全米1位を獲得した最新作『マダムX』から紐解く、マドンナの“闘い続ける姿勢”
マドンナの“闘い続ける姿勢”を明確に打ち出している歌詞
歌詞はもう完全にマドンナが“今、言っておくべきこと”を歌っている。生き方や考え方を歌に込めるのは彼女が一貫してやってきたことだが、今作はこれまでで最も強く鮮烈なほどストレートに人種問題や銃社会に対しての自身の言葉を放っている。「Killers Who Are Partying」で、〈イスラム教徒が嫌悪されるなら、私はイスラム教徒になる。イスラエル人が去勢されるなら、私はイスラエル人になる〉と歌う。「God Control」では、〈無実の人の血がいたるところに広がる。私たちには愛が必要だと言っている〉と歌い、〈目覚めよ〉と繰り返す(先頃公開されたこの曲のMVは一人の襲撃者に多くの人が惨殺される様が描かれている)。「I Rise」は米フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件を題材にしたもので、銃規制運動を先導した同校の生徒エマ・ゴンザレスのスピーチから曲が始まる。社会と女性の地位の向上をハッキリと意識し、マドンナは闘い続ける姿勢を明確に打ち出している。自分が今も音楽を続けるのはそのためなのだと、そういう想いが伝わってくる。
20代のアリアナ・グランデや10代のビリー・アイリッシュともある意味競い合わなくてはならないのが“ポップミュージックの世界”と考えると、それは中々大変なことであるのは間違いないが、マドンナにはミュージシャンとして、女性としての“経験”がある。また、彼女はその使命感とプライドをはっきり持っていることが、この作品からわかる。だから衝動的に作るのではなく、マドンナはこの作品をとても丁寧に練り上げて完成させた。制作に要した期間は18カ月以上だったそうだ。よって、アルバムとしてのトータリティが圧倒的。曲順も練られ、壮大な物語を味わった感覚になる。
なお、本作は全米アルバムチャートで堂々1位を獲得。マドンナにとって通算9枚目の全米1位で、それはバーブラ・ストライサンドの11枚に次いで女性アーティスト史上2位となる獲得数なのだそうだ。「Music」や「Hung Up」(2005年)のようなキャッチーな曲はないかもしれないが、それでこの記録を出してしまう。取っつきにくいなどと思わないで、どうか集中して何度か聴き返してほしい。そうすればマドンナのここ数作の中でも本作が抜きんでた傑作であることがわかるはず。経験を活かし、とにかく1曲1曲丁寧に作り上げたことの勝利であろう。
(文=内本順一)
■リリース情報
『MADAME X』
<通常盤>
価格:¥2,500(税抜)
<2CDデラックス盤>
価格:¥3,500(税抜)(初回生産限定/輸入国内仕様/日本盤のみSHM-CD/ハードカバー・ブック型パッケージ)
<アルバム収録曲>
※日本盤ボーナス・トラック
**日本&一部海外デラックス盤ボーナス・トラック
<CD通常盤>
1. Medellín (Madonna + Maluma)<シングル>
2. Dark Ballet
3. God Control
4. Future (Madonna + Quavo)
5. Batuka
6. Killers Who Are Partying
7. Crave(Madonna + Swae Lee)
8. Crazy
9. Come Alive
10. Extreme Occident
11. Faz Gostoso ft. Anitta
12. Bitch I’m Loca ft. Maluma
13. I Don’t Search I Find
**14. Looking for Mercy
15. I Rise
※16. Medellín (Madonna + Maluma)(Offer Nissim Madame X in the Sphinx)