BLACKPINKなぜ全世界でヒット? K-POPと中南米の関係が示す、日本のアイドル市場の閉鎖性

 ところで、なぜJ-POPや日本のアイドルたちは、K-POPのように中南米でブームにならないのだろうか? チェ助教授が指摘しているように、中南米でも(J-POPやアイドル以外の)日本の諸文化は大規模に消費されているのに、そのチャンスをK-POPにむしろ奪われてしまっている。もちろんその原因は複合的で、またいくつもあるだろう。ここでは、特に、日本の音楽番組が動画サイトなどで良質な映像と音響のまま、無料でアップされないことに注目したい。例えば、日本の代表的な音楽番組といえば、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)だ。だが同番組については、無料動画サイトなどに、韓国の同種の番組のようにアップされることはない。また非公式でアップされてもその削除などの措置は迅速だ。罰則も重い。ジャニーズなど一部の事務所では、肖像権の管理も厳しいことが、韓国のように無料動画サイトへのアップを拒んでいるのかもしれない。

 いずれにせよ、K-POPのスターやアイドルたちがその現在進行形の親しみやすい姿を、南米を含む世界中のファンに無料で、迅速に、そして大量に供給しているのに対して、日本のJ-POPやアイドルたちの同種の動画は過小供給だ。その意味では、J-POPは自らの閉鎖性ゆえに、K-POPに遅れてしまっているのだ。

 南米でのK-POPのブームを知ることは、日本のガラパゴス化の負の側面を知ることにも繋がっている。

※注1 Jung-Bong Choi(2014)“Loyalty. transmission. and. cultural. enlisting. of. K-pop. in. Latin. America” in K-pop: the International Rise of the Korean Music Industry. eds. Choi and Maliangkay (Routledge.)

※注2 日本での韓流ブーム、特に『冬のソナタ』中心の経済分析については、田中秀臣『最後の『冬ソナ』論』(太田出版、2005年)に詳しい。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは北原里英、欅坂46、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、西恵利香、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICEら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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