和楽器バンド 町屋に聞く、和楽器とロックの融合を成立させるバランス感覚「今持ってる手札でどう勝つか」

和楽器バンド町屋に聞くバランス感覚

THA BLUE HERBがすごく好き

ーー今作の収録曲の話に戻りますが、「Ignite」はギターがメタルですね。

町屋:この曲では基本的にギターが2本鳴っていて、メインで弾いてる右チャンネルのギターは、ちょっとグランジっぽい荒い音色なんですけど、左チャンネルで薄っすら鳴ってるのはゴリゴリにメタルなんですよ。歪みって、歪ませれば歪ませるほど音色としては沈むものなので、それを支えるために左側をメタリックにしてるんです。

ーーなるほど。

町屋:で、左には箏も鳴ってるんですけど、ギターのチャンネルを逆にしてしまうとグランジっぽいジャキジャキした音と箏がぶつかってしまう。ちなみに、うちのバンドの音の定位は客席から見たときの配置に並んでるので、右ではハイハットも思いっきり鳴ってるんですけど、ギターもハイハットも音がジャキジャキしてるからお互いに音が負けないんです。

ーーギターリフで押す曲ってこれまでなかったですよね。

町屋:そうですね。いつもピアノでコードとメロディから曲をつくって、そこからアレンジで肉付けしていくっていう作り方なんですけど、この曲は頭のリフでいかに"Ignite感"を出すかっていうのが大きなポイントだったので、曲の構想が浮かんだ時点でピアノでメロからつくるのをやめました。ギターリフからつくって、そこから和楽器の入れどころをつくっていったという感じです,

ーー初期の作り方から逆になったわけですね。

町屋:サビはわりと初期に近い、全員の音が全力で鳴ってるような感じですけど、それぞれが昔よりも洗練されてる感じを出したかったので、狙ったとおりにいけたと思います。

ーーということは、歌詞はあとからつけたんですね。珍しくラップパートがありますが。

町屋:リフからできた曲なので、メロディは頭から順番につくっていったんですよ。まず、〈ひとつの流れる渦だ〉までのメロディをつくって、普通に考えたらその後にもう一度同じフレーズを繰り返すんですけど、最初の〈Say what you mean to do.〉がけっこう強いフレーズなので、これを繰り返すとなるとさすがにくどいなと思って、「新しいアプローチか……ああ、じゃあ、本気のラップでもやってみようかな」と(笑)。

ーー町屋さんはヒップホップを通ってるんですか。このラップはミクスチャー寄りのアプローチですよね。

町屋:僕は北海道出身で、THA BLUE HERBとかすごく好きなんですよ。

ーーそれは意外ですね!

町屋:でも、この曲に関しては、バンドの編成自体がミクスチャーだし、楽曲もミクスチャーっぽいので歌詞もそういう系のラップで組んでます。

ーー歌詞に英語のフレーズがしっかり出てくるのも初めてですよね。ここまで新しい要素をふんだんに盛り込んだというのは、それだけ町屋さんのなかでこの曲に対する思いが強かったということですか。

町屋:そうですね。今回の作品は全曲にコンセプトがあって、それを1曲で説明するならっていうことでアイデアを詰め込んだ感じなので。

ーーあれこれ詰め込みすぎると曲が破綻しそうですが、そうならないのが町屋さんの手腕だなと。

町屋:いやいやいや。これね、一度"どプログレ"まで行ってるんですよ(笑)。メンバーが誰も拍が取れなくなるぐらいのところまで行ってから、ここまで戻ってるんです。

ーーそうなんだ!

町屋:自分でも「うわぁ、ここ、ムズぅ!」とか思いながらギターを録って、その3時間後ぐらいに聴き直してみたら「うわ~、ポピュラリティない!」って。そんなことを何回も繰り返しました(笑)。で、最終的に「これ以上やったらどうしても蛇足になる」というところまで突き詰めた結果、曲が短くなりました。余計なことを語ってない。

