ベーシストIKUOが語る、“歌うこと”に対する目覚め「ボーカリストとしても一生懸命やれば伝わる」

IKUO、ボーカリストとしての目覚め

自分の中にあった普遍的ないい曲を形に

ーーええ。先ほども話題に出たLapis Lazuliの「Jumping Out」を取り上げたのは

IKUO:2年前に、Lapis Lazuliは再結成ライブをやりましたけど、あの時代に自分が書いていたたくさんの曲の中で、イージーコアふうにアレンジしていける曲がないかなぁと。「Jumping Out」は僕が一番好きなLapis Lazuliの曲なんですね。そこでキーを1音下げて、F#のリフができるようにして。もともとマイナーなグランジーなリフがついてたんですけど、イージーコアのリフってメジャーキーなんですよね。メジャーのコードでザクザクと重いことをやるから、爽快で面白い。でも、原曲のままのサイズ感でいじってるんですよね。それを後で当時のメンバーに聴かせて笑ってもらおうっていう(笑)。

 僕、昔やってたバンドを否定してないんですね。たとえばLapis Lazuliもすごく好きだったし、やりたいことをやれてるバンドでしたからね。今回収録された他の曲も、ストックしておいたものは多いんですよ。その時代においてカッコよかった、ダサかったとかじゃなく、自分の中にあった普遍的ないい曲を形にしたかったというか。さっき作家としてという話をしましたけど、そういう意味合いも今回はあるんですよ。

ーーなるほど。新たに書き下ろしたものも当然ありながら、表に出していなかったアイデアもこのタイミングで形にしたと。

IKUO:そう。だから、「Confession」と「僕らの約束」は、全然ポップソングだったんですよ。それらをアレンジするに当たって、ESPから8弦ギターを借りたりして。もともとはコンペとかに出すために作ったんですけど、それも誰々のコンペっていう感覚じゃなくて、ただ単に自分が好きなミドルテンポのポップな歌っていう感じで作ったものだったんですね。

ーーすごくルーツにAORなどが感じられるような曲ですよね。

IKUO:まさにそうなんです。ルーツはAORテイストな曲ですね。それをゴリゴリのアレンジに変えて。あれは自分の趣味で言うと、どストライクなんですよね。実はあれぐらいのテンポの曲が好きなんですよね。でも、Lapis Lazuliじゃないですけど、BULL ZEICHEN 88でもRayflowerでも、ああいうタイプの曲は使えないんですよ。

ーー日の目を見てよかったですね(笑)。でも、今後はそういった曲も、このユニットがあればどんどん出せていけそうですよね。

IKUO:出していきたいですね。MVを撮影した「Fly」は書き下ろしですね。あれはもう狙って作った曲です。あっという間にできました。スラップの曲を作ろうと思ったんですけど、やっぱり、Primusとか、ああいった不思議のコード感のものをイメージして、そこに何かDragon Ashふうな感じが入って、ミクスチャー的になったんですけどね。そうそう、真ん中の間奏を、みなさんベースソロって勘違いされるんですけど、あれはギターとベースのスラップのバトルなんですよ(笑)。MVを観るとよくわかります。でも、8弦ギターがまだ浸透してないから、音そのものがわからないですもんね。

ーーええ。ただヘヴィな音というイメージしか湧かないかもしれません。

IKUO:そういうところも自己満足ですけど、一応説明しておかないとなって(笑)。あとはインストゥルメンタルの「Arch of the rainbow」、「Pride in motion」とかは書き下ろしですね。「Road to tomorrow」はRayflowerのボツ曲です(笑)。もともとはギターもあんなにヘヴィじゃなかったんですけど、田澤(孝介)くんって、何でも歌えちゃうぐらい巧いんですよ。だから彼の歌を想定して作ってるわけですね。シンセメロが入ってるテーマのところも都(啓一)さんをイメージしてましたし。だから、曲自体、一旦、Rayflower用に完成されてたんです。それをヘヴィにアレンジして、自分自身で歌ったんですけど、これがRayflowerだったらどうなってたか、ちょっと面白いですけどね(笑)。

ーーリフの変則的な感じはIKUOさんらしいですよね。

IKUO:リフはかなり作り込みましたね。

ーー冒頭に「EBM」というフュージョン系のインストゥルメンタルがありますが……。

IKUO:これは単純に“エレクトリック・ベース・ミュージック”です(笑)。ただのテクニックのひけらかしの曲(笑)。やっぱりベーシストのソロアルバムだから、派手なものも入れておかないとってところから作ったんですよ。でも、ウワモノをEDMっぽくして、ちょっと雰囲気がお洒落な感じになって。最終的にそろそろ曲順も決めないといけないですねって話になったときに、じゃあ、これを1曲目にしようかなって。

ーー1曲目を想定して書いたわけじゃなかったんですね。

IKUO:そう。何となく歌ものが続いて、ちょっと気分転換にというような感じで考えてたんですよ。でも、僕の最新テクニックは織り込んでるんですよね。僕がずっとやっているロータリー奏法をさらに進化させて、クソ速くしたみたいな感じなので、とりあえず、ベーシストが喜んでくれたりする曲をと思って作ったんですけど、曲を並べていくうちに、これが1曲目だったら、オープニングのSEみたいだし、ど頭にもうやり切っちゃうというか(笑)、みんなを惹き付けて驚いてもらう。そこで2曲目から本編のイージーコアスタイルがスタートするみたいな。結果的にはよかったですね。

ーーさて、アルバム発売後の東名阪ツアー『IKUO 2nd Live Tour 〜Easy come, easy core!!〜』も決まっていますが、これは制作時のトリオ編成で行われるんですよね。

IKUO:うん。見え方としてはバンドとしてやりたいし、そう見てもらいたいですね。とはいえ、LedaくんにしてもKenTにしても、ちゃんとサポートメンバーとしての立場をわきまえて、役割を果たしてくれる人たちなんですよ。でも、それは気合を入れることでもなく、“Easy come, easy core!!”なので(笑)、気楽にやりたいですね。だってパフォーマンスできないですもん、歌いながら(笑)。

ーーいやいや、この敏腕ベースを弾きながら歌うんだなと考えたとき、IKUOさんは恐ろしいなと人だなと思いましたよ(笑)。

IKUO:僕も怖いですよ(笑)。でも、お客さんにも楽しく観てもらいたいですね。

(取材・文=土屋京輔/撮影=三橋優美子)

■リリース情報
『Easy come, easy core!!』
リリース日:2019年7月24日(水)
¥3,000+tax
PSYCHODAZE BASS
レーベル:KING RECORDS
詳細はこちら

IKUOオフィシャルサイト

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