℃-uteが新作で打ち出した「大人の女性の魅力」 成熟するアイドルシーンはどこに向かう?

 そういうわけで、℃-uteのニューシングルは3曲それぞれの曲調で「大人の女性の魅力」を打ち出す内容になっている。そして、この試みが象徴するものは、℃-uteだけに留まらず女性アイドルシーン全体に共通する「アイドルグループをどう続けるか」という問いへの挑戦と言っていい。つまり、個々のアイドルそれぞれが年齢やキャリアとどう向き合っていくかという問題である。

 2010年代の今、アイドルグループをどう続けるかには、大きくわけて二つのやり方がある。一つは「卒業」というシステムを内在化させ、個々のメンバーにとってはグループでの活動を「通過点」にしつつ、グループ自体のブランドは守っていくというやり方。こちらはすでに完全に定着している。AKB48やその関連グループもそうだし、モーニング娘。もそう。言ってしまえば宝塚歌劇団のモデルとも共通だ。

 そしてもう一つは、メンバーのキャラクターや個性がグループの存在と密接に重なり合い「メンバーチェンジなんてありえない」状態のままキャリアを重ねていくやり方。代表格は結成10年を超えるPerfumeやNegicco。ももいろクローバーZやでんぱ組.incもそうだ。かつてはこの路線を歩んでいくとある時点で「アイドルかアーティストか」みたいな二項対立の論争が周辺に巻き起こったりもしたものだが、今ではそんな風潮も少なくなってきている。

(ちなみに宇野維正氏は著書『1998年の宇多田ヒカル』の中で「アイドルとアーティストの違いは『同性の支持を得られるかどうか』がすべて」と論じているが、80年代や90年代と違って今の時代は女性ファンを多く抱える“アイドル”も多い)

 こう考えると、℃-uteは後者であることを「選んだ」アイドルグループだと言える。8人でスタートしたメンバーは脱退が相次ぎ「これ以上1人でも欠けたら℃-uteは解散する」という今の5人編成になってから人気と勢いを獲得してきた。

 ただ、℃-uteは今やハロー!プロジェクト内でも最年長グループとなっている。同時期にデビューしたBerryz工房は、2015年3月、デビューから11年を経て無期限の活動休止となった。リーダー矢島舞美は来年の2月に25歳となる。高橋愛や道重さゆみが卒業したのは25歳の時だった。

 ℃-uteの今作の方向性が成功するかどうか、アイドルグループにつきものである「解散」や「卒業」を乗り越えることができるか――。それは成熟する女性アイドルシーンの未来も示唆する問いと言えるかもしれない。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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