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1stフルアルバム『ヲトシアナ』インタビュー

嘘とカメレオンが語る、“ジャンルレス”な志向とルーツ「いろんな音楽を強烈な個性にしたい」

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 9月12日に1stフルアルバム『ヲトシアナ』でメジャーデビューした嘘とカメレオン。2016年末にYouTubeにアップした初制作のミュージックビデオ「されど奇術師は賽を振る」がネット上で話題となったことで、このバンドを知った人も多いだろう。紅一点ボーカル・チャム(.△)と、いわゆる“動けるデブ”渡辺壮亮(Gt)、対照的に華奢なギタリスト・菅野悠太(Gt)、そしてアグレッシブなリズム隊、青山拓心(Dr)と渋江アサヒ(Ba)という、一見イビツだけれどポップな佇まい、サウンドもクセがふんだんで、とても一筋縄でいかない。パッチワーク的に様々な要素が組み合わさった構成となっていて、しかしその多彩さをキャッチーに響かせる術を持っている。どこから切っても含みがあって、こちらの思惑を鮮やかに裏切るような仕掛けやひねりを持っているバンドである。思いもよらぬところに通じている、ポップな迷宮アルバム。それが『ヲトシアナ』だ。これは、さぞ厄介な思考の持ち主たちなのでは、ということで嘘とカメレオンというバンドの背景、そしてそれを育んできただろうライブ、また彼らが見る現在のライブシーンについて話を聞いた。(吉羽さおり)

5人がかっこいいと思って面白がっていけるもの(チャム(.△))

ーーまずはメジャーデビューおめでとうございます。1stアルバム『ヲトシアナ』がリリースされて、これまで一緒に活動してきたバンド仲間やファンの方からの反響はどうですか。

チャム(.△)(以下、チャム):わかりやすく喜んでいただけているというか。メジャーデビューって、わたしたち自身のことだから、デビューをしたわたしたちが一番嬉しいことなんだけど、本当に自分のことのように喜んでくれて。

渡辺壮亮(以下、渡辺):親しいバンドマンも、素直に喜んでくれる友達が多くて。純粋に送り出してくれているというか。それはひしひしと感じますね。

ーー嘘とカメレオンのようなバンドが、メジャーという場所で活動するのが痛快であるという意味合いもあるんですかね。

渡辺:そういうニュアンスは、近しい友達ほど汲んでくれていますね。

チャム:わたしたちのスタンスとかを知っていてね。

渡辺:こういうバンドがメジャーにいくことの面白さを感じとって、“行ってこい!”っていう感じで言ってくれる方が多いです。

ーー自分たちでは、メジャーという場所で暴れまわってやろうという気持ちはあるんですか。

渡辺:メジャーだ、インディーだという垣根が、あまり自分ではないんですよね。メジャーデビューが決まったのも、所属がどこになるかっていう時に人柄で選んだのが、偶然メジャーだっただけなんです。バンドのスタンスを変えずに規模を大きくしていきたいなという気持ちがあって。そこに賛同してくれるのが、キングレコードだったという感じでした。

チャム:たしかに、インディーとかメジャーという垣根はないですね。今作『ヲトシアナ』もそうですけど、5人がかっこいいと思って、メンバー同士でお腹を抱えて笑えるもの、面白がっていけるものを作っていくのが嘘カメの大前提としてあるんです。信じてやってきたことが認められたってことに対しては、嬉しかったですけど。メジャーデビューだから嬉しいっていう感覚はないんです。

ーー5人が面白いと思うこと、ということですが、確かにこのバンドの曲はすごく面白いんですよね。言ってみれば、掴みどころがない歌詞でもあって、掴みにいこうとすると、するっと交わされちゃうというか。でもとことんキャッチーであるっていう。

渡辺:ありがとうございます。言葉とか単語の使い方は、引っ掛かりがあるように、キャッチーに作るようにしているんですけど。断定するようなことをあまり言わない歌詞を書くというか。余白を残していたり、結末は聴いた人が自分で考えるような歌詞になっていますね。人によって、状況によってで、受け取り方が変わってくる。そういう意味でもカメレオン的な歌詞ではあるのかなと思います。

チャム:ちなみに歌詞は全部わたしが書いています。

ーーなぜチャムさんの歌詞は、そういうものになっていったんですか。

チャム(.△)

