RIP SLYMEの魅力を改めて考えるーー変幻自在な音楽性と突き抜けた明るさ
ここ最近RIP SLYMEばかり聴いていた。10月31日に公式HPを閉鎖し、SUのInstagramにて活動休止が明言されたからだ。やっぱり彼らをしばらく観られなくなってしまうのは寂しい。作品を聴き直すと、ファンが期待するRIP SLYME像に応えながらも、型にはまることなく楽曲を生み出し続けてきたことがわかる。常にフレッシュで変幻自在なグループなのだ。
シングル『STEPPER'S DELIGHT』でデビューしたRIP SLYME。お揃いのつなぎを着て戯れながら軽快にラップを繰り広げていく表題曲のMVは、若さならではの自信に満ち溢れた”無敵感”があった。低音でユーモラスなSU、高音でメロディアスなPES、ルーズでハスキーなILMARI、タイトでリズミカルなRYO-Zからなるハイグレードなラップ。そして、DJ FUMIYAによるドラムンベース、ジャズ、ラテンなど多彩なダンスミュージックを融合させたトラック。自由で遊び心があって、4MCならではの賑やかさがあって、でもスタイリッシュで。KGDRのようなハードコアともスチャダラパーのようなユルい雰囲気とも違う。どれにも当てはまらない彼らの存在は新鮮だった。
1stアルバム『FIVE』に収録された「マタ逢ウ日マデ」には、<頭文字すら知らないお相手/別れて Peace あれ>や<どうせ置き去りにされてつらいんだね>というフレーズがある。そんな同曲は、“自分たちは上にのぼっていく”という彼らなりのメッセージに聴こえる。そんな痛快さもかっこいいのだ。
その後「楽園ベイべー」、「ONE」、「FUNKASTIC」が大ヒット。これらの曲を収録した2ndアルバム『TOKYO CLASSIC』は、日本のヒップホップ初のミリオンセールスを記録する。“ヒップホップ”というジャンルを日本に浸透させたのだ。とは言っても、本作は決して大衆に媚びていない実験的なアルバムだ。シンガーソングライター・森広隆(「奇跡の森」を共作)、Dragon Ashの降谷建志(「花火」にベースで参加)、西海岸のファンクバンド・Breakestra(「〜Introduction〜CHICKEN」「FUNKASTIC (Breakestra Version)」に参加)といった様々なアーティストとタッグを組み、なおかつメンバー全員が楽曲制作を行っている。ヒップホップの概念にとらわれず自由奔放に実験を試みた同作は、今聴いても色褪せていない。