乃木坂46 桜井玲香、9月卒業へ 7年間グループを支え続けた“優しく寄り添うキャプテン”の姿
幼小中高一貫の女子校に通う“お嬢様”だった桜井玲香は、アイドルには興味がなかったが、「ソニー・ミュージックエンタテインメントのアーティストが好き」という理由でオーディションを受け、2011年8月21日、乃木坂46に合格する。
歌とダンスの実力には定評があり、2ndシングル曲「おいでシャンプー」でフロントメンバーに選ばれるなど、初期から乃木坂46の中心メンバーとして活躍。2012年6月17日放送の『乃木坂って、どこ?』(テレビ東京系/現:『乃木坂工事中』)での3rdシングル選抜発表において、正式にキャプテンに就任する。
当時、アイドルグループのリーダーといえばAKB48の高橋みなみのイメージが強かった。高橋の「熱い言葉でメンバーを引っ張っていく」ことが一般的なリーダー像だとすると、桜井のキャプテンとしてのあり方は異質だったのかもしれない。
桜井はキャプテンとして「みんなの前に出るんじゃなくて、一歩下がって支えたい」(乃木坂46写真集『乃木坂派』)と公言してきた。
グループをまとめることよりも、ともに同じ歩幅で歩くことを選んだ桜井。誰かが傷つけばそっと優しく寄り添う彼女の姿勢は、少しずつ乃木坂46に浸透していく。それは、メンバーを常に見ているから可能なことだった。
生駒里奈は「玲香以上に冷静に乃木坂46を見て分析できているメンバーっていないと思う」(『月刊エンタメ』2014年6月号)と評している。その生駒がAKB48との兼任を決めた時にメールを送り、「兼任しても大丈夫なんだ」と勇気づけたのも桜井だった。
2016年頃には“パリピキャラ”が生まれ、桜井はやたら高いテンションでメンバーを笑わせた。これもグループを想っての行動だった。
「私は『グループをまとめる』というより、『グループの空気感を作る』ことに自然と頭がいって、そのほうが重要な仕事なんじゃないかと思うようになったんです。言ってくれる子は他にいますから。ライブのMCでも最初と最後に話す機会が多いので、私がローで入るとグループ全体がローになってしまうけど、私がハイテンションでいけばみんなのテンションも上がると思うんです。そんなことに気がついてから、私が明るく楽しくしてグループ全体の空気感を良くすることを心がけるようになったんです」(『OVERTURE No.010』)
その一方で、「個人としての桜井玲香」と「キャプテンとしての桜井玲香」の狭間で思い悩むこともあったという。
「自分自身の意見とキャプテンとしての意見が違う時もあって。その時、自分がどちらを取るか。問題が大きければ大きいほど、分からなくなる」「『キャプテン』はスタッフ側とメンバー側の両方を取り入れた意見を持ってるから、ある意味、冷静に見なきゃいけない。だから、自分のことを『心がないな』と思ってしまう瞬間もあるんです」(『OVERTURE No.010』)
こうした葛藤を乗り越えて桜井のキャプテンシーが発揮されたのが、2017年11月8日に行われた東京ドーム公演2日目のWアンコールだ。
最初は確実に盛り上がる「ロマンティックいか焼き」がWアンコールの有力な候補だったが、「このライブで卒業する伊藤万理華と中元日芽香にスポットを当てたい」「この曲で締めたほうが乃木坂46というグループを印象づけることができるんじゃないか」という想いから、桜井が自らスタッフに提案して急遽「きっかけ」を歌うことに決まった。
こうして乃木坂46史上屈指の名シーンが生まれたのだ。