tofubeats、mabanua、STUTS……現在のポップカルチャー担う三者の傑作アルバムを聞く

tofubeats『RUN』

 最後に、つい先日10月3日にリリースされたtofubeatsのメジャー4枚目となるニューアルバム、『RUN』。フィーチャリングを減らしてメッセージ性を強めた前作『FANTASY CLUB』で新たな評価を得て以来、期待を背負った新作だ。今作ではついにフィーチャリング一切なし。トラップ、ハウス、ガラージ、J-POP……と持ち前の多彩なボキャブラリーを繰り出しつつ、これまで以上に自身の歌声がフィーチャーされた一作となった。

 ヒップホップをルーツとしつつも、テクノやハウスといったダンスサウンドをポップに消化したプロダクションが持ち味のtofubeats。本作でもそのバランス感覚は健在で、中盤で続く3つのインスト曲は、「RUN」や「ふめつのこころ」といったコンパクトなポップソングとは対照的な長尺のハウストラックながら、アルバムのカラーに馴染んでいる。ポリリズムを取り入れた「SOMETIMES」のように、テクニカルな挑戦も行っているのも注目だ。

 また、「DEAD WAX」や「ふめつのこころ SLOWDOWN」での、トレードマークだったオートチューンを外した歌声に驚く人も多いだろう。オートチューンという仮面を脱いでなお魅力的な声質もさることながら、『FANTASY CLUB』での切実な問題提起を経て、本作で「走り続ける」ことへの決意へとモードチェンジしたtofubeatsなりの覚悟を感じる。

tofubeats「RIVER」

 いずれの作品も、客演やプロデュースワーク、劇伴といった仕事に引っ張りだこのプロデューサーが、その持ち味を最大限に披露する力作だ。と同時に、明確なビジョンを感じさせるきめ細かなサウンドのケアでリスナーの身体に訴えかけるmabanua、着実にソングライティングのスキルを上げて自身のカラーを革新するSTUTS、ダンスミュージックへの愛着を示しつつもシンガーとして声を上げることに本腰を入れたtofubeatsというように、それぞれの作品のなかには、自身のキャリアや音楽に対する各々のスタンスがはっきりと聴き取ることができる。表現者としての芯とプロダクションの高いスキルを両立させたこれらの作品で、彼らへのリスナーやプレイヤーからの信頼はさらに積み上がることだろう。ぜひ、各々のアルバムが示す世界やサウンドに浸りながら、今後の動向に注目してもらいたい。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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