米津玄師、2019年も音楽シーンで止まらぬ快進撃 楽曲の持つパワーが最大の原動力に

米津玄師、2019年も音楽シーンで止まらぬ快進撃 楽曲の持つパワーが最大の原動力に

 いまや名実ともに日本のポップミュージックを代表する存在となった米津玄師。

 2019年も、その快進撃は止まることはなかった。数々の前人未到の記録を打ち立ててきた。その数字は、単なる人気や話題性というよりも、むしろ彼の楽曲が持つ普遍性が、ポップソングとして時代を射抜き、沢山の人たちを惹きつけてきたことの象徴だ。

米津玄師 MV「Lemon」

 まず触れるべきは、国民的ヒット曲となった「Lemon」だろう。2018年3月にリリースされたこの曲は、数々の主要年間チャートで1位に輝いた昨年に続き、ついに日米Billboard総合チャート史上初の2年連続首位を記録するという偉業を成し遂げた。9月には累計300万ダウンロードを突破し、ミュージックビデオのYouTube再生回数は日本最多となる4億9000万回を突破。オリコン週間カラオケランキングでも1年半以上にわたって連続1位を獲得。2年目の今年になってもなお、「2019年を代表する一曲」と言うべき結果を示している。

 なぜこの曲はここまで長く愛され続けているのだろうか。

 もちろんその第一の理由は、楽曲の持つ力にある。印象的なボイスサンプルを活かしたサウンドが耳を引く一方、メロディが宿す哀感には、時を経て繰り返し聴いても錆びつくことのない強さがある。詩情に満ちた歌詞の情景描写力も大きい。「Lemon」にて歌われているのは喪失の悲しみと消えない愛情だ。モチーフにしているのは死である。米津玄師自身、曲が完成するに至ったきっかけとして祖父の死に直面したことが大きかったと語っている。けっして明るい内容ではない。しかし家族や愛する人の死は、誰もが直面せざるを得ない、とても根源的なテーマでもある。だからこそ、「Lemon」は沢山の人たちにとって心に深く寄り添う大事な一曲になったのではないだろうか。

 米津玄師自身の活動も、年間を通して活発に続いてきた。

 1月から3月にかけては、全国17万人を動員した自身初の全国アリーナツアー『米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃』が開催された。追加公演では、上海、台北の2都市で初となる海外公演も実現し、日本国内にとどまらない人気を証明した。

米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea

 6月には「海の幽霊」が配信リリースされた。アニメーション映画『海獣の子供』の主題歌として書き下ろされた一曲だ。五十嵐大介による原作漫画に10代の頃から惚れ込んでいた米津自身にとっても念願の機会となったこの曲では、かなり刺激的な挑戦がなされている。オーケストラを導入した壮大でダイナミックなサウンドと「デジタルクワイア」と呼ばれるコーラスワークの手法を軸にした曲調は、これまでの音楽表現をさらに更新する彼の意欲的な姿勢を感じさせるものだ。

米津玄師 MV「馬と鹿」Uma to Shika

 そして9月にリリースされた「馬と鹿」は、やはり2019年を代表する楽曲の一つとなった。CDとダウンロードの合計で120万セールスを突破、オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキングで10度にわたって1位を獲得と、セールス面においても大きな記録を残したが、何より大きいのは、この曲が巻き起こした現象だろう。

 社会人ラグビーチームの奮闘を描いたドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として書き下ろされた「馬と鹿」は、ドラマ終了後も人々の心に深く残り、日本中に興奮をもたらしたラグビーW杯の盛り上がりを象徴する一曲になった。

 その理由も、楽曲自身の持つパワーにある。この曲が描いているのは、ストイックな鍛錬のすえに訪れる歓喜や熱狂の瞬間だ。試合に臨むアスリートを鼓舞しその奮闘を称えるような言葉が、ドラマティックな旋律に乗せて歌われる。だからこそ、この曲は、SNSで米津玄師に感謝の言葉を伝えたラグビー日本代表の福岡堅樹選手をはじめ、現役アスリートたちの心に届いた。代表戦の試合終了後のスタジアムでは、歴史的な偉業を達成した選手たちの奮闘を称えるかのように鳴り響いた。米津玄師のキャリアにおいても、日本の音楽シーンにおいても、「馬と鹿」は、新しいアンセムの誕生を象徴する一曲となった。

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