NormCore 2ndシングル『傷だらけの僕ら』インタビュー
NormCore Fümiが語る、“歌ってみた”と“クラシック”で培われた音楽家としての精神
シンフォニックロックユニットのNormCore(ノームコア)が、2ndシングル『傷だらけの僕ら』を4月18日にリリースする。
テレビアニメ『EVIL OR LIVE』のタイアップソングを務めたデビューシングル「それでも僕は生きている」に引き続き、今作の表題曲は『一人之下 羅天大醮篇』(以上、TOKYO MX)のオープニングテーマを担当している。
ボーカルのFümi曰く、前作とは異なるアプローチで制作を行ったという新曲は、シンフォニックロックバンドとしての壮大さは残しつつ、より一層洗練された楽曲に仕上がっている。
リアルサウンドでは、前作に引き続きFümiにソロインタビュー。前作からの変化を聞くと共に、彼の音楽観やボーカリストとしてのルーツ、洋楽との接点についてたっぷり語ってもらった。(編集部)
「普段聴いている海外のオルタナロックに寄せた」
――ニューシングル「傷だらけの僕ら」はテレビアニメ『一人之下 羅天大醮篇』のオープニングテーマということで、前作のデビューシングル「それでも僕は生きている」に続いてアニメタイアップ曲になります。
Fümi:前作で携わった作品(『EVIL OR LIVE』)はコアでディープな世界観だったんですけど、今回は王道的なバトルものなので楽曲的にも違う面を出すことができて嬉しかったです。
――『一人之下 羅天大醮篇』は中国のWEBコミック『一人之下 the outcast』が原作で、TVアニメシリーズとしては本作が第2期にあたります。作品に触れてみた印象はいかがでしたか?
Fümi:昨今のジャパニメーション作品は、主人公がなよなよしてるダメダメ系とか、ある日突然異世界に飛んで最強モードになるチート系みたいなものが多いじゃないですか。それはそれで好きなんですけど、『一人之下』は日本の少年マンガっぽいところが逆に新鮮だったし、感情移入しやすくて身構えず楽しむことができました。
――仙術のような力を使って競い合う異能力バトルが作品の軸になってますし、2期ではトーナメント戦が始まって面白いですよね。その作品を受けて、今回はどんな楽曲を作ろうと思ったのですか。
Fümi:1期のアニメを観た段階で、前の『EVIL OR LIVE』よりメジャー感のある作品というイメージがあったので、あまり斜に構えて作り込まないほうが良さにつながると思ったんです。前作の「それでも僕は生きている」はシンフォニックなロックサウンドを自分が思うアニソンの形に近づけてまとめましたけど、今回は普段自分が聴いている海外のオルタナロックに寄せたらメジャー感につながると思って、ビートもFALL OUT BOYみたいなバンドを意識して組みました。
――アニメ制作サイドから何か特別なオーダーはありましたか?
Fümi:特になくて、自由に作らせていただきました。アニメを制作してるのは『EVIL OR LIVE』と同じ絵梦(中国のアニメスタジオ)というところなんですけど、そこの方たちが前回の「それでも僕は生きている」をすごく気に入ってくださったみたいで、今回もサウンドは一発OKでした。特にデモを完成させる直前にアイデアが浮かんで加えたイントロの部分を褒めてくださったので、嬉しかったです。
――具体的にはどんなアイデアが浮かんだのでしょうか。
Fümi:戦いにおもむく前の儀式みたいなビートと、激しく動くストリングスの反復する旋律を頭に加えたくなったんですよ。ハリウッド映画の予告編みたいなイメージがあって。アレンジャーさんには急なお願いをしてしまったんですけど、すごく良い方で「アーティストはそういうことがよくあるし全然対応するから」とおっしゃっていただいて。
――クワイア風の荘厳なコーラスも挿入されてますが、あの歌はどなたが歌われてるのですか?
Fümi:あれは僕がオペラボイスで歌ってます。僕は音大時代にカウンターテナーで米良美一さんのような歌をやってたんですけど、入学したときはバリトンで、そこからテノールやソプラノもやってたから、自分ですべての声のパートを歌えるんですよ。そこにソフトシンセでボイシングの音を重ねて幅を広げていったんです。
――バリトンからカウンターテナーまでこなすとは、音域の幅がすごいですね……!
