THE FOREVER YOUNGは今の時代にこそ必要な“救世主” 『ビューティフルユース』を聴いて 

THE FOREVER YOUNG『ビューティフルユース』を聴いて 

 福岡県久留米市出身の3ピースバンド、THE FOREVER YOUNGがニューアルバム『ビューティフルユース』を9月11日にリリースした。このバンド名に、このアルバムタイトル……どんだけ“若さ”を押し出しているんだ!? と思うかもしれない。でも、実際に、若さゆえの恋も夢も汗も涙も醜さも怒りも、そして、それらをひっくるめた美しさも、今作では表現されている。

 クニタケヒロキ(Vo/Ba)の響く声、琴線に触れるメロディ、まっすぐすぎる歌詞、生々しいバンドサウンド。その全てが、愚直なまでに青い。その青さは、若い世代だけが重ね合わせられるものではなく、おじさんにもおばさんにも、おじいさんにもおばあさんにも、身に覚えがあるものだと思う。そのなかには、今も“青さ”が躍動し続けている人もいるだろうけれど、 残念ながら“青さ”が埃をかぶってしまっている人もいるかもしれない。『ビューティフルユース』は、その埃を吹き飛ばし、再び“青さ”を輝かせる一枚だと思う。すでに彼らのライブには、ライブハウスが似合うアクティブなキッズだけではなく、スーツ姿で拳をあげる男性や、後方でニコニコ聴いている女性もいるのだが、今作はさらに幅広い人たちに向けて扉を開け放っている。

 音楽のみならず、整えられた、小綺麗な、無難なものが多いこの世の中で、THE FOREVER YOUNGは明らかに異質だ。たとえるなら、世界のどこへ行っても同じものが食べられるチェーン店のカフェとは違い、THE FOREVER YOUNGはあの街にしかない、店構えは決してオシャレではない定食屋。だから食べるまではドキドキする。でも、一度味わうと夢中になってしまう。そういった異質さが、逆に彼らをこの時代で際立った存在にしていくと、私は思っている。そのひとつの証として、彼らのライブには、いわゆる“早耳”に見える女の子たちも多い。決してぱっと見オシャレでも小綺麗でもない(何度も失礼)彼らの楽曲を、女の子たちが同じようにがむしゃらに汗臭く歌いあげているのだ。それは、やっぱり彼らのようなバンドが他にいないし、彼らのようなバンドが求められているからだと思う。

 生きていると窮屈なことがたくさんある。その一方で、笑いが止まらないような幸せもある。若さとは、その全てを思い切り吐き出せることでもあると私は思っている。でも、今の時代、若い世代もそうだし、その上の世代はさらに、なかなか吐き出せる場所がなくなっているのではないだろうか。ちゃんとしなきゃいけない。大人にならなきゃいけない。そんな空気が蔓延しているなかで、THE FOREVER YOUNGは、大袈裟な言い方になるが“救世主”になり得るはずだ。

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