米津玄師の求心力はどこから生まれるか? 最新ツアーに見た“変化し続けるカリスマ”の姿

米津玄師の求心力はどこから生まれるか?

写真=立脇卓

 「TEENAGE RIOT」を歌い終えたあとのMCで、米津は自身の活動を振り返って「この船から誰一人落としたくない」という趣旨のことを語った。それはリスナーとの関係についての言葉であると同時に、自身が生み出した音楽との関係についての言葉でもあるのではないか。彼はデビュー以来、一枚として同じアルバムを作っていない。まさに変化の人である。ただし、その変化のあり方は過去との連鎖を断ち切って進むタイプとも違う。過去と現在を行き来しつつそれぞれの方法論を磨き上げ、いわば螺旋の塔を築くようにしてキャリアを重ねてきたのが米津玄師の音楽である。だからこそ米津の音楽には個と全体、具象と抽象といった一見相反する要素が複雑に絡み合っており、この日のステージがそうであったように、どの部分を切り取っても刺激的なのである。

写真=太田好治

 本編ラストの「Lemon」が感動を生んだのは、この曲が現時点における米津の音楽の集約点であるからではないか。シンガーソングライターとしての叙情性と、斬新なリズムアプローチ、そしてバンド演奏の切れ味。それらが一体となって、まさに歌詞にある「光」の発生源のようにして観客を強く惹きつけていた。本ツアーの追加公演で米津は中国と台湾でライブを行うが、この「変化し続けるカリスマ」の音楽は彼の地のリスナーも魅了するに違いない。

(取材・文=神谷弘一/トップ写真=立脇卓)

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