雨のパレードが新木場コーストワンマンで示した、新しい音楽を創造する意思

雨パレ、新木場コーストワンマンレポ

 9月9日の仙台darwinで幕を開け、9月28日の札幌Sound Lab moleでひとまずの終わりを迎えた雨のパレード今年2度目のワンマンツアー(10月21日に地元・鹿児島CAPARVO HALLでの追加公演が決定している)。ドラマ『下北沢ダイハード』のエンディングテーマとして注目を集めたニューシングル『Shoes』のリリースに伴う今回のツアーは〈涙が乾かないうちに このままどこか行こうぜ  いまならさ どこまでも行ける気がするでしょ?〉という歌詞から『Untraveled』というタイトルがつけられ、「まだ旅の経験がない人を、ライブで新しい旅に連れて行く」というコンセプトでセットリストが組まれていた。

 実際この日はオープニングの「new place」におけるドラマチックな映像演出に始まり、中盤にはアコースティックコーナーを設け、要所にインタールードを挟むなど、様々な趣向で会場を埋め尽くしたオーディエンスを旅へと誘った。しかし、インディーズ時代から彼らが大事にしている名曲「Petrichor」でアンコールを終えたときに感じたのは、「ここから本当の意味での雨のパレードの旅が始まるんだな」という、確かな手応えだった。

 この日のポイントは大きく二つあったと言っていいだろう。最初のひとつは、福永浩平(Vo)の歌の力が改めてフィーチャーされていたことであり、山崎康介(Gt&Syn)のアコギのみで「You」と「morning」を披露したアコースティックセットがその象徴。「Shoes」からシングルの収録曲を立て続けに披露し、バラードの「寝顔」と「Take my hand」へと繋げたのも含め、この日の中盤ははっきりと歌のセクションであった。

 『Change your pops』までの雨のパレードは、「アナログシンセやサンプリングパッドを用いて、バンドだけどバンドじゃないサウンドを鳴らし、同時代の海外インディとのリンクを示す」という命題があったが、「Shoes」という楽曲はドラマのテーマ曲としてよりマスに聴かれる曲であることを踏まえてか、これまで以上に歌メロの良さが前面に出た曲だったように思う。この日のアコースティックセットも、もはやサウンド面での実験精神は前提となって、彼らの楽曲がシンプルにポップスとして素晴らしい楽曲であることを改めて印象づけるものだった。

 もうひとつのポイントは、福永以外のメンバーがフィーチャーされる機会が増えたということ。もちろん、これまでのライブでも各メンバーは多彩な機材を駆使し、高いプレイヤビリティを発揮していたのだが、とはいえ注目が集まるのはやはり福永のパフォーマンスだった。しかし、この日はアコースティックコーナーでフィーチャーされた山崎以外にも、是永亮祐(Ba)が「encore」でスラップベースでのソロを披露し、「Focus」ではエレキギターのような暴力的なノイズを響かせたりと、場面によって主役級の活躍を見せる。

 さらに、アコースティックセット後の静けさの中、大澤実音穂(Dr)がマレットを用いて空間を生かしたソロを披露し、是永と2人でリズム隊によるセッションを披露したのも非常に新鮮。アンコールではメンバー一人一人が挨拶をし、生真面目なタイプの福永に対して、是永のユニークなキャラクターが垣間見えたのも、バンドの魅力をより重層的なものにしていたように思う。

 メジャーデビュー以降の彼らはまず自らの音楽性を世に伝えることに専念し、2枚のオリジナルアルバムで、その独自性を音楽ファンに伝えることに成功した。そして、『Shoes』というシングルと今回のツアーは、バンドが新たなフェーズに入ったことを高らかに告げるものだったと言っていいだろう。福永は新木場STUDIO COASTをソールドアウトできたことに一定の満足を示しつつ、「まだまだ、もっと」と語っていたが、それはライブのクオリティやハコの大きさの話だけではないはず。かねてより繰り返し口にしている「日本のポップスを更新する」という目標であり、もっと言えば、自分たちの世代の新たな音楽の創造へ向けた、確固たる意思表明だったに違いない。

(文=金子厚武/写真=後藤壮太郎)

雨のパレード オフィシャルサイト

 

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