GLIM SPANKYが深めた“スタイル”への確信「『自分たちは自分たち』という気持ちを持ててる」

GLIM SPANKYが深めた“スタイル”への確信

 90年代初頭にブレイクした時のレニー・クラヴィッツか! それをもっとサイケ方向にブーストかけたやつか! と言いたくなる、「超オールド・スタイルだけど今の音」な「アイスタンドアローン」で始まり、アコースティック・ギターとストリングスをまとって童謡のように歌われる「お月様の歌」で終わる、GLIM SPANKYの新しいミニアルバム『I STAND ALONE』。5曲ともこれまで以上に吹っ切れた曲の書かれ方をしているし、鳴り方をしている。

 60年代ロックを今に蘇らせ新鮮に響かせる、すばらしく年齢不相応な新人としてまず注目を浴びたユニットだが、ただし、逆に言うと50歳とか60歳でGLIM SPANKYのような音を出している先輩ミュージシャンなど、ほぼいない。それに、高校生の時に『閃光ライオット』で勝ち抜いたことから始まり、下北沢や新宿のライブハウスの活動を経てデビューにこぎつけ、現在に至っているそのキャリアも、同世代のミュージシャンたちと何も変わらないものだ(現在ボーカル・ギターで詞曲を手がける松尾レミは25歳、ギターでアレンジを主に担う亀本寛貴は26歳)。なぜこの音を選び取ったのか、そしてなぜそれがこのようなすばらしいものになるのか、ここまでどのように歩んできたのかなどを、『I STAND ALONE』のことと共に訊いた。(兵庫慎司)

長野でひとりで「I stand alone」っていう名前でやってた(松尾レミ)

ーー1曲目の「アイスタンドアローン」って、タイトルだけでもう「ああ、GLIM SPANKYだなあ」と。

松尾レミ(以下、松尾):(笑)そうですね。たぶん、この曲を1曲目にしたいなと思ったきっかけが……前作の『Next One』を出して、大きなタイアップもあって、そういう環境にどんどん広がっていったんですけど、関係なく私たちは尖り続けているっていう気持ちを、最初に見せたくて。「I stand alone」、「孤高に立っている」っていうタイトル、そのメッセージ性っていうのは、高校生の頃からすごくいいなあと思っていて、いつかこのタイトルで曲を作りたいなと思っていたので。

ーー高校生の頃は、どんな感じでその言葉に惹かれたんでしょうね。

松尾:その「ひとりで立っている」っていうのが、自分の創作活動にすごくあてはまって。長野県の田舎だったので、ロック好きな人もいないし、興味を持ってくれるような人もいなかったので、もう関係ない、私がいいと思ったものを作り続けようっていう心意気でやっていたので。それにこの言葉がすごく当てはまったっていうのと、あと、GLIM SPANKYをやりつつ、長野県でひとりでアコースティック・ギターでライブしてたんですよ。その時に「I stand alone」っていう名前でやってたんです。

ーーあ、アーティスト名だったんですか。

松尾:はい。いろんな市とかに行って歌うんですけど、「I stand alone」っていう名前で、尖ってやってたんですよ(笑)。で、大学で上京した時に、4人だったメンバーがふたりになって、アコースティックでもふたりでやるようになったんで、その名前を使わなくなっていったんですね。でも私はその言葉が好きだから、心の中にしまっておいたんです。その言葉を使える曲が作れる時に出そうと思っていて、それが今かなっていうことで。

ーー確かにGLIM SPANKYって……望む望まないにかかわらず、結果として、自分たちって今「アイスタンドアローン」なことになってるなあと思いません?

松尾:あははは、そうですね。でも、昔から変わらない、「私は孤高でいたい」っていう思いも半分はありつつ……イベントに行ったり、テレビに出たとしても、やっぱり異色というか、周りに合わないっていうのはあって。「それもよし」っていう肯定の意味での「アイスタンドアローン」でもあるので。昔思ってた気持ちもありつつ、今の状況さえも肯定するっていう、ポジティブな要素が加わった解釈になったかな、って思います。

ーー──たとえば長野にいた頃は、東京に行けば、こんなに「アイスタンドアローン」じゃないんじゃないか、と思っていたらーー。

松尾:「思ったよりいないぞ」っていう(笑)。

亀本寛貴(以下、亀本):かなり「アイスタンドアローン」だよね。

ーーだから、今は平気だろうけど、最初は戸惑いもしただろうなあと。

松尾:いや、戸惑いはしなかったです。単純に「なんでなんだろう?」みたいには思いましたけど。

亀本:でも逆にありがたいと思ってますけどね。だって、このバンドもあのバンドもベクトルが近いってなると、ライバルじゃないですか。同じベクトルで勝負しなきゃいけないって思うんですけど、そういう人いないから。すごいなあって思う人はいますけど、ベクトルが違うので。「自分たちは自分たち」って気持ちを持ててる感じだから。

松尾:長野県にいた時は、音楽が好きな人がいないっていう孤独だったんですけど、それがちょっと違う意味も加わってきたなと。それもあってこういう曲ができたのかな、と思います。

私たち、ライブハウスのホームがないんですよ(松尾レミ)

ーーちょっと前に、雨のパレードのライブにゲストで出たじゃないですか(2月5日、リキッドルームにて開催の『雨のパレードpresents『&』』)。雨パレの福永浩平(Vo)さんがMCで、松尾さんと同い歳だと言っていて。

松尾:そうそう、平成3年生まれ。

ーーで、「この世代で時代を変えようと思ってるんで!」って言っていて。「あ、GLIM SPANKYにも同世代で仲間意識を持てるバンドがいたのか!」と。

松尾:いや、あんまり仲間意識は持ってないですけど(笑)。でもなんか仲良くて、よく話はしていて。同世代だからこそ……やってるジャンルというか、テイストはーー。

亀本:全然違うもんね。

松尾:違うけど、同世代で「がんばろうね」って言える人かなあと思いますね。

ーーあとMCで、Suchmosとかも同世代で、よく対バンしてたっていう話もされていて。

松尾:そうですね、あのー、河西くん、YONCE……YONCEって恥ずかしくて言えないんですけど(笑)。

亀本:河西くんは違うバンドをやってたんです。

松尾:そう、OLD JOEっていうロッケンロー・バンドを。

亀本:で、そのドラムがGLIM SPANKYのドラムでもあったから。

松尾:だからよく対バンしてたんで。大学に入ってすぐの頃からの仲です。

亀本:下北とかで。で、ドラムがいい感じだったんで、僕らがデビューする直前ぐらいから叩いてもらってて。

松尾:だから、河西くんとかは同い年だし。あと誰だっけ……。

亀本:角舘くんとか。

松尾:ああ、健悟、Yogee New Wavesの。大学の同級生なんで、仲良いんですよね。

ーーきっとそれぞれ当時は、ライブハウスの人からしたら、対バンに困る人たちだったんだろうなあと思って。

松尾:(笑)はいはい、ありましたありました。

ーーという人たち同士で仲良くなったのかなと。

亀本:対バンはすごい困ってたよね。

松尾:その話を雨パレの浩平くんと楽屋でしてて。私たちも「誰と対バンさせたらいいかわかんない」っていつもライブハウスのブッキングの人に言われてたバンドで、雨パレも同じことをよく言われてたらしくて。だから私たち、ライブハウスのホームがないんですよ。仲良いバンドはいるけど、チームっていうか、その界隈には所属しなかったんで。逆に今になって、その所属してなかったバンドたちが出てきて、もう一度再会できてるって状態ではありますね。おもしろいです。

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