『コーチェラ』に感じた時代の変化 ビリー・アイリッシュ、BLACKPINKら1週目ステージ振り返る
今年も『コーチェラ・フェスティバル』(以下、コーチェラ)が、アメリカ・カリフォルニアで開催され、例年通りその模様がYouTubeで世界中にストリームされた。2週に渡って催されるフェスティバルの1週目を通して得た発見、今後のシーンへのインパクトについて展望したい。
アルバム『DAMN.』を披露した2017年のケンドリック・ラマー、パフォーマンスがつい先日Netflixで映画化されたばかりの2018年のビヨンセなど、その年のシーンの動きに大きな影響を与える意味でもより重要なイベントとなったコーチェラフェスティバル。とりわけフェミニズムやブラックカルチャーの多様なルーツなどを引用した大掛かりな後者は”ビーチェラ”と呼ばれ、各メディアで「歴史的」と大絶賛を浴びた。「ビーチェラを超えられるか?」そんなプレッシャーを背負いながらも気合いの入ったポップアーティストたちのステージにまず圧倒された。
一日目のヘッドライナーを務めたチャイルディッシュ・ガンビーノは、ドナルド・グローヴァー名義での俳優、コメディアン、脚本家も含めたマルチエンターテイナーぶりを武器にすることで、ビーチェラに劣らない興奮を届けた。“ここはコンサートじゃない。俺のチャーチだ”と宣言し、「This is America」のMVで見せていた狂気的な目つきで会場の雰囲気を制圧すると、多数の楽曲を披露したアルバム『Awaken, My Love!』のファンクネスも相まってスピリチュアルな空間を演出した。
驚きはストリームされた映像のクオリティだ。観衆にスマートフォンを下げさせる代わりに、まるで映画のようなカメラワークでガンビーノの背中を追うカメラは、興奮と感動を増大させた。また、フェス中には自身が製作・主演を務める映画『Guava Island』を公開。キューバで撮影され、トロピカルテイストの強い昨年のシングル「This is America」、「Summer Park」を大々的に使うことで、映画だけでなく、次のアルバムへのヒントまで匂わせていた。総じてガンビーノにしか出来ないやり方で週末を制したといえる。
そして、今年のコーチェラの影の主役だったのはビリー・アイリッシュだろう。パフォーマンス中鳴り止まなかった悲鳴のような熱狂に、数週間前に発表したばかりのデビューアルバムの楽曲でさえ起こってしまう大合唱。その異様な雰囲気は、強く影響を受けたというダークポップの先輩、ラナ・デル・レイのライブを連想させた。しかし、ラナと違って、ビリーはそこにロックやヒップホップ的な迫力、ハードさを一緒くたに加えた上で、ハイとロウを行き来する。そのローラーコースター的なスリルは、歌詞と共にティーンの心象を体現しているかのようだったし、このファンダムの熱も含めて完結するからこそビリーは正真正銘のポップスターなのだと思えた。また、宙吊りになって傾いたベッドの上で「bury a friend」を歌った演出には驚いたが、きっとそれも今後スケールが大きくなっていく過程の序章に過ぎないはず。今年アリアナ・グランデが25歳にしてヘッドライナーを飾ったことで「最年少」となったが、数年後に必ずビリー(現在17歳)がその記録を大きく更新するはずだ。