SUPER EP『LINKS』インタビュー
MINAMI NiNEが明かす、メジャーデビューで目指す先 「もっと大きく輪を広げていきたい」
ヒロキ(Vo/Ba)、ワラビノ(Gt/Cho)、スケロク(Dr/Cho)の3人で、2011年末に結成された、3ピースバンドのMINAMI NiNEが、7年という長く地道な活動を実らせ、10月10日にEP『LINKS』で待望のメジャーデビューを果たした。人気の秘密は、いわゆるメロディックパンクの中でも目を引く、日本語で届けるシンプルで真っ直ぐなメッセージと胸を打つ切なさ。今作はどんな想いで制作したのか、そしてこの7年の想いとは。彼らの言葉からは、愚直なまでのまっすぐさと地元・宮崎を盛り上げたいという熱い想いが溢れ出た。(榑林史章)
平坦な道ではなかった7年間
ーー10月10日にEP『LINKS』でメジャーデビュー。結成7年でのメジャーデビューは早かったとは言いがたいですが、この7年の道のりはどういう期間だったと思いますか?
ヒロキ:ずっとメジャーデビューはしたかったけど、何をやっていいかわからなかったと言うのが、正直なところです。誰かにCDを売り込んだことや、音源を送ってオーディションを受けたこともなくて。どうしていいかわからないから、ただライブをやり続けた7年でした。ライブさえやっていれば、いろんな人に聴いてもらえて、僕たちの曲を歌ってくれる人が増えていくんじゃないかと信じていました。
スケロク:決して遠回りをしたつもりではなかったけど、真っ直ぐ平坦な道ではなかったですね。曲を作ってライブで鳴らして、それをひたすら7年間繰り返してきて。ライブを繰り返している間にいろんな出会いがあり、そこから少しずつ話が回ってきて、ようやくメジャーデビューできた感じです。EPのタイトル『LINKS』じゃないけど、たくさんのみなさんとの繋がりを感じる7年だったと思っています。
ワラビノ:波はあったけど、とにかくガムシャラにメンバーチェンジすることなく7年やってきて、それでメジャーデビューが迎えられたことは、本当にうれしいです。
ーー不器用だけど正直にやるべきことをやり続けてきたからこそ、それが認めてもらえたということでしょうね。
ヒロキ:賢くやるとか器用にやるとか、最短距離で行くことはしなかったですね。それをやってしまったら、MINAMI NiNEじゃなくなるよなって、どこかで思っていました。周りのバンドが、どんどんスムーズに進んでいくのを見ても、「俺たちはそうじゃない」って。もちろん焦りはあったし、チャンスを早く掴みたいとは思っていたけど、愚直って言うのかな? わざわざ泥水をすすりにいくじゃないけど、そういう道をあえて選んできたところがあります。
ーーみなさんが影響を受けたバンドとか、教えてください。
ヒロキ:僕はもともとBLANKEY JET CITYから入って、GOING STEADYとかMONGOL 800、STANCE PUNKSなどを聴いていました。
スケロク:僕は入りがJ-POP系で、JUDY AND MARY、THE YELLOW MONKEY、GLAYとかが最初です。だからメロディックばかり聴いていたとは、一概には言えなくて。中学に上がった頃にHi-STANDARDが流行って、『FUJI ROCK FESTIVAL』の映像を観てからメロディックパンクのバンドを聴くようになっていきました。
ワラビノ:高校生の時に青春パンクが流行っていて、バンドを始めたりライブハウスに興味を持つようになったきっかけは、Hi-STANDARDやGOING STEADYでした。でもギターを始めたのは、ユニコーンとかがきっかけだったから、そういう部分はスケロクさんと似ているのかもしれないです。
ヒロキ:唯一3人に共通しているのは、洋楽をほとんど聴いていないということだけ。だから、自分たちが英語でやるという発想はまったくなかったんです。僕らの音楽は、サウンドの面ではメロコアやパンク、歌詞は日本語パンクや青春パンクからの影響を受けたと言えると思います。
ーーMINAMI NiNEを結成したときに、どういう音楽をやろうとか話し合ったんですか?
スケロク:僕がメロディック系の速いテンポをあまり叩いたことがなかったので、「そういうのは叩けないよ」と話したんですね。そうしたらヒロキから、「おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さんにも聴かせられるような、エイトビートもたくさんやっていきたいから、そんな速いやつを叩けなくてもいいよ」と言われて。それならやろうかって。音楽性について話したのは、その時が初めてでした。
ヒロキ:日本語でやるわけだから、いろんな世代に聴いてもらって、自分たちがおじいちゃんになった時も、まだ歌っていられる音楽をやりたいなって。それは組んだ時から思っていました。
ワラビノ:僕も、速弾きはできないし(笑)。今回の『LINKS』のように、日本語で歌うことで聴いた人がそれぞれの中で誰かを想像してくれる音楽ができたらいいなと思うし、僕はギターで、そういう歌が存在できる環境を作るようなことをイメージして演奏しています。歌や言葉を引き立てる、そのためのギターと言うか。
ーーサウンド先行ではないということですね。
ワラビノ:そうですね。だから極端なことを言えば、歌や言葉が引き立つなら、エレキギターじゃなくてもいいと思っています。アコースティックとか、時にはウクレレでもいいし。これはやらないとか、頭から決めつけていないようにしています。
ヒロキ:どうすれば、この歌詞とメロディがいちばん伝わりやすくなるか、ライブでみんなが一緒に歌ってくれるものになるかに重点を置いてアレンジをしています。こだわりがまったくないわけではないけど、自分たちはこうなんだと固めたくないんです。だからけっこう自由で、何でもありです。
スケロク:最近はスタッフさんから出てくるアイデアにも、素直に耳を傾けられるようになりました(笑)。どちらかと言うと、もっといろいろなことにチャレンジしたいほうの気持ちが大きいです。
『LINKS』は「縁」と「絆」がテーマ
ーーEP『LINKS』には、新曲もあればライブでお馴染みの曲も。速い曲、スカの曲など多彩な楽曲を収録していますね。作るにあたって、何かテーマにしたことはありましたか?
