年10月にフルアルバム『事実上』を発売した後、リリースする作品はミニアルバムなのか、EPなのかを考えた時に、自分の中でミニアルバムはコンセプチュアルに完結するイメージだったんです。EPというのはアルバムに向かっていくもので、EPから2、3曲次のアルバムに収録するという方が多いと思うんですけど、今回『金字塔』に『文明EP』の曲が入っていないのは、これまでEPを作って次にアルバムを作る続き物を作ったことがなかったので、やってみたいなと思ったからです。「EPは3曲入りでも4曲入りでもいいな」ということで、自分の中でその数に因みたいと思ったんですね。次元(3次元、4次元)とか文明(三大文明、四大文明)とか。その当時、一番興味を惹かれていたのが文明だったので、自分なりに一つの文明の起こりから繁栄、衰退していく流れを4曲で表したくて。本当はEPらしく2曲ほど次のアルバムに持っていくつもりで作っていたんですけど、『文明EP』という作品であって、そこからアルバムに持っていくのは違うかもなとも思って。文明の後にはみんな塔を建てるんですよね。
――というのは?
Reol:『文明EP』の時からずっと変わらずに考えてることがあって。偉くなった人って何かを作るんですよ。ピラミッドや古墳なんかもそうだし、ビルなどが例になるかと思うんですが、そういった高さや大きさのある建築物を作りたがる。フルアルバムを出すのに生半可なものは出したくなかったので制作期間をある程度とって、その間に開催したライブツアー『文明ココロミー』と『侵攻アップグレード』は経由地として、全ては『金字塔』に至るまでの布石でした。
――なるほど。今振り返ってみると『文明EP』に収録されている「ウテナ」には、〈交錯する螺旋の塔〉〈浮かぶ理想郷〉といった『金字塔』のイメージにも近い歌詞が散りばめられています。この頃から、続き物としての全体像は見えていたのでしょうか?
Reol:ざっくりとは見えていました。アルバムに続いていくものにしたいというのがありつつ、『文明EP』に入ってる楽曲には古代への憧れが根底にあります。4曲ともシュメールや古代ギリシアあたりの時代感で作っていて。だから、「ウテナ」と『金字塔』の違いは時代性。『金字塔』はもっと発展してから建てられていて、「ウテナ」は私の中では高殿、物見櫓を指しているんです。昔の人が一番最初に建てたのは敵が攻めてこないために確認するための塔。「ウテナ」は理想郷を探している段階で、自分たちが暮らしたい場所ってどこだろうと探っている曲なので、全部『金字塔』に繋がっているんです。
――経由地として開催されたツアー『侵攻アップグレード』の本編ラストでは、Reolさんが旗を掲げる姿が印象的でした。
Reol:自分の文明を大きくするために侵略しに行っているイメージで、あの旗を立てるという演出はツアーの各地域でやっていました。帝国主義の時代からそういうことをするじゃないですか。植民地とか、統治支配をしながら人が国を拡大していく。ツアーを回ることで自分の音楽をより広めながらコアにして、一度来たんだから次も来なさいよみたいな気持ちで。ライブの時は勝ち気になれる自分が常にいて、ステージに立つ時はそういうモードに切り替わる。私の音楽が世界で一番正しい、美しいと思って臨むように自然となります。
――『侵攻アップグレード』で初披露された「天下無敵じゃないといけない」という思いが込められた曲が「HYPE MODE」。この年末年始、App StoreのCMソングとして大量にオンエアされていましたね。
Reol:理想のReol像を書いた楽曲です。実際、CMで流れると「絶対、Reolちゃんじゃん」ってツイートで埋まったんですよね。楽曲に"らしさ"が出たんだと思うしそういう時、この声でよかったなと思います。
――学校法人・専門学校HALのCMソングとして流れていた「サイサキ」の時にも思いましたが、Reolさんの声は短い時間で流れるCMソングでも印象強く響きますよね。
Reol:日常生活で注目されるほど変わった声ではないと思うんですけど、自分の声にスポットが当たるようになったのは、私が歌をネットに投稿してからなんですね。インターネットでは姿も明かしてなかったし、年齢も言ってなくて、声だけ、歌だけがネットの世界に存在している感じで。だから、みんな声の印象を言ってくる。ボイスチェンジャーを使っているんじゃないかとか、本当はピッチを上げている男なんじゃないかとか言われて。高校生の頃からこういう見た目なので、普段話している友達は視覚要素の方が気になるらしく、そっちに気を取られているだけで、実は変わった声なのかもっていう自覚を持ったのは高校生の頃でしたね。