和楽器バンドが見せた、様々な困難を乗り越えて未来へ向かう姿 最新ツアーファイナル公演レポ

和楽器バンド、困難を乗り越え未来へ

 2019年11月23日、『和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT-新章-』が横須賀芸術劇場で行なわれた。この日はあいにくの雨模様だったが、寒さと憂鬱さを吹き飛ばしてくれるような、パワフルで熱いライブを見せてくれた。

 5階まである客席は満員。紫色のペンライトの光に埋め尽くされていた。暗転し、ステージ正面にそびえたつ大きな襖が左右に開くと、8人のメンバーが一列に並んで登場。会場は思い思いのメンバーの名前を呼ぶ声でいっぱいになった。

 この日の幕開けは、彼らの記念すべきメジャー1stシングル曲「雨のち感情論」だ。キャッチーでポップなこの曲は、ツアーファイナルの幕開けにぴったりだ。鈴華ゆう子は番傘を片手に凛とした力強い歌声を披露し、一気に和楽器バンドの世界へと観客たちを引き込んでいく。神永大輔の尺八、いぶくろ聖志の箏の音色が楽曲を華やかに彩る中、会場には色鮮やかなレーザービームがいくつも散りばめられ、まるでゲームの世界に入り込んだかのようだ。

 続く「天樂」では、尺八と箏の風流なイントロから始まったかと思えば、徐々にバンドサウンドが入り混じり、激しさを増してゆく。尺八とギターのソロパートでは、神永大輔と町屋がお立ち台の上で背中を合わせるシーンも。異ジャンル楽器のコラボレーションともいえるこの光景は、和楽器バンドならではの光景だ。蜷川べにのリズミカルな津軽三味線から「吉原ラメント」のイントロが始まると、ジャンプをしたり手拍子をしたりと会場の一体感も高まる。スクリーンには美しい花が咲き乱れ、和と幻想的な雰囲気がミックスされた世界観が彼らの楽曲を引き立てた。〈横須賀今日は雨〉と鈴華ゆう子が歌詞を変えて歌ったかと思えば、ステージの段上では黒流といぶくろ聖志がバチを投げ合うパフォーマンスを見せ、観客たちを楽しませた。

 激しく熱いサウンドが魅力の「蜉蝣」では、町屋のギターソロと山葵のドラムが光る。和の音色はもちろん和楽器バンドの魅力だが、ロックバンドとしてもまさに一流であることを感じさせられた一曲であった。ここからは『Strong Fate』『細雪』とバラード曲が続く。先ほどまでの激しい曲では尺八の音色も華やかに聴こえたが、バラード曲では切ない音色に感じるのは、神永大輔の表現力の高さゆえだろう。「鏡花水月」では、和太鼓と津軽三味線の祭囃子のような演奏が始まると、鈴華ゆう子は扇子を片手に詩舞を披露。そこに繊細さと力強さを併せ持つ箏の音色が加わり、さらにベース、ドラム、ギターが加わると、和の雰囲気が一気にロックな雰囲気に変化していく。この瞬間こそが、和楽器バンドのライブでしか味わえない大きな魅力の一つだ。余韻に浸る間もなく、『月に叫ぶ夜』へ。スクリーンに映し出された満月の下で歌う鈴華ゆう子は、まるで二次元から抜け出してきたような美しさだった。

 MCでは、来年2020年2月16日に大阪城ホールで開催されるオーケストラとのコラボレーションライブ、『和楽器バンド Premium Symphonic Night Vol.2 ライブ&オーケストラ~ in 大阪城ホール 2020』を発表。彼らの演奏にオーケストラが加わることによって起こる化学反応に期待が膨らむ。さらに、移籍などバンドを取り巻く状況の変化もあったことを踏まえ、開催が難しいかと心配されていた『和楽器バンド 大新年会 2020』も、両国国技館にて2020年2月29日、3月1日の2DAYS行なうことも告げた。「“ワンダーランドといえばドリカム”みたいに、“大新年会といえば和楽器バンド”にしたい!」と言う鈴華ゆう子。年明けから勢いのあるスタートが切れそうだ。

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