セルジオ・メンデス、SKY-HIやコモンらとのコラボレートを通して得た“音楽の喜び”を語る

セルジオ・メンデス“音楽の喜び”

 ブラジル・リオデジャネイロ出身のポップマエストロ、セルジオ・メンデス。1960年代、ボサノバブームのさなか、アルバム『セルジオ・メンデス&ブラジル’66』と収録曲「マシュ・ケ・ナダ」がワールドワイドなヒットを記録して以降、プロデューサー/作曲家/キーボーディスト/ボーカリストとして世界の音楽シーンに多大な影響を与えてきた。そんなセルジオが5年半ぶりとなる新作『イン・ザ・キー・オブ・ジョイ』を11月にリリースした。オール新曲で構成された本作には、ジョアン・ドナートから日本のSKY-HIまで多数のゲストアーティストが参加しており、セルジオ本人も「これほど作曲に関わったことは初めて」というほどエネルギーを注ぎ込んだ意欲作に仕上がっている。今回プロモーション来日を機にを行ったインタビューでは、終始陽気に、しかしとても誠実にブラジル音楽のアイデンティティやコラボレートについて話してくれた姿がとても印象的だった。(編集部)

私は常にオープンマインドだから、いろんな人と一緒にコラボレートしたい

――ニューアルバム『イン・ザ・キー・オブ・ジョイ』は、とても元気をもらえるハッピーなアルバムですね。今回のコンセプトはなんですか。

セルジオ:どうもありがとう! コンセプトはタイトル通り“ジョイ”だよ。喜びを表現したアルバムなんだ。ブラジルに限らず世界中のリズムやメロディを取り入れているし、世代も国境も超えたミュージシャンたちとコラボレートしている。彼らは音楽の喜びを伝えられる才能を持っているから、常に“ジョイ”を意識して作ることができたよ。

――サウンド面でいうと、リズムがとても多様に感じました。やはりリズムにはこだわったのでしょうか。

セルジオ:もちろん。今作ではとにかくたくさんのパーカッションを使っている。だから、思わず身体を動かしたくなる要素が入っているんだ。“踊りたくなる音楽”というのが、もうひとつのコンセプトかもしれないね。踊ることは、人生においてもっとも大切なことのひとつだと思っているからね。

――ブラジルといえばリオデジャネイロのサンバのイメージですが、本作ではバイーアなどブラジルの他の地方のリズムも取り入れられていますね。

セルジオ:私が生まれ育った場所は、まさにリズムに溢れていたよ。ストリートでもビーチでも、私の人生が始まった時から、常にリオデジャネイロのサンバやバイーア特有のものなど、様々なブラジルのリズムに触れることができたんだ。

――アルバムには、カルリーニョス・ブラウン、エルメート・パスコアール、ジョアン・ドナート、ギンガといったブラジルのベテランアーティストが多数関わっています。これは彼らを世界に紹介したいという意識からでしょうか。

セルジオ:たしかに、再び彼らに注目してもらいという気持ちはある。でもそれ以前に彼らと私は音楽に対する考え方がとても似ているんだ。トラディショナルな音楽を作りたいわけではないし、あくまでも今現在において新しくてフレッシュな音楽を作るためのコラボレートなんだよ。

――そういったレジェンドたちとは別に、すごく若いアーティストもたくさん参加していますね。

セルジオ:「イン・ザ・キー・オブ・ジョイ」にフィーチャーしたロサンゼルス出身のラッパーのバディや、「サンバ・イン・ヘヴン」に参加してくれたシンガーのシュガー・ジョアンズなど、彼らはとても若くて才能がある。偶然彼らと知り合って、そこで自然に生まれる化学反応がとても楽しいんだ。

――いつも不思議に思うのですが、若いアーティストたちとはどうやって知り合うのですか。

セルジオ:きっと、私がとても好奇心が強いからだと思う。新しく、オリジナルでフレッシュなことはないかなって、いつも考えを巡らせているんだ。だから、偶然素敵なアーティストたちと出会えることがあるのかもしれない。

――カリ・イ・エル・ダンディーとの楽曲「ラ・ノーチェ・エンテーラ」も意外でした。ブラジル音楽とスペイン語圏のラテン音楽は似ているようでぜんぜん違うと思うのですが。

セルジオ:彼らはコロンビア出身の兄弟グループで、いわゆるレゲトンのアーティストだね。この曲はカルリーニョス・ブラウンが書いたのだけれど、レゲトンとブラジルのリズムを融合しているんだ。ビリンバウやブラジルのパーカッションを加えて、ブラジリアンなレゲトンに仕上げようと考えた。パーティータイムにぴったりだろう?

――「サボール・ド・リオ」でコモンを起用したことも、とても興味深いですね。

セルジオ:4、5年前にジョン・レジェンドの紹介で知り合ったんだ。彼の声もサウンドもすごく好きで、この曲を書いた時に彼に聴かせたらとても気に入ってくれて、じゃあ一緒にやろうってことになったんだ。

――2006年にThe Black Eyed Peasと一緒に「マシュ・ケ・ナダ」を作った頃から、ヒップホップとのコラボレーションが盛んですが、なぜヒップホップを取り入れるのでしょうか。

セルジオ:もともとブラジル音楽とヒップホップはとても親和性が高いと考えている。無理矢理にではなく、自然に合うからずっと続けているんだ。それと私は常にオープンマインドだから、世代や国籍やジャンルが違っても、いろんな考え方の人と一緒にコラボレートしたいという気持ちがあるのも大きいかもしれない。

――たしかに、ブラジルの音楽シーンは世代が分断されていないという印象があります。上の人は下の世代をすくい上げようとするし、若者たちはレジェンドたちをリスペクトして自身の音楽に取り入れることを積極的に行っていますね。

セルジオ:まさにそのとおりだよ。

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