Fümi:もともとは地元のクラシックの先生からバリトンを薦められてやってたんですけど、大学で師事した声楽の先生に「君、声高くない?」と言われてテノールの曲を歌ってみたら、自分でも高い音がいけることに気づいて。それでいろいろ提案していただいたなかで、カウンターテナーもやってみたんです。その先生がめちゃくちゃ良い方で、いろんなことを「いいものはいい」と認めてくださったり、「ポップスが好きならやればいい」と言ってくださった方なんですよ。
――サウンド面で他にこだわられたポイントはありますか?
Fümi:前作はダークな要素が強かったですけど、今回は間奏部分でストリングスやクラシックギターのフレーズを増やして、より間奏らしいアレンジにしたところがポイントですね。
――先ほどオルタナロック寄りのサウンドを心掛けたとおっしゃってましたけど、個人的には曲展開や構成にアニソン的なノウハウが活かされているように感じました。例えばBメロで少しトーンを落としてサビで一気に高めるような曲の強弱のつけ方とか。
Fümi:そこに関しては、前作と似た部分を残そうとした結果です。NormCoreでやりたいことの構想はたくさんあるんですけど、みなさんからするとまだ「NormCoreとは何か?」ということが伝わりきれていないと思うんですよ。J-POPでは同じような曲調の楽曲を発表される方が多いですけど、それを続けることで安心感が生まれたり、その人たちのカラーが生まれると思うので、僕らも前作のような曲展開を継承しながらも、どれだけ違う色を出せるかを自分たちに課してるところなんです。それがアニソンっぽい展開になったゆえんだと思います。
――そこはNormCoreのカラーとして定着させていきたい部分なんですね。今の発言を聞くに、J-POPやアニソン的な楽曲制作の手法も相当研究されていそうですが。
Fümi:僕は普段は洋楽を聴くことが多くて、EDMのようにコードの展開よりグルーヴの変化で起伏を作っていく音楽が好きなので、何も考えずに曲を作ると1コードの曲になることが多いんですよ。なので研究というよりも、意識的にそうならないように曲を作るように心がけてます。いずれは1コードでも日本の人が聴いてエクスタシーを感じられる曲を作りたいのですが、現状はアニメ音楽やシンフォニックな要素のことを考えると、ある程度は展開があった曲の方が良いと思いますし、特に今回はバトルもののアニメなので、映像も静と動があるものになると思って曲の進行を考えました。
「理想形を追求することが課題」
――Fümiさんは2016年にUMI☆KUUN名義で発表された「O-TA-KUワッショイ!」という曲でトロピカルハウスのテイストに挑戦してましたし、そういう意味ではいろんなスタイルを取り入れられる作家的な資質をお持ちの方だと思うんです。音楽を聴くときは分析しながら聴くタイプなのでは?
Fümi:たしかに分析しながら聴いちゃいますね。よく「これは絶対あの曲パクったでしょ」って思ったりします(笑)。でも、海外はいい意味で陰湿ではなくて、お互いにリスペクトがあるんですよね。だからこそEDMの人はリードシンセの部分で自分のパーソナルを出したりしますし、逆にそのなかで研ぎ澄まされていく部分があるのが面白いと思います。
――最近聴いたなかで刺激を受けたクリエイターやアーティストはいますか?
Fümi:Panic! at the Discoの新譜は、ブレないなかで新しいところも出してるのがヤバかったですね。それとEDM系ではTritonalという人たちの音作りが刺激になりました。音数を削ぎ落していって、ひとつひとつの音をリッチにしていくところが素晴らしいんですよ。EDMはビッグルーム系のブームが過ぎ去ってからトロピカルなチルアウト系がきて、そこからボーカルをカットアップで処理してリードを作っていくフューチャーベース系のスタイルが主流になって、今は「次の最先端がどうなるのか?」という時期だと思うんです。だから今はリスナーとしていちばんワクワクしてるところですね。
――Fümiさんの音楽好きなところがめちゃくちゃ伝わってきます(笑)。
Fümi:テンションが上がってしまってすみません(笑)。
――でも、そういう刺激はNormCoreの音楽にも反映されてると思うんですよね。音色ひとつひとつに対するこだわりもそうですし。
Fümi:たしかにそこはすごく意識してこだわってます。ただ、毎回自分の思うレベルまでは達成できてないので、今後はもっと突き詰めていきたいんですよね。今作で言うと、足回りをラウドロックっぽい低音処理にしたかったんですけど、ウワモノのストリングスを生で録ってる兼ね合いもあって難しくて。現状の自分のチームでの最善は尽くしましたけど、これを自分の脳内にある理想の形にするためには何をして誰にどう伝えればいいのか、というのが今後の課題になってます。