「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第34回 『E TICKET RAP SHOW』リリースパーティー
吉田凜音、ようなぴ、根本凪…『E TICKET RAP SHOW』が“アイドル×ラップ”で伝えたかったこと
E TICKET PRODUCTIONがDJブースから低音を響かせ、イイヤンとともにラップをスタートさせると、それをただ撮影する岡島紳士。間奏になると「皆さん、踊るところですか?」と岡島紳士が問いかけるのも新鮮だった。岡島紳士は1曲目が終わると「主催だからこんなことをしている場合ではない」とステージを去った。何をしに出てきたのだろうか……。しかし、岡島紳士が去ってバランスを崩したのか、2曲目ではイイヤンがトラックを止めてやり直す一幕も。E TICKET PRODUCTIONは「お前クビ!」とイイヤンに通告し、まさかのグループ崩壊でオープニングアクトは終了した。
当初からステージの中央には、長い台のようなものがあった。開演ジングルが鳴ると、その台に現れたのは人形劇の人形たちだ。2体の人形は、「ラップをして森に住むみんなをロックしたい」「それはドープ」という話をしはじめた。
すると、まず寺口夏花&山崎愛(sora tob sakana)がステージに現れた。「AS ONE」での彼女たちは、すっかりフロウが安定しており、高校生と中学生の彼女たちの成長の早さに驚かされた。人形たちも楽曲に合わせて踊り、DJブースには着ぐるみの姿も。
アイドルの転換時に人形劇が行われる形式でステージは進行した。2番手として登場したようなぴ(ゆるめるモ!)は、「GOES ON」の難しそうなラップをも見事に操ってみせた。
根本凪(虹のコンキスタドール)のメランコリックな「アウトラウド」は、将来への不安を描いたリリックだ。そして、「グラビアの撮影」というフレーズが出てくるなど、現実の彼女と交錯するリリックでもある。ときに人形たちに手を振りながら「アウトラウド」を披露する根本凪は、ふだんとは異なる輝きを見せていた。
椎名ぴかりんの「FIRE LIAR」は、ギターがうなり、ビースティ・ボーイズをも連想させるサウンド。ラップの合間のシャウトも彼女ならではのものだった。
トリは吉田凜音。16歳のラッパーとして「りんねラップ2」を投下し、フロアの体感温度を一気に上げた。曲間には「吉田と友達になりたい!」という人形たちとの会話もあり、そこから「りんねラップ」へ。その熱狂は、まさにひとつの演劇の大団円の感すらあった。
「りんねラップ」は、そもそもは岡島紳士が制作するDVDマガジン『IDOL NEWSING』のために企画された楽曲だ。そうしたE TICKET PRODUCTIONとのコラボレーションが、これほど吉田凜音のラッパーとしての資質を開花させるとは予想もできなかった。「りんねラップ」と「りんねラップ2」は、それぞれ『E TICKET RAP SHOW』の最初と最後を飾っている。
人形劇によって『E TICKET RAP SHOW』のリリースパーティーは終了した。観客がアンコールをしはじめるのが遅れるほどの「終劇」感だった。
アンコールの拍手を受けて、再び登場した吉田凜音の司会のもと感想を聞かれた出演者たち(椎名ぴかりんは「魔界」に帰還して出てこなかった)は、口々に楽しかったと述べていた。
最後はステージ上の全員による「りんねラップ」。アイドル5人と、人形7体、DJ着ぐるみ1体によるドリーミーな光景とともに『E TICKET RAP SHOW』のリリースパーティーは幕を閉じた。