校庭カメラガール運営に訊く、グループのコンセプトと野望「WARPやNINJA TUNEみたいになりたい」

コウテカ運営に訊く、グループ発足の経緯

振り付けはなし BRAHMANの動画を見せて「パクれ!」と指示

--レッスンではどういうことをしているのでしょう?

Jas:振り付けは特になくて。サビの動きとかは、僕が適当に考えています。一回振りをつけて躍らせてみたら、普通でつまんなかったんで、やめようと思って。あとはノイズミュージックをずっとかけて、「一切ゼロになって、体全体で表現をしてみてくれ」と言ったり。結構ハードかもしれない。BRAHMAN(ブラフマン)の動画とか見せて「パクれ!」と指示したり。

--BRAHMANを参考にしていたとは(笑)。でも最初期と比べると、ライブの熱さみたいなものを大事にするようなグループにどんどん変化しているようには感じていました。この変化は意外でした。

Jas:ライブは、理想は静かにでも暴れるでも、好きに楽しめるのがいいんですけどね。セトリも決めないで、DJセットのあるライブの時は、直前にもるもに指示します。インストアとか、音出しがPAの時は事前にメンバーにセトリを伝えないで、陰で僕が曲出しをしています。ノンストップでMCもなく1時間くらいライブをしますし、リリースイベントだと、曲の途中で次の曲をブッ込んだり、音を抜いたりもするので、メンバーのあたふた具合が面白いです(笑)。

--それはメンバーも無我夢中でやらないと対応できないですね。衣装、デザインの方向性は?

Jas:これもその都度考えてます。衣装は見た目でラッパーとかヒップホップを連想させないようにしてますね。デザインは、ALYT-のデザイナーにアートワークからロゴから、一貫して任せてます。

リリックの書き方と、日本語ラップとアイドルというジャンルへの距離感について

--リリックについてですが、「毎日磨くスニーカーと自撮り 平日もヒロインよりどりみどり」(TOKYO Terror)、 「colorful voice に恋する 5秒前 なんちゃって 簡単でしょ rap なんて」(Puppet Rapper)と、日本語ラップのクラシック「証言」や、ももいろクローバーZや広末涼子などのアイドルからの引用、オマージュが多数見受けられます。リリックに関してはどういうこだわりがありますか?

Jas:全曲の9割5分くらい僕が書いているのですが、フロウや韻の踏み方は語感を最優先にして、パズルみたいに言葉を嵌めていく感じです。すごく分かりやすいネタと、「これ分かったらすごいな」っていうマニアックなネタを散りばめてるというか。<やりたい放題やるんだ idol」(Puppet Rapper)>というラインは、今は活動してない北海道のラッパーの曲からの引用なんですけど、ファンの人に言い当てられた時は驚きました。

--その「Puppet Rapper」では「だって言われた通りにやってるだけ idol が idol であることを誇る」、「Star flat Wonder Last」では「アイデア繋いだアイドルラッパー アイドルらしさってなにそれ xxx」と、アイドルやアイドルラップであるという前提へのこだわりも感じます。

Jas:う~ん、こだわりというか…。例えばラップが今後すごく上手くなっても、自分でリリックを書いてないなら、ラッパーではないと思うし、どこまで行ってもアイドルなんですよね。それに、ラップの上手さって、完全に好き嫌いが分かれるというか。例えばバイリンガルなUSっぽいフロウとか、はっきり言葉が聞き取れる日本語で韻を硬く踏むとか、何て言ってるのか分からなくても声を完全に楽器として扱っていてカッコ良ければOKみたいなのとか。ラップにはいろんな上手さがあるので。

--日本語ラップとアイドルの2つのジャンルがコウテカには一番近いと思います。そことの距離をどうとりたいですか?それらのジャンルの流れのどこにコウテカを置きたいというイメージはありますか?

Jas:シーンやジャンルがどうとかではなく、完全に孤立したいですね。リリックを書くときは、ほんとに言葉のMPCを叩いているイメージなんです。何かのジャンルの流れの中に位置したいとは思ってなくて。だからなるべくラッパーの人とは競演しないようにしています。

--なるほど。ちなみにアニメからの引用もありますか?