チャム:それは、わたし自身の生き方が反映されているからだと思いますね。メッセージ性を強く出した歌詞を書きたくないというのは、男女とか、国境とか、いろんな“境目”とされるものがあると思うんですけど、そもそも一人ひとり違うと思うんです。わたしも他の人の歌詞を聴いていて、何かを押し付けられると、“いや、わたしの感じ方は違うし”って思っちゃうタイプだし。リスナーの方々に、自由に生きて、自由に聴いてほしくて。だから、想像の余白を残した、風景的な歌詞を書きたいと思うようになったんです。例えば、土手で夕日の景色を見た時の感じって、一人ひとり違うじゃないですか。疲れたサラリーマンだったら、くたびれた景色に見えるかもしれないし、大人になった人が子どもの頃の帰り道を思い出して切なくなるかもしれないし、失恋後の人だったら涙が出る景色に見えるかもしれない。でも、それが正解だと思うから。そういう風景的なものを描けたらいいなと思っているんです。

渡辺:意外とそういう歌詞の方が、聴いている人の人生を浮き彫りにするような感じがあって。僕はそれを活かした曲作りをしたいなと思っていますね。

ーーということは、歌詞が先なんですか?

チャム:いえ、曲が先ですね。

渡辺:活かしたいというか、引き出したいという感じですね。嘘カメは、僕が曲を作って、アレンジまでひとりでやり切ってしまうんですけど。各パートが何をするかも全部決めて、アンサンブルでなるべく色が見えるところまで作り込むんです。そのデモを、何も言わずに渡してみるんです。

チャム:その曲から受けたインスピーションで、わたしが自由に書いちゃうっていう。

渡辺:そっちの方が引き出しがいっぱい出てきそうなんですよね。

チャム:その化学反応が面白い。

ーーでは、渡辺さんが曲を書くときのポイントはどういうものですか。

渡辺壮亮

渡辺:基本的には歌詞を書くための、空気感や匂いとか、感覚に訴えかけるものが出てくればいいなと思っていますね。そういうのが出てくるのは、意外と懐かしさが大きいかなって思っていて。アルバムには激しい曲じゃない曲も入っているんですが、そういう曲は、なんとなく原風景を思い出すような曲調にできたらとは思っています。激しい曲に関しては、基本的に嘘カメのライブが、全員が目立ちにいくステージなので。そういう意味でも、ボーカルも含めた全部の楽器が均等に目立つような、どこを聴いても面白く聞こえる作り方をしています。

ーーアグレッシブな曲だととくに、ギターのフレーズやリフのインパクトが高いじゃないですか。そこらへんは、肝にもしているのかなとも思いましたが。

渡辺:聴いてきた音楽、バックボーンの影響もあると思うんですけど、各楽器が同じことをすることもあれば、それぞれがまったく違うリズムを奏でているところもあるんです。それが最終的にひとつのアンサンブルになった時に、初めて生まれる特殊な聞こえ方っていうのに、自分はこだわりがありますね。ただコードをかき鳴らしてそこにウワモノのギターが乗るのではなくて、それぞれが別のリズムパターンを刻んでいて、それが新しいリズムパターンに聞こえるというものが好きなんですよね。

ーー自分のそういうところを生み出した原点って、どういうルーツが大きく影響していると思いますか。

渡辺:いちばんは、the band apart(以下バンアパ)ですね。バンアパの曲って、アンサンブル、楽器の構成が本当に常人離れしているというか。本当にすべての楽器が違うことをしていても、それが新しいアンサンブルに聞こえているんですよね。そういうのができたらいいなと思っています。なのでバンアパはいちばん尊敬しているんですけど、バンアパっぽい曲にはあまりなっていないと思います。

ーーなってないですね、今意外なバンドが出てきたなと思いました。

渡辺:なってないんですけど、そういうロジックを取り入れていますね。

ーーそのひねくれた面白さは、このバンドの確実な武器になっていますね。そういったアンサンブルの妙や、人と違ったことは、狙いすましてるところでもあるんですかね。

渡辺:そうですね。とにかく新しいというか、新しい聞こえ方というか。ジャンルをひとつ確立したいなっていうのがあったんです。僕らは、“ジャンルレス”っていうつもりでやっているんですけどーー。

チャム:“ジャンルレスというジャンル”ですね。

渡辺:裏を返せば、いろんなジャンルに手を出すような感じですけど、器用貧乏っていうことじゃなくて。土台として嘘カメのサウンドがあって。結局いろんなことをやっても、それが嘘カメとして成立するみたいなイメージでやっていますね。

