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ザ・なつやすみバンド『映像』インタビュー

ザ・なつやすみバンド 中川理沙が語る、ブラジル音楽の魅力と自作への影響

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 ザ・なつやすみバンドが結成10周年を迎え、9月に4作目のアルバム『映像』を発表した。もともとスティールパンの音色を効果的に使うなど、どこかラテン的な匂いはあったが、ここに来てブラジル及びその周辺の音楽からの影響が感じられる。とりわけ、ミツメとのコラボレーション楽曲「蜃気楼」における浮遊感は、ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタといったブラジルのミナスジェライス周辺の音楽を彷彿とさせるものがある。今回は、ボーカリストでありソングライターとしてもバンドの中核となる中川理沙に、その楽曲作りやブラジル音楽からの影響について聞いてみた。(栗本斉)

新しい感覚なのに、昔の日本の歌謡曲にも通じる懐かしさがある

――まず、ブラジル音楽に興味を持ったきっかけはなんですか?

中川理沙:スティールパンを担当しているメンバーのMC.sirafuが少し歳上なんですけれど、いろんな音楽をよく知っているんです。それで「これが好きなんじゃないかな」と教えてくれた中に、ムタンチスが入っていたんです。

――いきなりディープなところから入ったんですね。

中川理沙:そうみたいですね(笑)。でも「私はこれが好きだ!」って思って、そこから少しずつブラジル音楽を聴き始めました。それまではちゃんと聴いたことがなかったジャンルだったんです。ムタンチスに出会ったのが、2ndアルバムに収録されているパラードという曲を作った頃なので5、6年前だと思います。

――なぜ、ムタンチスに興味を持ったのですか。

中川理沙:私たちってバンドとしてはそんなに上手ではないと思うんです。だから、面白く聴かせる工夫を考えていたのですが、そんな時に出会ったので、なるほどこれは面白いなって感じました。

――それは、中川さんがそれまでに出会った音楽とは違っていたということですか。

中川理沙:そうですね。でも私の中ではすごくポップな音楽だと感じました。

――そもそも、中川さんはどういう音楽に影響を受けて音楽を作ってこられたのでしょうか。

中川理沙:ずっとクラシックのピアノをやっていましたし、高校3年生まではずっとクラシックピアノをやっていて、それとは別にバンドでベースを弾いていたこともあります。ただ、ピアノを弾きながら歌おうと思ったのはクラムボンの原田郁子さん。あとは、Ben Folds Fiveの影響があります。曲を作ろうと思った頃は、はっぴいえんどをよく聴いていました。

――じゃあ本当にブラジル音楽とは無縁だったんですね。

中川理沙:そうですね。ムタンチスを聴いてから、そういえばサンバやボサノヴァもちゃんと聴いたことがなかったなあと思って、ふんわりとブラジルの音楽を聴き始めたんです。

――ムタンチスの次には何を聴いたんですか。

中川理沙:アントニオ・カルロス・ジョビンですね。『Rio Revisited』というガル・コスタと一緒にやっているライブ盤です。このアルバムを聴いたら、それまで漠然と自分がずっと好きなんじゃないかなと思っていたメロディやコード進行などが全部そこにあったんです。

――普通は、ジョビンを聴いてからムタンチスに行くと思うのですが、中川さんは逆ですね(笑)。

中川理沙:そうなんですね(笑)。

――ブラジル音楽の中でも、ミナスジェライスの音楽を気に入っているという話を聞いたのですが、ミナス音楽とはどうやって出会ったのですか。

中川理沙:タワーレコードのブラジル音楽コーナーに行ったら、アレシャンドリ・アンドレスのアルバムが面出しされていたのでジャケ買いして聴いてみたら、「わー、すごい!」って思って、そこから一気にいろんなアーティストを聴くようになって、その流れでミナスの音楽を知りました。

――それはいい出会いだったかもしれませんね。今挙げたアーティストはみんな突出した人たちばかりですからね。

中川理沙:そうなんですね。確かに、アレシャンドリのアルバムには、アントニオ・ロウレイロやアンドレ・メマーリ、タチアナ・パーハといったすごい人たちが参加していたので、そこから若いブラジル音楽の人脈を追いかけていくことができました。

――でもミナスといえば、ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタなどベテランのイメージも強いですが、そういったアーティストはどうやって知ったのですか。

中川理沙:まとめサイトを見たら、そのへんの人たちが全部載っていたんです(笑)。それでそのサイトを読んでみたら、ミナスには「クルビ・ダ・エスキーナ」というサークルみたいなものがあって、そこからミルトンやトニーニョ、ロー・ボルジェスといったすごいアーティストがたくさん出てきた、というようなことが書いてあったので、そこから過去のミナス音楽も聴き始めました。あとは、アンドレ・メマーリがアルバムでミルトンのカバーをしていたのを聴いたというのも大きいですね。

――実際、ミルトンなどのミナス音楽を聴いてどういう風に感じたのですか。

中川理沙:今まで聴いたことのない新鮮な音楽でした。メロディやコードもそうですけれど、リズムもかなり複雑でおかしいじゃないですか。あまり日本人にはない感覚で。だけど、なぜかとても懐かしい感じがするんです。

――たしかに、新しいけど懐かしいという感覚はありますね。きっと、ブラジル特有のサウダージというものかもしれないですけれど。

中川理沙:そうなんです。胸がキュンとするというか。新しい感覚なのに、昔の日本の歌謡曲にも通じる懐かしさがあると思います。あと、この響きってどこかで聴いたことあるなあと思ったのは、少し前のceroに似ている気がするんです。きっと彼らもミナス音楽の影響を受けているんじゃないかなと思います。

――そうかもしれないですね。中川さんは、そういったブラジル音楽を聴いてきたことで、自身の曲作りに反映されてきたと感じますか。

中川理沙:好きで影響を受けているかもしれないですが、真似しようと思って真似できるものでもないですし、どうなんでしょうね。私はコードとかアカデミックなことはあまりわからないので、聴いていていいなと思った響きを後でピアノを弾いて合わせてみたりとかはありますけれど、意識するというよりはなんとなく入り込んでくるという感覚かもしれないです。

――意識的にこの曲のこのコード進行を取り入れてということはあまりないんですか。

中川理沙:それがうまくできないんですよ(笑)。フレーズの一部とか、メロディがふわっと降りてくる感じとかは取り入れてみたりすることはあります。ただ、同じようにやってみてもそうならないんですよね。それと、ミナスの音楽を聴いて思い浮かぶのが、風とか光とか、自然の土っぽい感じなんです。こういうのは、作ろうと思って作れるものではないし、あまり今の日本のポップスにはない面白い感覚で、聴いていてとても気持ちいいですね。

――じゃあ、自身で作る音楽にも、風を感じてもらいたいという思いはあるんですか。

中川理沙:はい、それが目標のひとつです。

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