Jas:「TOKYO Terror」に「ワンツー ワンツー ジュピター マーズ まとめてお仕置きするこのバース」っていう、セーラームーンからの引用があります。

最終的にはWARPやNINJA TUNEみたいになりたい 「わけわかんない感じ」を続けたい

--昨年12月にはキャリア史上最大キャパとなる、渋谷WOMBでのワンマンライブがありました。手ごたえはありましたか?

もるも:あんまり「やってやったぜ」っていう実感がなくて。通過点でしかないというか、早く次に行きたいっていう気持ちが先走ってました。第一章が終わって次に進むぞっていうのが見えたかな。

らみた:会場が広かったなって。力を出し切れなかった部分があるので、これからだなって感じです。

しゅが:最初の方は楽しむこと以外のことも考えて、動きとかカチコチになっちゃって。最後の方には何も考えないでできたけど。あんなに汗をかいたのは初めてでした。でももるちゃんが言ってたみたいに、通過点かなって。もっとすごいところに行けるんじゃないかなって気がします。

Jas:会場での音作りが難しいところがあったんですが、ああいう景色が見えるとは思わなかったので。これだけ聴いてくれる人がいるんなら、もっとちゃんとしようって思いました(笑)。

--今後どういうグループになって行きたいですか?

Jas:自分たちが何がしたいのか、まずはそれを考えます。カテゴライズがすごく嫌いなんですよ。でもそれは矛盾していて。自分たちで「アイドル」って言っておきながら「アイドルじゃない」とも主張する。そのわけわかんない感じを続けられればとも思っています。

--それはたぶん、戦略的にも正解なんだと思います。ちなみに具体的にどういう迷いがありますか?

Jas:ライブにたくさん出るよりもなんか面白いことないかなって探しています。今すごい彷徨ってますね。なんかふと気付いたら、リリイベやって、ライブやって、お客さんを増やして、ワンマンやって…っていうレールに乗っかってるなって思って。それは1回ちょっとストップしようと。捻くれもの集団なのになんか普通だなって。

--僕もそういう動員ゲームには結構前から飽きてて。アイドルオタク全体にも疲労感があるのを感じます。

Jas:レザーのブーツをずっと履いていたら、スニーカーも履きたくなるみたいな感じですね。

--チームとしてゴールをどこに置くのかっていうのはありますよね。モチベーション含め。

Jas:そうですね。ゴールについては考えていきます。誰かがやっていることはやらないようにはしたいですね。でもレーベルとしては、最終的には<WARP>や<NINJA TUNE(イギリスの名門エレクトロ・インディーレーベル)>みたいになりたいなと思ってます。幅広くて好き放題やっている感じがいいですね。アイドル以外も<tapestok records>から音源を出す予定です。

*****

 このインタビュー後、新メンバーの「うぉーうぉー とぅーみー」が加入し、ユニット名を「校庭カメラガールツヴァイ」に改名することが発表された。プロデューサーが「誰かがやっていることはやりたくない」というポリシーを語るコウテカ2が、今後“わけわかんない感じ”の活動でシーンを掻き乱してくれることを、楽しみにしている。

■校庭カメラガールツヴァイ
略称はコウテカ2、レーベルはtapestok records。2014年末に「校庭カメラガール」として結成。都内を中心に精力的にライブ活動中。2015年6月に1stアルバム「Ghost Cat」、同年12月に2ndアルバム「Leningrad Loud Girlz」をリリース。2015年12月、渋谷WOMBでの1stワンマンライブをもって「ましゅり どますてぃ」が卒業し、2016年2月2日に新メンバーの「うぉーうぉー とぅーみー」が加入。ユニット名を「校庭カメラガールツヴァイ」に改名した。
オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter

■岡島紳士(おかじま・しんし)
1980年生まれ。アイドル専門ライター。著書、共著に『グループアイドル進化論』、『AKB48最強考察』、『アイドル10年史』『アイドル楽曲ディスクガイド』など。埼玉県主催「メディア/アイドルミュージアム」のメインアドバイザー。ブックユニオンのアイドルディレクター担当。
アイドルカルチャーサイト&DVD「IDOL NEWSING」を運営、制作。
オフィシャルサイト(http://idolnewsing.com/
オフィシャルTwitter(https://twitter.com/ok_jm

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