ーーいろいろ交通整理ができるようになった今でも、やっぱり町屋さんのプログレ魂はうずいてしまうんですね。

町屋:うずきますね。迷ったら、「この曲は4分の4だけど、疑似3拍子を符点で演出するか……」とか考えたり(笑)。

ーー以前にも、「4分の4にプログレを感じる」みたいなことを話してましたよね(笑)。その一方で、1曲目の「Break Out」は従来の和楽器バンドらしい楽曲で。

町屋:そうなんです。「Break Out」はこの作品の1曲目にしている理由があって。もし「Ignite」を1曲目にすると、これまでの和楽器バンドの延長が聴きたかった人に対して、けっこうな賭けだと思ったんですよ。そういう人が圧倒的に多いと思ったので、これまでの和楽器バンド的なものを自然とつくりました。

ーー納得です。

町屋:この曲、実は昔からストックしてた曲なんですけど、イチからアレンジを作り直しました。レコーディングの後半にデモをギリギリまで練って、これまでの和楽器バンドらしさにちょっと洗練された感じを取り入れてます。

ーー確かにそれは感じます。これが良いことなのか悪いことなのかは別として、これまでの和楽器バンドにあったクセというか、アクのようなものが薄くなった印象です。

町屋:デモ段階だとアクが強かったんですよ。それを僕が薄めてしまったんです(笑)。アクが強い曲はやろうと思えばできるので、とりあえず今は前に進もうという感じですね。

歌に一番耳が持っていかれるように作らないといけない

ーー以前、「歌を聞かせて勝負していかないとバンドとして成長していかない」と町屋さんは話していました。

町屋:そんなことを言ってたんですね(笑)。まあ、でも歌ありきだとは思いますよ。バンド編成のなかでいうと、尺八がわりと歌に近いところにいたりするので、尺八に耳が持っていかれそうになるフレーズは全部変えて、歌を中心に組み直します。やっぱり、歌に一番耳が持っていかれるように作らないといけないので。

ーーあとは、「和楽器の音色、軽音隊のパンチだけでは押しきれなくなるときが来ると思うから、楽曲ありきの考え方のほうが健全だ」ということも話していました。

町屋:まあ、今やれることはすべてやり尽くしましたね。

ーー今作を聴いた限り、今後いい意味でもっとタガが外れていきそうな印象ですが。

町屋:でも『オトノエ』と今作で、技法も奏法も手札を全部使い切った感じはあって。あとは今持ってる手札でどう勝つかですね。となると、やっぱり大事なのは楽曲だと思うんですよ。そして、楽曲をうまく引き立てる伴奏ができるかどうかというところが大きいんじゃないかな。

ーーそれが2020年以降の課題になっていくわけですね。

町屋:今後一番大きな課題になると思います。

ーー来年は東京オリンピックのことをみなさんは意識してますよね。

町屋:ああ、デビューのときからそう言ってはいますけど、僕の主観で話すと、目標はあるほうがみんなが同じ方向を向くことができるのでいいと思うんですけど、その目標を実際に手に入れられるかどうかはまた別の話で、何かしらの結果がついてきたらいいよねって感じなんですよね。

ーー満足のいく結果がついてこなかったとしても、そこに向かってみんなが一丸となったことが大事だと。

町屋:それは絶対に次につながっていくと思うので。オリンピックが終わってからも、何かしらの目標に向かってみんなやっていくだろうし、結束を保つための建前として目標が必要なのかな、ぐらいにしか僕は思ってないですね。

ーーメンバーの数が多ければ多いほど、町屋さんみたいな視点で見ている人の存在が大事なのかもしれないですね。

町屋:いやあ、どうかなあ。やっぱり、突っ走る人も必要だし、そういう人の初動のエネルギーとか求心力はすごいですよ。僕はそういうタイプではないし、僕の役割は……やっぱり交通整理ですね(笑)。

(取材・文=阿刀 "DA" 大志/写真=鷲尾太郎)

■リリース情報
CONCEPT EP 『REACT』
11月24日(日)24時配信スタート
iTunes Store限定バンドル

<収録曲 >
M1. Break Out
M2. Ignite
M3. IZANA
M4. 情景エフェクター
M5. Ignite live from JAPAN TOUR 2019 REACT新章 
※iTunes Storeボーナストラック
iTunes Storeリンクはこちら
各サイト配信リンク一覧はこちら

