KANA-BOON/シナリオアート『talking / ナナヒツジ』座談会
KANA-BOON/シナリオアートが映像クリエイターと語り合う、ロックバンドと映像の関係
KANA-BOON、シナリオアートのスプリットシングル『talking / ナナヒツジ』のミュージックビデオ(MV)が話題を集めている。舞台はクローン技術が発達した近未来の日本。研究所に捉われた美女、森の中をさまよう謎の“ひつじ博士”を軸にしたストーリー、そして、最新の機材を使用し、暗闇のなかで撮影されたバンドの演奏シーンがスタイリッシュに絡み合う2本のMVは、このシングルの世界観をしっかりと際立たせている。
今回リアルサウンドでは、KANA-BOONの谷口鮪(Guitar/Vocal)、飯田祐馬(Bass/Chorus)、シナリオアートのハヤシコウスケ(Guitar/Vocal/Programming)、MVの制作を担当された、クリエイティブディレクターの関和亮氏、監督の多田卓也氏による座談会を実施。「talking」「ナナヒツジ」MVのコンセプト、撮影秘話、さらにロックバンドと映像の関係性などについて語ってもらった。(森朋之)
「この映像のおかげで、曲が誤解なく届いている感じがした」(飯田)
——KANA-BOON、シナリオアートのスプリットシングル『talking / ナナヒツジ』のMVについて伺いたいと思います。それぞれの楽曲の魅力を際立たせながら、共通する世界観、ストーリーを持たせた内容になっていますが、このアイデアはどんなふうに生まれたのでしょうか?
関和亮(以下、関):今回のシングルは、TVアニメ『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』(フジテレビほか)のオープニング曲「talking」(KANA-BOON)、エンディング曲「ナナヒツジ」(シナリオアート)になっていて、オープニング映像は僕が担当させてもらったんです。MVの話をいただいたときも、関連性を持たせたり、世界観がつながっていたほうがおもしろいだろうなと。具体的な内容に関しては、すべて多田さんにお任せしました。とにかく観たことがない映像がいいよねという話はしてましたけどね。
多田卓也(以下、多田):関さんと相談しながら進めていくなかで、「同じ盤に収まるけど、別のバンドだし、別の曲なんだから、まずはそれぞれの楽曲の企画を考えたほうがいい」ということになって。バンドの演奏があって、そのなかで上手くつながるドラマを考えるという感じでしたね。あと、KANA-BOON、シナリオアートのいままでのMVとは別のベクトルから作ってみたいって気持ちもありました。シナリオアートは「アオイコドク」のMVを撮らせてもらったことがあって、もともとファンだったんですよ。KANA-BOONのMVもずっと観ていたし、その2バンドがつながっているのもおもしろいなって。
——楽曲自体もアニメの世界観、ストーリーなども意識しながら制作したのでしょうか?
谷口鮪(以下、谷口):「talking」は書き下ろしではなく、インディーズ時代の曲をこのタイミングで持ってきたんですよ。歌詞の書き換えも一部しかやってなくて。
飯田祐馬(以下、飯田):作ったのは2012年くらいですね。
谷口:その頃、人間のパーツをテーマにした曲を作っていたんです。“目”とか“耳”の曲があって、「talking」は“口”。コミュニケーションをテーマにして書いた歌詞なんですが、それはアニメのストーリーとも共通していると思って。
ハヤシコウスケ(以下、ハヤシ):「ナナヒツジ」は書き下ろしですね。まず原作を読ませてもらってから、そのときのインスピレーションを曲に落とし込んで。全体的にヒリッとした印象があって、「7は孤独な数字」というセリフがしきりに出てきたので、「7拍子の曲を作ってみよう」というところから始まりました。サビはスッと入っていけるメロディだと思うので、挑戦的な部分とキャッチ—なところをいいバランスでやれたんじゃないかなって。
多田:「talking」はヒリヒリした印象があったので、近未来的で無機質な空間を舞台にしたいと思い、ビルのなかで撮影しました。「ナナヒツジ」は幻想的でファンタジックなイメージがあって、森の中かなと。どちらも“夜が似合う曲”という印象があったので、深夜に撮影しようと思って、暗い場所に強いソニーの「α7S」というカメラを使ったんです。アニメの放送も深夜ですよね?
関:うん。でも、撮影は大変だったんじゃない? 夜って意外と短いから。
多田:大変でした。まずKANA-BOONの撮影をやって、スタッフはカプセルホテルで休んで、次の日はシナリオアートの撮影で。
谷口:すごいハードですね! 僕らは演奏シーンが中心だったから、ぜんぜんラクでしたけど。
飯田:スタッフの顔を見たら、わがままは言えないです(笑)。
関:映画などと違って、MVは短期集中で作ることがほとんどですからね。それがいいところでもあるんだけど、よくあの期間で2曲分のMVを撮れたなと思って。すごいですよ、ホントに。
多田:どちらも演奏シーンが素晴らしかったので、助かりましたけどね。2バンド合わせて1日半、2日くらいしか撮れないから、どう作るのがいちばんいいのかを考えて。
谷口:撮影中も、映像を見ながら「おお!」ってすごく驚いてたんですよ。
飯田:そうそう。「カッコいい!」って。
ハヤシ:なんだっけ? あの用語。
谷口:えーと、トラックイン…。
多田:トラックイン ズームバック(カメラを前に移動させながら、ズームアウトする撮影方法)。
飯田:それです(笑)。
谷口:すごく新鮮な映像だったんですよね。いままでのMVはもっとポップな感じだったし、ちょっとギャグみたいな要素が入っていることも多くて。今回はクールでカッコいいイメージだったんですが、それが曲に合ってるなって。
飯田:この映像のおかげで、曲が誤解なく届いている感じがしたんですよね。それはすごくありがたいなと。
ハヤシ:「ナナヒツジ」のMVもすごく良かったですね。普通の森のなかで撮影してたんですけど、演奏シーンのときの後ろの木のカタチがすごく怖く感じたりして、ちょっと人工的なところもあるというか。
多田:ドキュメントっぽくならないように絵作りしてましたからね。もちろん、照明のスタッフとも協力しながら。
——SF的な雰囲気がありますよね。
多田:YUYUちゃん(東京ゲゲゲイ)というダンサーに出演してもらっているんですが、「talkingロボット」という設定なんですよ。「ナナヒツジ」の場合はそのまま“羊”をテーマにさせてもらって、「羊といえばクローンだよな」って。曲のタイトルはすごく意識するんですよね。そこからテーマを拡大していくことで、曲がより響くんじゃないかと思うので。