ヒロキ:『LINKS』というタイトルにも表れているように、「縁」とか「絆」をテーマにしていて、それに向かって作っていきました。
スケロク:もちろんここから先のことも大事だけど、ひとまずはここまでの道のりに関わってくれた人たちに向けて、「ありがとう」って感謝の気持ちを言いたいじゃないですか。だからたとえば1曲目の「Over and over」とか、ラストの「Links」は、そういう気持ちがよく表れている曲です。
ワラビノ:僕らの中では感謝を伝えたい相手がそれぞれいて、曲ごとにその相手をイメージしているんですけど、きっと聴いてくれる人それぞれの中でも、誰か大切な相手を想像して聴いてくれていると思うんです。だから僕らもライブで、「この人はどういう人を想像して聴いてくれているのかな?」とか、考えながら演奏するのがすごく楽しいです。
ーー「Niar」は、クリーンなギターが鳴っていたり、ベースと歌で始まる。疾走感がありながら切なさもあって、こういう胸に響く感じはMINAMI NiNEらしさがありますね。
ヒロキ:最初は、遊びでできた曲なんです。2014年の自主制作盤『NAKED』のボーナストラックに入れる用に作ったもので、「ボーナストラックがめちゃめちゃ良かった」という反響があって。それじゃあということで、改めてアレンジを練り直して再録しました。シンプルなツーコードのサウンドをどれだけふくよかなものにできるかを考えて、ギターを重ねたり音を詰め込んだりしました。アルペジオやループのリフを重ねたことで、すごくシンプルなのに奥行きがある音になったと思います。
ワラビノ:最初は静かめですけど、切なさがサビで爆発するような感じなので、演奏する時もそういうイメージを持って、サビでどれだけみんなの心を苦しくさせられるかを考えて演奏しました。
ーー歌詞に〈高架下〉や〈居酒屋の赤提灯〉が出てくるのが、リアルですよね。
ヒロキ:歌詞と共に聴いて、情景がバッと浮かぶものにしたくて。せっかく日本語で歌うんだから、曲を聴き終わったあとに映画やドラマとか、小説を読み終わった時のような物語を想像してもらえるものにしたいと思って書きました。「帰り道」も、誰でも観たことがあるような風景を歌詞に落とし込んでいます。
ーー作詞作曲は全曲ヒロキさんが手がけられていますが、2人から「こういうリズムの曲がやりたい」とか、「こういうリフが浮かんだ」とか、曲の断片的なアイデアを提案することは?
ワラビノ:たまにスタジオで煮詰まっている時に、何気なくギターを弾いていて、ヒロキが「もう一回それ弾いて!」って言って歌を合わせて、それでセッションが始まって曲ができていく時もあります。「帰り道」が、まさしくそういう作り方だったんですけど、夜中のスタジオで煮詰まっていて「もう帰りたいな」と思いながらギターを弾いたら、「それだ!」となって。
スケロク:「帰り道」はアコースティックギターで始まって、サビの最後までドラムが入ってこないんですけど、どうせならドラムが一切入らなくてもいいんじゃないかと思うほどです。そのくらい、歌とギターだけで成立する、いいメロディができたなって。ただこういうやり方でできたのは、本当にたまになんですよ。9割5分くらいは、ヒロキが口笛でメロディを吹いたり、ベースで弾き語りしたり、というところから曲が生まれるんです。
ーー曲作りの時は、ライブで演奏した時の再現性も意識しますか?
ヒロキ:今まではそうでした。インディーズの頃は、3人だけで演奏できる曲作りを意識していました。でも今回の『LINKS』では、一旦そこは抜きにして、ギターやコーラスを重ねたりして、作品としての完成度を高めようという意識でしたね。それで「恋」という曲では、コーラスを40本も重ねています。
ーーパンク系のバンドだと、ライブでお客さんを踊らせることに重きをおいているバンドも多いですけど、みなさんはそういう感じではないですね。それよりも歌を聴かせることに重心を置いているというか。
スケロク:とは言え、僕らももともとはそういう界隈にいたので、ライブでモッシュやダイブさせなきゃという気持ちがあったんですけど、お客さんと接していく中で、そこはあまり求められていないんだなってことに気づきました。ライブ後の感想を集めると「胸にしみる」とか「切なくなる」という意見のほうが多いんです。たとえば「帰り道」は、曲の解釈や楽しみ方は自由なので、暴れなくてもいいし、音楽を全身で浴びてくれるとか、ただ突っ立っているだけでも、楽しいと思ってくれればそれもアリだなって。曲を聴いてどういう反応をするかはお客さん次第だけど、パンクバンドだから暴れさせなきゃみたいな固定観念は持っていません。
ヒロキ:何なら座って聴いてくれてもいいし。
ワラビノ:ライブが終わって帰る時に、「良かった」と言ってくれれば、それでいいかなって。