音楽評論家・小野島大氏生誕祭『BIG-O 60~大還暦祭~』レポート

音楽評論家・小野島大が追い求めてきた“刺激的な音楽”たち 豪華メンツの『大還暦祭』に感じたこと

 

 そして会場にいる誰もが待ちわびたであろう、RECKがついに登場。RECKは小野島氏がプロデュースを手がけたニュー・ウエイヴのトリビュート・アルバム『Fine Time 2~ A Tribute to NEW WAVE』に参加するなど親交もあり、小野島氏にとっては「ガキのころから憧れてきた大先輩」だという。近年はギターレスで、ドラムの中村達也との2人編成でのFRICTIONで活動してきたRECKだが、この日は吉村由加(Dr./CATSUOMATICDEATH、ニューロマンティックス)とヤマジを引き連れた3人編成で初めてステージへと上がり、1曲目にジミ・ヘンドリックスの「Fire」をカバー。そこから2人体制でリリースした作品にも収録されていた、FRICTIONの前身バンド3/3時代の楽曲「くもの中」を演奏するが、この日はヤマジのギターサウンドもあってか、よりロックに振り切った印象を受けた。続いてはヤマジが歌うdipの「Fly by wire」からThe Doorsの「Break on through」のカバーへと続く。その後はサイケデリックな音色の「メラメラ」をパフォーマンスし、本編最後は「Zone Tripper」で幕を閉じた。

 

 アンコールに登場したRECK、ヤマジ、吉村は、この日唯一といえるFRICTIONの3人体制時の楽曲で、<PASS RECORDS>からの1stシングルだった「Crazy Dream」を披露。イントロで客席から悲鳴にも似た歓声が響き渡るなか、ダイナミックに同曲を演奏し、ステージを去った後もしばらくは会場が熱気に包まれたまま、イベントは終了した。

 小野島氏は、そのキャリアのスタート時から現在に至るまで、常に新しい・刺激的な音楽を追い求め続けてきた。この日出演したアーティストは、その過程で彼に自身の音楽を肯定され、世間に迎合することなく、自らの牙を研ぎ続けた猛者たちだ。

 小野島氏の歩んで来た道がどうであったかなどということは、誰かの言葉を待つまでもない。この日、このステージの上で鳴らされた音楽が、全てを物語っているのだから。そして今後も、彼と出会って、その存在を広められるべき音楽は次々と世に登場するだろう。いちファンとしては、これからも元気に最前線でテキストを書き続け、新たな刺激を与えてほしいと願うばかりだ。

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