ーーちなみにメンバーのみなさんは、それぞれ音楽のルーツは違うんですか。

チャム:バラバラですね。わたしはちょっと特殊なんですけどーー。

渡辺:ちょっとじゃないけどね(笑)。

チャム:物心つくまで、マイケル・ジャクソンしか聴いてないんです。

ーーそれで、今こういう音楽をやっているのはだいぶ面白いですけど(笑)。

渡辺:でも音楽好きな人の中には音楽そのものよりも、人をリスペクトしているという部分も大きいと思うんですよね。

チャム:そうなんです。だから結局ルーツっていうと音楽じゃないんですよね。

渡辺:さっき言っていた男女とか国境とか関係ないよっていうのは、意外とそういうところからきていたりする。

チャム:生き方が好きで、リスペクトしているっていうのに近くて。だから、それが音楽に影響されていますかと聞かれるんですけど、それとはまったく別物としてマイケルが好きなだけであって。

渡辺:ライブで、“ポゥ!”とか言わないしね。

チャム:出てないね(笑)。同世代の子が当たり前に通ってきた音楽ーーこの世代でいうと、BUMP OF CHICKENとかELLEGARDENとか。

渡辺:ASIAN KUNG-FU GENERATIONとか、絶対に通ってくると思うんですけど。チャムはそういうの全然わかってないんですよ。

ーーたしかに特殊です(笑)。

チャム:最近は、いろんなイベントに出演させてもらうようになってきて、そういうバンドにお会いした時も、メンバーはガクガク震えながら音源持って挨拶しているんですけど、わたしは無鉄砲に「すいません! これ聴いてください!!」って言っちゃうんです。

渡辺:いやいやいやいや、ちょ、待てよと。段取りがあるだろうが! っていうね。

チャム:そういう感じで、音楽ルーツが音楽にないんですよね。本や小説とかからきている感じなんです。昔から小説を読むことがすごく好きで、そこで自分の世界観を完全に構築してきたんです。だから歌詞を書く時も、まずデモを聴くじゃないですか。そこからずっと、ずっと想像していくんです。それで例えば、あの好きな本の210ページのこの一行の感じを、この曲のイメージに落とし込みたい、っていうような。たった一行から、膨らませた歌詞ができていて。そうやって作っているから、音楽のルーツらしいルーツはないんですよね。

ーーなるほど、だから曲タイトルが小説っぽい、シュールな短編小説のタイトルを思わせる感じなんですね。

チャム:本のタイトルをつけるような感じで、曲のタイトルをつけていますね。具体的な説明をするのでなく、その世界観を内包した一言、みたいなものを選んでいます。日本語の繊細な表現や言葉遊びが好きなのも、そこからですね。初めての全国流通盤で『「予想は嘘よ」』というミニアルバムを出したんですけど。このタイトルは回文で作っているんです。その時のツアータイトル『嘘つきが蔓延 閻魔がキツそう』も回文で。気づいてくれる人が、気づいてくれたらいいなっていう暗号とかを、結構、歌詞やツアータイトルにも入れたりしているんです。

渡辺:暗号を隠すのが好きなんですよ。メンバーに言ってないものも、いっぱいありますからね。

チャム:細かく聴けば聴くほど、出てくるかなと思います(笑)。

ーーそれを気づいてくれた人が、ニヤリとしてくれたらという。サウンド、音的なところで、そういう遊びや趣向を凝らすことはあるんですか。

菅野悠太

渡辺:僕は音符的なところにこだわるんですけど、逆に音には頓着がなくて。その分、うちのもうひとりのギターの菅野が、サウンドメイクにこだわりを持っていて。僕は太ってるから、ギター弾いても全部音が太ってるんですよ。

ーーそうなんですか!?

渡辺:これ結構マジで。弱い曲を弱く弾けないんですよ。どんなに弱く弾いても、ガツンっていう音が鳴っちゃって。そこでダイナミクスのレンジを担ってくれるのが、タッチが真逆の菅野なんです。空間系を使った色付けについては彼がレコーディングでイニシアチブをとってくれて。協力しながらやってます。見た目が真反対なように、弾き方も真反対なので。そこで、2本のギターの意味合いが生まれているところはありますね。

      

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