矢野顕子、東京ミッドタウンで「六本木で会いましょう」披露 『Soft Landing』イベントレポ
2017年11月30日、『TOKYO FM公開収録 Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM=矢野顕子 New Album『Soft Landing』発売記念 Special Event=』が東京ミッドタウン アトリウムで開催された。
ステージにあるのはベヒシュタインのグランドピアノ1台のみ。ボーカル用に1本、弦用に2本のマイクがセッティングされていた。そしてステージの向こうには、ライトアップされたメリーゴーラウンドがガラス越しに見えるシチュエーションだった。
矢野顕子はステージに立つと、吹き抜けの空間の2階にまで集まったファンの数に驚く表情を見せた。そして、軽く譜面を探した後、ごく自然に弾き語りを始めた。まるで呼吸でもするかのように。
1曲目は、11月29日にリリースされた7年ぶりの弾き語りアルバム『Soft Landing』のタイトルナンバー「Soft Landing」。矢野顕子は弾き語りをするとき、顔をファンに向けて歌う。その姿は、ファンのひとりにひとりに語りかけているかのようだ。しなやかさ、力強さを感じさせる「Soft Landing」では、ワンフレーズごとに歌の表情を変えていた。
矢野顕子はピアノを弾きながらMCをする。そして「結末が『Soft Landing』じゃなかった曲」として歌われたのが、2曲目のフジファブリックの「Bye Bye」だった。矢野顕子の弾き語りは、楽曲の物語を丁寧にひもといていく。同じ矢野顕子による「Bye Bye」のカバーでも、CD『Soft Landing』とライブとでは細部が異なることも確認できた。
MCでは、糸井重里とともにたくさんの楽曲を作ってきたことに触れ、歌詞が99%先であると述べた。どういう意図で詞を書いたかは聞いたことがなく、矢野顕子の解釈でメロディを書いてきたという。
そして、3曲目の「夕焼けのなかに」は糸井重里作詞、矢野顕子作曲による楽曲。熱唱で終わるこの楽曲は、この日一番の熱演だったかもしれない。
MCで矢野顕子は、東京ミッドタウンが防衛庁跡地に建てられたことについて触れた。1970年代の六本木になじみが深いそうで、現在の東京ミッドタウン近くに、かつては友人の家があったという。
そして歌われた4曲目は、東京ミッドタウン開業10周年記念のために制作された「六本木で会いましょう」。しかもこの日は、〈公園の長い坂を下って〉という歌詞を歌いながら、「あの坂!」とガラス越しに見える公園の坂を指さすなど、まさに東京ミッドタウンを舞台にしていることを実感させる弾き語りだった。
最後の5曲目は「ひとつだけ」。1980年のアルバム『ごはんができたよ』に収録されてから、多くの人々に愛されてきた楽曲だ。
ライブを終えた矢野顕子は、「じゃあまた来年11周年で!」と一言。矢野顕子の弾き語りは、1時間弱という時間の短さながら、充分すぎるほどの満足感を聴き手に与えるものだった。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter
■イベント情報
『TOKYO FM公開収録 Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM
=矢野顕子 New Album『Soft Landing』発売記念 Special Event=』
日時:2017年11月30日(木)17:30~18:30
場所:TOKYO MIDTOWN アトリウム
同イベントの模様は12月8日(金)と15日(金)の2週にわたり、番組内で放送される予定。
TOKYO FM オフィシャルサイト
矢野顕子 オフィシャルサイト