『HiGH&LOW』プロジェクトの巧みな“仕掛け” ファン以外にも支持された理由を考察
先日、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也がパーソナリティを務めている『たっちレディオ』(ポッドキャスト)で、「『HiGH&LOW』の映画を見に行った」という話題が挙がっていた。割とマニアックな話や社会問題の片隅に注目していることが多い同番組で、『HiGH&LOW』という言葉が聴けるとは思わなかった。これはほんの一例だが、最近『HiGH&LOW』の名前を至る所で耳にすることがある。認知度が上がってきているのだろう。さらに、CLAMPが今週より『週刊少年マガジン』にて『HiGH&LOW』の連載をスタートさせたり、8月19日には『HiGH&LOW THE MOVIE2』、11月11日には『HiGH&LOW THE MOVIE3』の公開が決定し、今後ますます認知度を上げていくと考えられる。では、なぜこれほどまでに『HiGH&LOW』は既存のLDHファン以外にも人気が広がっていったのか。
改めて考えてみると、『HiGH&LOW』の至る所に設けられた様々な“仕掛け”が、多くの人々に刺さった理由ではないだろうか。例えば、制作過程。そもそも、『HiGH&LOW』のはじまりはテレビでも映画でもない。一つの「プロジェクト」として立ち上がったものである。ドラマから始まり、映画、CD、ライブ、漫画などへ展開している総合エンターテインメントなのだ。ドラマや映画は、一般的に脚本などのストーリーありきで作品を作り上げていく。しかし『HiGH&LOW』は作中に登場する、キャラクター作りが起点となっている。演じる俳優・アーティストの性格を反映させたキャラクター作りがなされており、「キャラクターのファンになる=演者のファンになる」という構造ができやすくなっているのだ。そこに、「このキャラクターはこういう音楽」、「こういう人たちだから服装はこうしよう」と音楽とファッションの要素を足していく。有名なストリートファッションブランドを取り入れたり、法被や学ランなどをストリートテイストに着崩したり、時にはキャストの私服を衣装にしたり……。こうすることで、エンタメのトレンドに敏感な人々の注目を集めたり、ファッションや音楽に興味のある人々にも訴求することができたのだろう。
そして、キャスティング。一般的に大きな事務所が制作に入り、キャストの大部分を所属タレントが占めるとなると、系列事務所の新人俳優を起用するケースが多い。しかし、『HiGH&LOW』はLDH所属の俳優・アーティスト以外にも、窪田正孝・斎藤工・林遣都などの人気俳優、ゴールデンボンバー・BIGBANGのV.Iなどのビッグアーティスト、小泉今日子・西岡徳馬・石黒賢・岩城滉一などのベテラン俳優なども多数出演している。そうすることで、LDH所属俳優・アーティスト以外のファン層も取り込むことができたのだろう。
さらに、プロモーション方法も特徴的だ。例えば、全国200カ所の舞台挨拶。未だかつてこれだけの劇場で舞台挨拶を行なった映画があるだろうか。さらに、映画の応援上映への積極的な取り組み。新しい映画の楽しみ方をタイミングよく取り入れたことで、一気に人気に火がついた。ちょうど、アニメーション映画『KINF OF PRISM』の応援上映が話題となった矢先の頃である。こうした話題になりやすいプロモーションを柔軟に仕掛けることで、より多くの人々の認知度を上げることができた。