『キスマイBUSAIKU!?』&『いただきハイジャンプ』、ジャニーズ番組の放送枠移動は何を意味する?

 そんなグループの個性は、とりわけ「子供の一大事」を解決する企画によくあらわれている。「夢の中で子供の苦手を克服!」「寝起きの子供に夢の中と信じさせて苦手を克服させろ!」といった企画や、自転車や鉄棒などの苦手な子どもができるように手助けする企画など、そうしたタイプの企画が占める割合は、深夜番組としてはかなり高い。

 その意味では、週末のお昼時というファミリー視聴者の割合が高そうな時間帯は、この番組がずっとやってきたことに元々合っていると言える。むしろ満を持してと言ってもよいのかもしれない。

 こうして改めて見てみると、今回の二つの番組の枠移動は、それぞれの番組のセールスポイント、それぞれのグループが培ってきた個性に沿ったものであるように思う。そしてその違いは、ジャニーズの深夜番組の歴史にこれまでもあった二つのパターンに当てはまるものでもある。

 『いただきハイジャンプ』の場合、深夜からそれ以外の時間帯への移動になる。深夜番組では、こうしたパターンも多い。深夜番組でバラエティの経験値を上げ、番組がある程度熟成し、評価も定まったところで他の時間帯へ移動する。

 ジャニーズの歴史で言えば、かつてSMAPが『SMAP×SMAP』を始める前に、同じフジテレビの深夜で『SMAPのがんばりましょう』をやっていたことが思い出される。そこでSMAPは、月曜から金曜まで毎日、歌、トーク、演技、コントなどバラエティ修業を積んでいた。

 もう一方で、深夜だからこそ面白くなるタイプの番組もある。「ガチ」「マニアック」「実験的」など、より濃い面白さを狙った番組である。最近は視聴者もそうしたものを求める傾向が強い。たとえば、テレビ東京の深夜バラエティの人気が全般的に高いのは、そのニーズに応えているからだろう。

 ジャニーズで言えば、そのテレビ東京で現在土曜深夜に放送中のA.B.C-Zの冠番組『ABChanZOO』などがまさにそうだ。また、すでに15年ほど前になるがテレビドラマ『演技者。』(フジテレビ系)も個人的には記憶に残る。ジャニーズメンバーが人気劇団の名作戯曲をそのままテレビで演じるという企画は、今考えても斬新かつ濃いものだった。『キスマイBUSAIKU!?』もまた、大きく分ければそのタイプに入るだろう。

 このように両番組がジャニーズと深夜番組の関わりの歴史のうえにあることを知れば、少し違った楽しみ方もできるのではあるまいか。そして両グループがさらなる番組の発展によって今後もそれぞれの個性を深め、ますます大きな存在になっていくことを期待したい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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