EXILE ATSUSHI、清 竜人、ドレスコーズ……濃密な個性と芸術性をあわせ持った男性アーティスト

ドレスコーズ『ジャズ』(通常盤)

 これから人類は穏やかに衰退していき、新たな種として繁栄するのかもしれない。そんなイマジネーションから制作が始まったというドレスコーズの新作『ジャズ』は、神話的な世界観とリアルな現実感、エキゾチックな雰囲気と近未来的なイメージを交差させながらーーそう、この作品は完全なフィクションではなく、現代と地続きなのだーーまるでオペラのような一大叙事詩へと結実させた作品となった。全編を貫く壮大にして生々しいストーリー性、フリージャズ、ジプシー音楽などを取り入れた美しくも野蛮なサウンドメイク、そして、すべての物事を鳥瞰し、優れた語り部として存在しているボーカル。現実を起点にしながら、想像力の力でどこまで飛べるか? がアーティストの資質を図る指標だとしたら、志磨遼平は完全に日本のトップランナーだと思う。映画『アンダーグラウンド』で知られるエミール・クストリッツァ監督が映像化したら、とんでもない傑作が生まれそうだ。

ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 1

踊ってばかりの国『光の中に』

 2017年に丸山康太(元ドレスコーズ/Gt)、大久保仁(Gt)が加入し、5人編成となった踊ってばかりの国。オリジナルメンバーは下津光史(Vo/Gt)ひとりだが、自主レーベル<FIVELATER>からの最初の作品となる6thアルバム『光の中に』からは、このバンドが(ようやく)理想の場所を見つけつつあることが感じられる。トリプルギターを軸にした極上のサイケデリアサウンド、ゆったりと揺れたくなるしなやかさと骨太のグルーヴを兼ね備えたリズムセクション、穏やかな透明感に溢れたメロディ、そして、殺伐としたこの世界のなかで“自分(たち)だけの桃源郷”を指し示すような歌詞。それをもっとも明確に提示しているのが、タイトル曲「光の中に」だ。オーディエンスを包み込み、気分を上げ、日々に向かう力を与えてくれるボーカルも最高。こんなにも踊れて、こんなにも平穏な気分にさせてくれるバンドの音楽は本当に久しぶりだ。

踊ってばかりの国『光の中に』 Music Video(2019)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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