imdkmのチャート一刀両断!(年末特別編)
DEAN FUJIOKAの一貫した“ミニマリズム”が出色 2019年チャートで印象的なビート&アレンジを振り返る
しかし、ビートのスタイルや譜割り、フロウが変化し徐々に浸透してきたとしても、たとえばDEAN FUJIOKAのようなミニマリズムを貫けているアーティストやグループというのはそう多くない。とりわけヒットチャートに登場するような楽曲ではそうだ。アレンジの段階で展開が多く、メインの歌メロ以外にもギターやストリングスでメロディを補ってしまう傾向は未だ大きい。いきおい、音像もちょっともったりとしがちだ。この傾向が思った以上に根深いことを痛感したのは、ATEEZの日本デビュー盤『TREASURE EP.EXTRA:Shift The Map』。同じ楽曲でも日本リリースを前提にリアレンジすると、説明的なメロディが顔をのぞかせてしまう。
これを一概に欠点と言い募るつもりもないが、もうちょっと抑えたほうがエレガントなのではないかとひとこと言いたくなる。
その点、米津玄師が坂東祐大(Ensemble FOVE)とタッグを組んで次々に送り出した一連の楽曲(「海の幽霊」、「パプリカ」セルフカバー、「馬と鹿」)は、J-POPと管弦楽の関係性をクリシェ抜きに再構築した趣があり、興味深かった。
最後に、アルバムを扱うこの連載ではついぞ取り上げるタイミングがなかったものの、三浦大知が年末に配信リリースした新曲「COLORLESS」は改めてその攻めっぷりに脱帽する一曲だった。16ビートの平歌から三連をベースにしたサビへと移行するシンプルながら意表を突く構成にはまったく無駄がない。音数も極端に絞られ、ビートが提示するリズムと太いベースライン、そして三浦の歌唱だけで一曲が成立している。
こうした楽曲が飛び出した、というだけでも、2019年の収穫といっていいかもしれない。まだチェックしていない方はDEAN FUJIOKA「Shelly」とあわせて三浦大知「COLORLESS」だけでも聴いてみてほしい。
■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
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