CONCEPT EP『REACT』
2019年12月04日(水)リリース

<収録曲 >
M1. Break Out
M2. Ignite
M3. IZANA
M4. 情景エフェクター
M5. Break Out - Instrumental -
M6. Ignite - Instrumental -
M7. IZANA - Instrumental -
M8. 情景エフェクター – Instrumental -
※M5〜M8は、CD Only盤(通常盤)のみ収録

初回限定映像盤(DVD付)
¥2,500(税抜)

<DVD収録内容>
・Behind The Scenes of REACT 〜Recording Documentary〜
REACTのレコーディング現場に密着したドキュメンタリー映像
・Ignite Music Video
・Ignite Music Video Making

初回限定ライブドキュメンタリーブック盤(ライブドキュメンタリーブック付)
¥2,200(税抜)
DVDトールケースサイズ エクストラパッケージ仕様 
REACT TOURに密着したライブドキュメンタリーブック(64P)

CD Only盤(通常盤)
¥1,400(税抜)
新曲4曲+新曲のInstrumental4曲を収録。
※Instrumental収録は、CD Only盤のみになります。

<全形態共通封入特典>
トレーディングカード全10種類のうち1枚ランダム封⼊
※初回プレス分のみ

<チェーン別オリジナル特典>
・TSUTAYA:A3ポスター
・Amazon:A5ビックポストカードA
・楽天:A5ビックポストカードB
・タワーレコード:ICカードステッカー
・HMV:アナザージャケット
・UNIVERSAL MUSIC STORE:生写真1枚(全8種類のうちランダムで1枚)
(初回限定映像盤/初回限定ブック盤/CD Only盤の3形態セットで生写真8枚セット) 
・その他店舗・ECサイト:ポストカード
※特典は先着となり数に限りあり。
※一部取扱いのない店舗・オンランインショップもあり。詳しくは各CDショップにて。

和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT-新章-
TOUR会場限定予約特典:B2告知ポスター+チェーン別オリジナル特典 
※TOUR会場での予約はダブル特典となる。
※特典は商品と一緒にお渡し。
※チェーン別オリジナル特典の内容は会場で確認のこと。

■ライブ情報
『和楽器バンド Premium Symphonic Night Vol.2 ライブ&オーケストラ~ in 大阪城ホール 2020』
2020年2月16日(日) 
大阪・大阪城ホール OPEN 16:00 / START 17:00
<チケット料金>
一般指定A席 ¥8,800(税込) 一般指定B席 ¥8,000(税込) 着席指定席 ¥8,800(税込) BOX着席指定席 ¥10,000(税込)
※3歳以上有料/2歳以下入場不可(ただし2歳以下の場合でも膝上鑑賞可能な場合は無料で入場可)    
※当日チケット料金:一般指定A席/着席指定席 ¥9,800(税込) 一般指定B席 ¥9,000(税込)  BOX着席指定席 ¥11,000(税込)

<着席指定席について>
小さなお子様、ご年配のお客様、ファミリー、その他ライブを着席してご覧になりたいという皆様の為に、ご用意させていただく「着席観覧」用の席です。
※ライブ中は必ず着席のこと。
※ステージからの近さを保証する座席ではない。  
※予定枚数に達し次第終了。

<BOX着席指定席>
※スタンド中央前方のスペシャルシート。
枚数制限:一人 1公演につき4枚まで  
(問)グリーンズコーポレーション 06-6882-1224

『和楽器バンド 大新年会 2020』
2020年2月29日(土)東京・両国国技館 開場16:00/開演17:00
2020年3月1日(日) 東京・両国国技館  開場15:00/開演16:00
<チケット料金>
一般指定席 ¥8,800(税込)着席指定席 ¥8,800(税込)
※3歳以上有料/2歳以下入場不可(ただし2歳以下の場合でも膝上鑑賞可能な場合は無料で入場可)
※当日チケット料金:¥9,800(税込)

<着席指定席について>
小さなお子様、ご年配のお客様、ファミリー、その他ライブを着席してご覧になりたいという皆様の為に、ご用意させていただく「着席観覧」用のお席です。
※ライブ中は必ず着席のこと。
※ステージからの近さを保証する座席ではない。  
※予定枚数に達し次第終了。
枚数制限:一人1公演につき4枚まで  
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888

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