BTS(防弾少年団)、ダンスのポイントは“シンクロ率と運動量”にあり 「Not Today」振付分析
韓国出身のグループとして、今や全世界で認知される存在となったBTS(防弾少年団)。そんな彼らが本日4月28日にNHK総合『SONGS』に初出演する。
番組では、「DNA -Japanese ver.-」「Not Today -Japanese ver.-」「MIC Drop」のオリジナルバージョンの計3曲を歌唱。どれも、BTSの日本3枚目のアルバム『FACE YOURSELF』に収録されている楽曲だ。「Not Today」では、MVに登場した30人のバックダンサーも参加し、全員でのシンクロダンスを披露する。
ヒップホップ/ラップを中心とした先鋭的な音楽性が話題になるBTSだが、もちろんパフォーマンス力も抜群。昨年11月に『アメリカン・ミュージック・アワード』に招待された際には、世界中から集まったセレブを熱狂させたことも記憶に新しい。BTSのダンスのポイントを、振付に詳しい音楽ライター・古知屋ジュン氏に聞いた。
「韓国のポピュラーなダンスとしてカル群舞(=シンクロダンス)があります。体を曲げる動きや指先の動きまで、刃物(韓国語で“カル”)のようにあわせるのが特徴的で、たとえばiKONなども取り入れているダンスです。BTSの振付師であるソン・ソンドゥクさんは、カル群舞のスペシャリストと言われています。また、『Not Today』には、クランプというジャンルのダンスの要素も見られます。クランプはアメリカのロサンゼルスの中でも、治安の悪いサウスセントラルで生まれたダンスで、“厳しい環境を生き抜くための手段として生み出された踊り”と言われているんです。 足を踏ん張ったり口を抑えたりという特徴的な動きが、『Not Today』にもあります。ただ、クランプが腕を振り下ろす動きが多いのに対し、『Not Today』では逆に腕を振り上げるような動きが多かったりと、完全に踏襲しているというよりは、クランプをベースにアレンジしている印象です」
韓国でポピュラーな“カル群舞”、そしてロサンゼルス発祥の“クランプ”。それらの動きをミックスして、「Not Today」ではBTSのオリジナルなダンスが生まれているようだ。また、歌詞とリンクする動きが多いと、同氏は続ける。
「“ダンスと歌詞とのリンク”は大事で、日本でも星野源さんの“恋ダンス”は、歌詞を可視化させるような振付を、みんなが真似して踊りました。BTSの『Not Today』でいうと、たとえば<No, not today/花は咲き散るが>という歌詞の部分では、メンバーを中心に花のようなフォーメーションを作ります。振付師のソンドゥクさんは、インタビューなどで『ダンスを見ながらでも、曲を聞きながらでも、同じストーリーを聞けるステージを作りたい』と話しており、ダンスにも意味を持たせるように意識して振付を考えているようです」
また、「Not Today」以外にもBTSの楽曲に共通するダンスの特徴として、“シンクロ率”と“運動量の多さ”というキーワードがあげられるという。
「BTSは横一列になったり正三角形になったり、各メンバーというよりは、チームをフィーチャーする動きが多い印象です。他にも、『NO MORE DREAM』や『N.O』『DNA』などでは組体操のような動きがあったりと、“全員でひとつのイメージを表現する”というダンスが特徴的だと思います。どの曲にも、一度見たら忘れられないフックとなる振付が必ずありますね。ダンスには、体のしなやかさを見せる柔らかい動きもありますが、BTSはどちらかというと、硬質な動きが多く、躍動的でダイナミックと言えるのではないでしょうか。また、シンクロ率の高さには、他のグループよりも抜きん出たものを感じます。BTSのシンクロ率が高く運動量の多いダンスは、韓国の他のボーイズグループと比べても、大きな魅力だと思います」
『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)をはじめとするテレビ番組に出演するたび、大きな話題を呼んできたBTS。今回、『SONGS』での30人のダンサーとの共演で、あらためてその高いパフォーマンス能力が日本のお茶の間を驚かせることになるだろう。
(取材・文=若田悠希)