遠藤ミチロウが語る、THE STALINとブラックユーモア「自分がパンクっていうふうには考えてない」

遠藤ミチロウ、スターリン経た音楽の歩み

 数々の伝説を残したバンド・THE STALINの結成者であり、ボーカリストの遠藤ミチロウ。遠藤が率いるTHE ENDと、THE STALINのアルバム『trash』ジャケットイラストを描いた人物としても知られる宮西計三のバンド・THE HUNDRED DEVILSとの2マンイベントが2018年1月12日、新大久保アースダムに開催される。

 今回リアルサウンドでは、そのイベント開催に先駆けて、遠藤ミチロウに単独インタビューを行うことができた。THE STALINが世に出た1980年代当時の話題はもちろん、遠藤が今興味を持っている音楽表現、さらに1月のライブへの意気込みなど話を聞いた。聞き手はパンクバンド・FORWARDのボーカルで、ライターとして活躍しているISHIYA氏。(編集部)

ハードコア全体で、アンチ・スターリンみたいになってた

(写真=遠藤貴也)

ーーミチロウさんはこれまで色んなメンバーと音楽活動をやってきていますが、どのようにメンバーを決めているんでしょうか? 2016年の大衆芸術音楽祭『橋の下世界音楽祭』では、ミチロウさんが始められた民謡パンクバンド・羊歯明神で久土’N茶谷の茶谷(雅之)君がドラムをやってましたよね。

遠藤ミチロウ(以下、遠藤):羊歯明神は普段トシさん(石塚俊明)と山本久土と僕なんですけど、久土と茶谷君はMOSTというバンドをやっていて、僕のM.J.Qというバンドでも一緒にやってたから久土に入ってもらったんです。そのあと久土が久土’N茶谷というバンドを始めた関係で、トシさんがだめなときには茶谷君に代わりにやってもらってるんですよ。

ーー友川カズキさんのバックでも弾いているチェロ奏者の坂本弘道さんともやってますよね。

遠藤:僕とトシさんが2人で頭脳警察とSTALINを合わせて「頭脳TALIN」ってバンド名でやったときに、坂本さんとトシさんがほかでもやっていたので「坂本さんも入れちゃえ」ってことで、NOTALINに坂本のSでNOTALIN’Sにしました。

ーー中村達也君とも色々やってますよね。今度友川カズキさんと達也君でも一緒にやるみたいなんですよ。

遠藤:僕が去年『ミチロウ祭り』っていうのを8日間やったときに、最初の日は僕と友川さんのソロをやったんです。そのとき達也が「友川さんのファンだから観に行きたいんだよ」って言うんで、そこで達也と友川さんが会ったんですよ。

ーー友川さんとミチロウさんといえば、友川さんがミチロウさんの「思惑の奴隷」を、ミチロウさんが友川さんの「ワルツ」をそれぞれカバーしていますが、友川さんの曲の中で「ワルツ」を選んだ理由は?

遠藤:「ワルツ」はね、ストリッパーの一条さゆりさんが「ストリップで歌ってくれないか」って言ってきて、そのときにどうしても友川さんの「ワルツ」を歌ってくれって言われて、僕も「ワルツ」は好きだったんで一条さんの踊りと一緒に歌ったのがきっかけです。歌ってみたら良かったので、僕の『FUKUSHIMA』っていうアルバムにも入れました。

ーーミチロウさんの活動ではやはりTHE STALINの頃が印象に残っています。でも当時のハードコア界隈では、THE STALINを好きだということがなかなか言い出せない雰囲気がありました。チフスからTAMさんが入ったり、ハードコアの人間でTHE STALINのライブを観に行っていた人もいたりしたのに、なぜTHE STALINはそういった扱いがなされていたのかが不思議で。

(写真=石垣章)

遠藤:たぶんTHE STALINがメジャーデビューしたんで、あの頃のハードコア全体で、アンチ・スターリンみたいになってたのかもしれないですね。だから、好きだと言ってくれていた人たちはそうなる前から観にきてた人なんじゃないですか。THE STALINのことを好きだったハードコアの人間も結構いましたから。

ーー自主制作ソノシート『電動こけし/肉』を出す前にTHE STALIN名義のライブは?

遠藤:ライブはほとんどやってないですね。デビューライブ、即ソノシート発売みたいな感じです。ドラムの乾純とはその前のコケシドールのときからずっと一緒で、THE STALINをやろうってことになって「ソノシート作っちゃえ」って作ったんですよね。ギターのTAMはもっとあとのアルバム『trash』からですよ、加入したのは。そういった関係もあって、自分でやっていた<ポリティカルレコード>から、チフスのソノシートも出したんです。

ーーTAMさんはTHE STALINを脱退したあと、ハードコアパンクの人間たちと仲良くなっていった印象があります。

遠藤:TAMはアルバム『虫』のレコーディングが終わってから抜けたんですよ。STALINを抜けたから仲良くなったんじゃないですか。

ーー中田圭吾(Dr/ex.AXE BOMBER、G-ZET、NICKEY & THE WARRIORS、THE STAR CLUB、COBRA、etc)さんも一緒にやっていた時期がありましたよね。

遠藤:ケイゴとはずっと仲良いから。

ーーTHE STALINの再結成では、 KATSUTA(EXTINCT GOVERNMENT、ex.鉄アレイ)さんがベースを弾いたこともありました。

遠藤:KATSUTA君も、そのときに一緒にやったSUZUKI君(PULLING TEETH)も、みんなケイゴが連れてきたんですよ。

ーーそもそもなぜTHE STALINは、メジャーに行こうと思ったのですか?

遠藤:その頃は別に、メジャーがダメでインディーズじゃなきゃダメとか、そういうのは僕の中にはなかったんですよ。メジャーに行ってバンドがコロッと変わったとかそういうのじゃないじゃないですか。メジャーから出しても、色々不都合があったらまたインディーズで出せばいいしって、そういう感覚だった。『虫』のあとに『FISH INN』を自分のレーベルから出したり、キングレコードからソロを出したりと、行ったり来たりなんですよ。

ーーTHE STALINがメジャーデビューしたことによって、パンクというものが世の中に知れ渡る一つのきっかけになったと思うのですが、パンクは元々好きだったんですか?

遠藤:アコースティックで東京に出てきて、たまたま住んでたアパートの向かいにあった喫茶店が、パンクをガンガンかけていたんですよ。そこで初めてSex Pistolsとかパティ・スミスとか聴いて「パンクいいなぁ」と思って、DEVOの初来日を観に行きました。DEVOを初めて観てショックを受けて、エレキを持って身体中ビニールテープでぐるぐる巻きにしたりして、1人DEVOみたいなことを始めたんです。でもバンドやらなきゃと思って作り出したのがコケシドールかな。まだそのときは自分もギターを弾いてたんで。コケシドール、バラシとバンドをやって、やっぱりギター弾いてるとダメだなって思って、ボーカルだけになって自閉体をやって、THE STALINでやっとパンクっぽいバンドになった感じですね。

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